• ケーススタディ

遺言による寄付

Q 自分自身が高齢となり、社会貢献を意識するようになりました。自身が亡くなった後、まとまった金銭をNPO法人等に寄付したいと考え、遺言書を用意する予定です。家族は娘が1人おりますが、何か注意することがあれば教えて下さい。

A 財産をどの団体に承継させるのかは、被相続人となる人が遺言で自由に決めることができます。
また、遺言により法人へ寄付した場合、原則として相続税は課されません。
公益性の高くない法人、例えば親族が経営している株式会社等に寄付した場合には法人税の対象となります。

注意する点としては、相続人には遺留分があることです。遺留分とは相続人に認められた遺産の取り分で、最低保証されている金額です。もし相続人が主張すれば、一定の遺産を取得することができ、寄附を受けた団体は相続人に財産を返さなければなりません。

2019年7月に相続税法が改正され、遺留分の侵害があった場合には、遺留分の取り戻しを金銭で請求する権利(遺留分侵害額請求権)に変更されました。
また、遺留分侵害請求権の対象となる生前贈与は、相続開始前10年内に行われたものと限定されました。

相続人の遺留分を侵害しないように遺産の分配を調整するなどご検討頂く必要があります。事前に、遺言書で指定する団体に財産を受取ってもらえるかどうか確認しておくことも必要です。

今回は金銭での寄付をご検討とのことですので、譲渡所得については考慮する必要はありません。仮に不動産や株式の現物を寄付する場合は、取得費相当額と遺贈時の時価との差額に含み益があると、みなし譲渡課税の対象となり、準確定申告で所得税の納税が必要となります。

※なお、一定の要件を満たせば、みなし譲渡課税が非課税となる特例もありますので、ご検討されている場合にはぜひご相談下さい。

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