• ケーススタディ

所得税の確定申告期限と取得費加算の特例

Q 昨年の8月に父の死亡により相続がありました。父が住んでいた自宅は私が単独取得することが決まり昨年中に売却したため、今年の3月15日までに譲渡所得税の確定申告をする予定です。ところで、他の相続人との間で当該不動産以外の財産の分割協議がまだまとまっておらず、相続税の申告書を所得税の確定申告書提出期限までに提出できそうもありません。この場合、譲渡所得税の計算で取得費加算の特例は適用できないのでしょうか。

A ご相談者様のお考えのとおり、相続により取得した不動産を売却された場合で譲渡益が生じた場合は、売却した年の翌年3月15日までに所得税の確定申告をする必要があります。ここで、相続により取得した不動産等を売却した場合、相続財産に係る譲渡所得の課税の特例(租税特別措置法第39条、通称:取得費加算の特例)という制度があります。取得費加算の特例の詳細については割愛いたしますが、端的にいうと、譲渡した資産を相続した時に支払った相続税総額のうち、その譲渡した資産が占める割合相当額を、譲渡所得の計算における取得費に加えることができるというものです。この制度は相続税の申告書提出期限の翌日から3年以内の譲渡の場合に適用が認められております。

ご相談者様のケースで考えますと、譲渡所得税の計算時にはまだ相続税の申告書が提出されておらず、相続税額が確定していません。そのため、この時点では取得費加算の特例の計算を行うことはできません。そこで、このようなケースでは、まず所得税の確定申告において譲渡所得についての申告をしたうえで、相続税の申告書を提出した日の翌日から2か月を経過する日までに 更正の請求をすることで取得費加算の特例を適用することができます。ご相談者様におかれましては、まず譲渡所得を計算した所得税の確定申告書を3月15日までに提出し、その後、相続税の申告書を相続税の申告期限(被相続人の死亡したことを知った日の翌日から10か月以内)までに提出し、その提出した日の翌日から2か月以内に所得税の更正の請求を行うという流れとなります。ここで、もし当初の所得税の申告において譲渡所得の計算をしていない場合や、相続税の申告期限までに相続税の申告を行わなかった場合は、取得費加算の特例の適用は受けられませんので注意が必要です。

※このように、税制上の特例の適用にはケースによって通常とは異なる流れとなる場合がございます。気になることがありましたらOAG税理士法人までお問い合わせください。

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