相続放棄申述受理証明書の取得方法|通知書との違い・必要書類・注意点を解説
- 相続手続き
相続放棄の手続きを終えたはずなのに、ある日突然、亡くなった父の債権者から督促の連絡が届いた…。
「もう相続放棄したのに、なぜ自分に?」と戸惑う方は少なくありません。このような場面では、口頭で説明するだけでは不十分であり、相続放棄が受理された事実を公的に示す書類が求められます。そこで必要になるのが、「相続放棄申述受理証明書」です。
本記事では、相続放棄申述受理証明書の取得方法を中心に、通知書との違いや必要書類までを詳しく解説します。
目次
1.相続放棄申述受理証明書とは
相続放棄申述受理証明書とは、相続放棄の申述が家庭裁判所に正式に受理された事実を証明する書類です。 相続放棄の手続きが完了すると、家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が送付されますが、これはあくまで手続きが完了したことを知らせるための書面にすぎません。
一方、相続放棄申述受理証明書は、その通知を受けた後に、第三者へ相続放棄したことを証明するために別途申請して取得する公的な書類です。不動産登記や銀行の名義変更などの手続きでは、この証明書を提出する必要があります。
1-1.相続放棄申述受理証明書が必要となる3つのケース
実務上、主に以下の場面で提出を求められます。
- 債権者(借金の貸主)へ提示する場合
法的な支払い義務がないことを示し、銀行や消費者金融などの債権者からの督促を止めることができます。 - 不動産の相続登記(名義変更)を行う場合
相続放棄者を除いた相続人だけで登記手続きを進める際に必ず必要です。 - 金融機関で預貯金の払戻し等を行う場合
銀行などの金融機関において相続関係を確定させる(一部の相続人が相続放棄したことを示す)ため提出を求められます。
2.相続放棄申述受理通知書」と「証明書」の使い分け
相続放棄後の実務で特に混乱しやすいのが、「相続放棄申述受理通知書」と「相続放棄申述受理証明書」の違いです。名称はよく似ていますが、再発行の可否と用途が明確に異なります。
2-1.「通知書」と「証明書」の決定的な違い
相続放棄申述受理通知書は、相続放棄の申述が受理されたことを、家庭裁判所が申述人本人に知らせるための書面です。手続き完了後に自動的に送付され、再発行はできません。一方、相続放棄申述受理証明書は、申請することで取得できる公的な証明書です。必要な通数を何度でも発行でき、第三者へ提出する正式書類として使用されます。
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項目 |
相続放棄申述受理通知書 |
相続放棄申述受理証明書 |
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発行元 |
家庭裁判所(自動的に送付) |
家庭裁判所(申請により発行) |
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再発行 |
不可 |
可能(何度でも) |
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主な役割 |
本人への受理報告 |
第三者への公的証明 |
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費用 |
無料 |
1通150円(収入印紙) |
2-2.どちらを使えばいい?実務上の判断基準
どちらを提出すべきかは、「提出先が原本の提出を求めているかどうか」で判断します。
- 通知書(コピー)で足りるケース
消費者金融やカード会社などの債権者への一次対応(受理の事実が確認できれば良い場合)。 - 証明書(原本)が必要なケース
法務局での登記や銀行の相続手続き(厳格な証明が求められる場合)。
3.相続放棄申述受理証明書の申請方法
証明書は、裁判所から「通知書」が届いた後に、改めて交付申請を行うことで取得できます。
3-1.相続放棄申述受理証明書を取得できる人
相続放棄申述受理証明書を取得できるのは、主に「相続放棄をした本人」と「利害関係人」に限られています。
- 相続放棄をした本人(申述人)
相続放棄の申述が受理された本人は、証明書を申請して取得できます。なお、本人が「未成年者」や「成年被後見人」で判断能力が不十分な場合には、法定代理人(親権者や成年後見人)が、本人に代わって申請できます。
- 利害関係人(法的に知る必要がある人)
本人や法定代理人以外でも、「利害関係人」であれば証明書の取得が可能です。相続放棄が行われると、次順位の相続人が新たに相続権を得たり、債権者が請求する相手が変わったりするため、法的に「知る必要がある人」には交付が認められています。
- 共同相続人:被相続人(亡くなった方)の他の相続人
- 被相続人の債権者:銀行や消費者金融など、被相続人にお金を貸していた個人・法人
- 受遺者:遺言によって財産を受け取る人
- 次順位の相続人:先順位の相続人が相続放棄したことにより、新たに相続人となった人
3-2.申請に必要な書類一覧
相続放棄申述受理証明書を申請する際に必要となる主な書類は、申請者が「本人」か「利害関係人」かによって異なります。
1. 相続放棄をした「本人」が申請する場合
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書類・持ち物 |
