【相続手続き一覧付】やるべきことの期限と流れが時系列でわかる

  • 相続手続き

「相続の手続きって、何をやればいいの?」
「相続手続きを進めていくことになったが、何からすればいいのだろう?」
「注意すべき期限などはいつだろうか?」

お父さまが亡くなり、ご自身が中心となって相続手続きを進めなければならない時、何から始めればよいのかご不安だと思います。亡くなられた直後は、葬儀の準備や役所の手続きなどで怒涛のように対応すべきことがあります。悲しみの中で葬儀が終わると徐々に相続手続きを進めることになります。

本記事では、相続手続きについて時系列でご説明します。それぞれの相続手続き、注意すべき期限、必要書類など相続手続きの全般についてご説明します。本記事を参考にしていただき、相続手続きの一助になれば幸いです

1.相続手続きでやるべきこと一覧と期限

相続が発生したときにご家族がやらなければならない手続きはたくさんあります。
相続手続きは、遺言書の有無の確認、相続人を確定し、相続財産の調査、相続放棄をするかの判断、相続財産の分割をする遺産相続協議、相続税の申告、各種の名義変更があります。
相続手続きによっては期限が決まっており、期限を過ぎるとペナルティが課される場合もあります。それぞれの相続手続きの詳細は、2章でご説明します。

まずは一覧を確認し、全体のイメージを確認しましょう。

図1:相続手続きの一覧表と期限

 

2.それぞれの相続手続きの進め方

それぞれの相続手続きの進め方をご説明します。
相続放棄と相続税の申告手続きは、期限を過ぎると不利益が生じるので注意しましょう。相続放棄は期限を過ぎると相続放棄できず、借金を引き継ぐことになります。相続税の申告が遅れた場合は、延滞税がかかります。

2-1.遺言書を確認する

遺言書は、亡くなられた方の最後の意思が書かれたもので、最も尊重されます。遺言書がある場合、原則として遺言書の内容に従って遺産を分割することになります。まず、最初に遺言書の有無を確認しましょう。
主に利用される遺言書は、自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類です。自筆証書遺言は、ご自宅、貸金庫、信託銀行など心当たりのある場所を探していきましょう。見付けた場合は開封せずに家庭裁判所の検認の手続きを行います。なお、2020年7月より開始された法務局の保管制度を利用していた場合、遺言書は法務局に保管してあります。公正証書遺言は公証役場に預けられているので最寄りの公証役場に連絡してみましょう。

※遺言書を発見したときの対応について詳しくはこちらを参考にしてください(当サイト内)

※遺言書の取扱について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)

2-2.相続人を確定する

相続人は民法で決められています。配偶者は必ず相続人で、第一順位のお子さん、第二順位のご両親、第三順位の兄弟姉妹と優先する相続順位が決まっています。

図2:相続人の順位

相続人の順位

 

※相続人について詳しくはこちらを参考にしてください(当サイト内)

 

2-3.相続財産を調査する

亡くなられた方の預貯金、有価証券、不動産、借金、その他の相続財産を調査します。預貯金、有価証券などプラスの財産の他に、ローンや借金などのマイナスの財産がないかも調査します。
相続財産は、財産の一覧表である財産目録を作成すると、今後の相続手続きを進める際、スムーズです。

図3:相続財産

相続財産

 

 

※財産目録について詳しくはこちらを参考にしてください(当サイト内)

 

2-4.相続か相続放棄かの決定【期限3ヶ月】

マイナスの財産がプラスの財産より明らかに多い場合には相続放棄を選択します。相続放棄とはすべての財産を相続しないことです。相続放棄をすると初めから相続人ではなかったとみなされます。相続放棄は、相続を知った日の翌日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申立て手続きを行わなければなりません。相続財産の調査が間に合わない場合は、熟慮期間の伸長を申立てすることで、更に3ヶ月の期限の猶予を認められることがあります。熟慮期間の伸長の申立ても、相続を知った日の翌日から3ヶ月以内です。何の手続きもしないと、相続したとみなされるので、マイナスの財産があるかもしれない場合は注意しましょう。

図4:相続放棄の期限

相続放棄の期限

 

2-5.準確定申告を行う【期限4ヶ月】

亡くなられた方が自営業や個人事業者だった場合や不動産所得があった場合、年金受給で400万円を超える収入があった場合、亡くなられた方に代わり確定申告を行います。これを準確定申告といい、相続発生後4ヶ月以内に手続きを行います。
準確定申告の対象となる方は、通常の確定申告と同様で、亡くなられた方全員が対象ではありません。

  

※準確定申告について詳しくはこちらを参考にしてください(当サイト内)

2-6.遺産分割協議を行う

相続人全員で財産をどのように分割するか話し合う遺産分割協議を行います。遺産分割協議は、相続人全員の合意により成立します。
相続人による遺産分割が合意に至ったら「遺産分割協議書」を作成することをオススメします。相続人全員が文書で分割内容を確認し押印します。遺産分割協議書は、不動産の名義変更である相続登記や金融機関の名義変更や解約の際に必要になります。

図5:遺産分割協議書の見本

遺産分割協議書の見本

※遺産分割協議書の書き方について詳しくはこちらを参考にしてください(当サイト内)

2-7.相続税の申告・納税【期限10ヶ月】

相続財産が相続税の基礎控除(3,000万円+法定相続人の数×600万円)を超える場合に相続税の申告と納税が必要になります。相続の発生を知った日の翌日から10ヶ月以内に、管轄の税務署に相続税の申告と納税を行います。
基礎控除以下の場合は、相続税はかからないので申告書作成は不要です。
相続財産が基礎控除を超えても、配偶者の税額軽減の特例や小規模宅地等の特例などの特例を活用して相続税が0円になったり、相続税が引き下げられることがあります。これらの特例を活用する場合も、相続税の申告が必要になります。

図6:相続税の基礎控除

相続税の基礎控除

 

図7:相続税のボーダーライン

相続税のボーダーライン

 

図8:相続税の申告期限は10ヶ月

相続税の申告期限は10ヶ月

※相続税の基礎控除について詳しくはこちらを参考にしてください(当サイト内)

2-8.相続財産の名義変更

相続財産の相続が決まりましたら、亡くなられた方から相続人に名義変更の手続きを行います。不動産は相続登記の手続きを、預貯金や有価証券やその他の相続財産も名義変更の手続きを行います。

3.相続手続きは自分でできる

相続手続きは、自分でできますが、手間と時間がかかります。戸籍謄本を遡って取得していくなど必要書類を完璧に揃えるのは思いのほか大変です。また、平日や日中に法務局や金融機関の窓口に行く時間も必要です。相続登記や金融機関の手続きはご自身でコツコツ進めることができますが、相続税がかかる場合は専門家に依頼することをオススメします。

3-1.不動産の相続登記

不動産の相続登記の手続きは、義務化されました。相続または遺言による遺贈により不動産を引き継いだ方は、相続の開始かつ所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記をしなければなりません。

必要書類を揃えて登記申請書を作成し、法務局に申請します。専門家に依頼せずご自身で相続登記を行うことも十分可能です。申請方法は直接窓口へ持っていく、郵送、オンラインの3つ方法があります。登記が完了するまで10日ほどかかります。

図11:不動産の相続登記

相続登記

 

 

3-2.預貯金・有価証券の手続き

預貯金・有価証券の相続手続きは、名義変更か解約(払い戻し)か選んで行います。相続人全員の同意や遺産分割協議書がないと、原則として相続手続きに応じてもらえません。金融機関ごとに手続きが異なりますので、まず問い合わせをして手続きを進めましょう。

有価証券には上場会社と非上場会社があります。上場会社は証券会社の窓口で手続きを行い、非上場会社は当該会社と直接やり取りします。

 

※預金の相続手続きについて詳しくはこちらを参考にしてください(当サイト内)

※有価証券の相続手続きについて詳しくはこちらを参考にしてください(当サイト内)

 

3-3.相続税の申告手続きは専門家に依頼する

相続税の申告手続きは、専門的な知識を要します。財産の評価や計算を誤ると税務署の調査でペナルティがかかることもあります。そのため、ご自身で手続きをするよりも相続に詳しい税理士へ依頼することをオススメします。税理士へ依頼することで、相続税に関する特例や控除を活用し、相続税を抑えることができる場合もあります。

4.相続手続きの必要書類

相続手続きの際、亡くなられた方の出生から死亡までの戸籍謄本や住民票、相続人の戸籍謄本、住民票などはさまざまな場面で必要になります。これらの書類は各手続きで使えるよう数部取得しましょう。相続関係説明図を作成すると、後ほど原本を返却してもらえます。

 

4-1.共通する必要書類

相続手続きで、さまざまな場面で必要となるのが、亡くなられた方の出生から死亡までのすべての戸籍謄本と相続人の戸籍謄本です。亡くなられた方の戸籍謄本は取得するのに、時間と手間がかかります。相続登記や預金や有価証券の名義変更、相続税の手続きなどで必要となりますので取得する際は2~3部取得しましょう

4-2.不動産の名義変更に必要な書類

相続登記は、遺産分割協議による場合、法定相続分で分割する場合、遺言がある場合で必要な書類が異なります。4-1で説明した亡くなられた方の出生から死亡までの全ての戸籍謄本(遺言書がある場合は最後の戸籍謄本のみで可)と住民票、相続人の方の戸籍謄本と住民票、固定資産税評価証明書、登記申請書に加えて、遺産分割協議による場合は遺産分割協議と相続人の印鑑証明書、遺言書がある場合は遺言書が必要です。