詳細・備考 |
郵送申請時 |
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相続放棄申述受理証明申請書 |
裁判所の窓口またはHPから入手。事件番号を記入します。 |
必要 |
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収入印紙 |
証明書1通につき150円分。申請書に貼付します。 |
必要 |
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本人確認書類 |
運転免許証、マイナンバーカード、健康保険証などの写し。 |
写しを同封 |
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認印 |
申請書への押印に使用します(シャチハタ不可の裁判所あり)。 |
押印済みを同封 |
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返信用封筒と郵便切手 |
自分の住所・氏名を記入し、所定の切手を貼ったもの。 |
必須 |
2. 他の相続人や債権者(利害関係人)が申請する場合
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カテゴリ |
書類・持ち物 |
詳細・備考 |
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共通書類 |
相続放棄申述受理証明申請書 |
「利害関係人用」の用紙を使用します。 |
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収入印紙 |
証明書1通につき150円分を申請書に貼付。 |
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返信用封筒と郵便切手 |
郵送申請の場合、宛先を記入し切手を貼付。 |
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申請者の身分・資格を証明する書類 |
住民票(個人の場合) |
申請者(利害関係人)本人の住民票。 |
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登記事項証明書(法人の場合) |
法人の資格証明書として提出。 |
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利害関係の証明 |
共同相続人・次順位の相続人 |
被相続人との関係が分かる戸籍謄本など。 |
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債権者の場合 |
金銭消費貸借契約書、債務名義の写しなど。 |
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受遺者の場合 |
遺言書の写しなど。 |
3-3.取得できるのは「相続放棄をした家庭裁判所」のみ
相続放棄申述受理証明書は、相続放棄の申述を行った(受理された)家庭裁判所でのみ取得可能です。原則として、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所となります。
住所地が遠方の場合は、郵送での申請も可能です。
4.相続放棄申述受理証明書を取得する際の注意点
4-1.「通知書」を紛失し、事件番号が不明な場合の対処法
申請書には、通知書に記載されている「事件番号」を記入する必要があります。もし通知書を紛失して番号がわからない場合は、家庭裁判所に「相続放棄・限定承認の申述の有無についての照会」を行います。
この照会により事件番号と受理年月日を特定した後、改めて証明書の申請を行うという流れになります。
4-2.証明書は2~3通まとめて取得しておく
相続手続きでは、法務局での登記申請や銀行、債権者対応など、提出先が複数想定されます。後日の再申請を避けるため、最初に2~3通まとめて取得しておくと効率的です。なお、提出先によっては「発行から3か月以内」の原本を求められることがあるため、取得時期には注意しましょう。
5.まとめ
相続放棄申述受理証明書は、相続放棄が家庭裁判所に正式に受理されたことを第三者に示すための重要な書類です。通知書とは異なり、不動産の相続登記や金融機関の手続きなど、原本の提出が求められる場面では必ず証明書が必要となります。
取得先は放棄をした家庭裁判所に限られるため、遠方の場合は郵送申請を利用し、あらかじめ複数枚まとめて取得しておくとスムーズです。
相続放棄後の手続きは「どの書類を、いつ、誰に提出すべきか」の判断が難しく、対応を誤るとトラブルになるリスクがあります。判断に迷う場合は、相続実務に精通したOAG税理士法人へお気軽にご相談ください。状況に応じた最適な対応をサポートいたします。

- 監修者情報
- OAG税理士法人 相続チーム 部長奥田 周年
専門分野:相続税、事業承継
(東京税理士会:登録番号83897) 1994年OAG税理士法人に入所。承継相続分野における第一人者として、相続を中心とした税務アドバイスを行うほか、事業承継や相続関連で多数の著書を執筆、監修するなど、幅広く活躍している。