表1:相続登記に必要な書類

書類 取得場所 遺産分割協議 法定相続分で分割 遺言書
□亡くなられた方の戸籍謄本 各本籍地の役所

亡くなられた方の出生から死亡までの全ての戸籍謄本

亡くなられた方の出生から死亡までの全ての戸籍謄本

亡くなられた方の最後の戸籍謄本のみ

□亡くなられた方の住民票 最後の住所地の役所
□相続人の戸籍謄本 本籍地の役所
□相続人の住民票 住所地の役所
□固定資産税評価証明書 役所
□登記申請書 ご自身で作成
□収入印紙(登録免許税) 郵便局や法務局
□遺産分割協議書 相続人で作成 × ×
□相続人の印鑑証明書 住所地の役所 × ×
□遺言書   × ×

4-3.金融機関の名義変更に必要な書類

預貯金や有価証券の手続きで必要な書類は、4-1の亡くなられた方の出生から死亡までの全ての戸籍謄本と住民票、相続人全員の戸籍謄本と住民票、遺言書がある場合は遺言書、遺言書がない場合は遺産分割協議書と相続人の印鑑証明書と金融機関にある払い戻し請求書です。必要書類は金融機関によって異なりますので、事前に確認しましょう。

相続人同士の関係がわかる相続関係説明図があると手続きがスムーズで後日、戸籍謄本を返却してもらえます。

表2:金融機関・有価証券で必要な書類

書類 取得場所 遺産分割協議の場合 法定相続分の分割 遺言書の場合

□亡くなられた方の戸籍謄本

(出生から死亡までの全ての戸籍謄本)

各本籍地の役所
□亡くなられた方の住民票 最後の住民地の役所
□相続人の戸籍謄本 本籍地の役所
□相続人の住民票 住民地の役所
□遺産分割協議 相続人で作成 × ×
□相続人の印鑑証明書 住民地の役所 × ×
□遺言書   × ×
□払い戻し請求書 各金融機関
□相続関係説明図(あれば) 相続人が作成

※金融機関によって多少違いがあります

4-4.相続税の申告に必要な書類

申告書は税務署に備えられています。第1表から15表まであり、相続人の状況や相続財産によって必要な申告書を作成します。申告書に添付する主な必要書類は、遺言書がある場合は遺言書、遺産分割協議による場合は遺産分割協議書、他に戸籍謄本や住民票があります。財産に関するもので不動産の登記事項証明書、固定資産税評価証明書、債務に関するもので、銀行残高証明書、請求書、借用書、その他葬儀費用領収書、寄付行為証明書など、申告する内容によって必要な書類があります。

表3:相続税申告に必要書類

書類 取得場所 遺産分割協議 法定相続分で分割 遺言書
□相続税申告書(第1表から15表) 税務署

□亡くなられた方の戸籍謄本

(出生から死亡までの全ての戸籍謄本)

 

各本籍地の役所
□亡くなられた方の住民票 最後の住民地の役所
□相続人の戸籍謄本 本籍地の役所
□相続人の住民票 住民地の役所
□遺産分割協議書 相続人が作成 × ×
□相続人の印鑑証明書 住民地の役所 × ×
□遺言書   × ×
※以下は申告する内容によって異なる書類の一例です。
□登記事項証明書 財産に関する書類 法務局
□固定資産税評価証明書 役所
□銀行残高証明書 債務に関する書類 金融機関
□請求書 借用書  
□葬儀費用証明書 葬儀会社
□寄与行為証明書    

 

 

5.相続手続きをしないことのリスク

相続手続きをしないことは様々なリスクがあります。まず、相続放棄の期限の3ヶ月を過ぎると相続放棄できなくなります。また、相続税の申告期限10ヶ月を過ぎるとペナルティがかかります。相続登記は3年以内に登記することが義務化になりました。預金口座は10年放置しておくと休眠口座になるリスクもあります。相続手続きは、期限のあるものは期限内に、期限のない手続きでも速やかに行いましょう。

6.まとめ

相続手続きのおおまかな流れと手続きの費用、手続きの仕方、必要書類についてまとめてきました。相続手続きは、相続放棄や相続税の申告など期限のあるものがあります。相続財産の調査や相続人の確定、必要書類の取得など、やるべきことが沢山ありますので、期限に間に合うよう手続きを進めましょう。相続手続きをしないことは、様々なリスクがあります。亡くなられた方が築いた大切な財産です。きちんと引き継ぐことができるよう、相続手続きは速やかに行いましょう。

 

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