【最新版】自筆証書遺言の書き方~5つの要件と遺言書の作成手順4STEP
- 遺言
「自筆証書遺言には決まった書き方があるの?」
「自筆証書遺言が無効になってしまったら困るな…」
大切なご家族が円満に相続手続きを進めるために、ご自身の意思を遺言書に託そうとお考えでしょう。遺言書には3つの種類があります。遺言者自らが全文を手書きで書く「自筆証書遺言」、公証役場において公証人に作成してもらう「公正証書遺言」、内容を秘密にしたまま存在の証明のみを行ってもらう「秘密証書遺言」です。自筆証書遺言は、いつでも手軽に作成できて費用もかからないため、多くの方に利用されています。
ただし、自筆証書遺言は法律で書き方のルールが定められており、正しい書き方でない場合には無効になってしまうため注意が必要です。本記事では、自筆証書遺言の要件と作成する手順を4STEPでご説明いたします。
目次
1.自筆証書遺言は全文を自筆で書く遺言
自筆証書遺言とは、遺言者が、遺言の全文、日付、氏名を自分で手書きして、押印をする遺言書(財産目録はパソコンや代筆で作成したものでもOK)です。
自筆証書遺言は法律で書き方の要件が定められており、不備があると無効になるリスクがあります。次章より正しい遺言書の書き方をご説明いたします。
2.自筆証書遺言の5つの要件
自筆証書遺言の5つの要件を確認しましょう。
2-1.遺言者が全文を手書きで書く
自筆証書遺言は、パソコンやスマートフォンで作成したものや代筆してもらったものは無効となります(財産目録を除く)ので、必ず全文を手書きで作成します。筆記用具は、改ざんを防止するためボールペン・万年筆などの消せないものを使用します。また、長期間の保管ができるように、紙は摩耗の少ないしっかりした用紙を使用します。
ご夫婦など2人以上が同一の証書で遺言することはできません。
2-2.作成した日付を記載する
自筆証書遺言には必ず作成した日付を明確に記載します。「20XX年XX月XX日」のように日にちまで特定できなくてはなりません。「○月吉日」「スタンプなどの代用」は無効になりますので注意が必要です。遺言書は何度でも書き直しができます。複数の遺言書が見つかった場合、日付の新しいものが有効となります。
2-3.署名をする
芸名・通称・屋号で行った署名でも、本人確認(本人の確定)ができれば法律上有効とされていますが、トラブルを避けるためにも戸籍どおりに書くことをおススメします。
2-4.押印をする
押印は認印でも法律上は問題がありませんが、本人が作成したものであることを証するためにも実印で押印する方が良いでしょう。
2-5.訂正は決められた方法で行う
自筆証書遺言中で書き間違えた箇所の訂正や追加をする場合には、遺言者が修正箇所を示して、変更した旨を記載して署名と押印をしなければ無効となります。訂正や追加が多くある場合は分かりにくくなるため、全て書き直すことをおススメします。
①訂正方法
・訂正する箇所を二重線で消込み、訂正後の文字を記入する
・訂正した箇所へ押印
・欄外に「〇字削除▲字加入」と記入して署名
②削除方法
・削除する箇所を二重線で消し込む
・削除した箇所へ押印
・欄外に「〇字削除」と記入して署名
③追加方法
・追加したい箇所にその場所が分かるように示した上で文字を記入
・近くに押印
・欄外に「▲字加入する」と記入して署名
※押印は遺言書全て同じものを使用する
3.自筆証書遺言の作成4STEP
自筆証書遺言を作成するにあたり、まず何から始めたらよいのか分からないという方に向けて、自筆証書遺言を作成する手順を4STEPでご説明いたします。
STEP①財産目録を作成する
STEP②誰にどの財産を相続させるか決める
STEP③遺言書に相続財産を正確に記載する
STEP④封筒に入れて封印する
3-1.財産目録を作成する
不動産・預貯金・現金・有価証券、みなし相続財産など、どのような財産がどれだけあるのかを調査してヌケモレなく財産目録を作成します。自筆証書遺言の作成だけでなく遺言の執行もスムーズになります。財産の保管場所・契約書などの所在を書いておくと相続手続きをする際に安心です。
※財産目録について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)
3-2.誰にどの財産を相続させるか決める
相続財産を確定したら、ご自身の財産を誰にどのくらい相続させるのかを決めます。まずは本来誰が相続の対象となるか相続人の確定をします。遺産相続割合は法定相続分を目安にするとよいでしょう。遺留分(兄弟姉妹以外の法定相続人に最低限保証された遺産取得分:4-1参照)に配慮しない遺言は相続トラブルになるリスクがあります。
遺言の内容を実現する役割を担う遺言執行者を定めておくと手続きがスムーズに進みます。
※「相続させる」と「遺贈する」の違い
「相続させる」と「遺贈する」の違いは財産を譲る相手です。「相続させる」は法定相続人に対してのみ使います。「遺贈する」は法定相続人と法定相続人以外の方(たとえばご自身の介護をしてくれている方や内縁の妻など)に対して使います。
相続人に対しては財産を「相続させる」ことも「遺贈する」こともできますが、登記手続きなどでメリットがありますので必ず「相続させる」と記載します。
※相続と遺贈の違いについて詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)
3-3.遺言書に相続財産を正確に記載する
不動産は登記簿謄本(全部事項証明書)の通りに、預貯金は金融機関の支店名、預金の種類や口座番号まで正確に記載します。いずれも不明確な表現は無効と判断されるおそれがあります。また、借金等も記載しておきましょう。
※遺言作成後に増えた財産や記載漏れの対応
遺言書に記載のない財産がある場合や後から見つかった場合は、その財産は相続人全員の共有となり遺産分割協議が必要になります。遺言書に「ここに記載のない財産については全て、〇〇に相続させる」というような記載をしておくと安心です。
3-4.封筒に入れて封印する
遺言書を封筒に入れて封印することは民法では規定されていませんが、改ざんを避けるために、自筆証書遺言は完成したら封筒に入れて封印して保管しましょう。また、裏面に「開封しないで家庭裁判所に提出すること」と記載しておけば検認(相続人に対して家庭裁判所により遺言書の存在と内容を確認してもらう手続き)をする前に開封されることがありません。
※自筆証書遺言書保管制度を利用する場合は、遺言書は封筒に入れて封印した状態ではなく無封のものでなければなりません(4-2参照)。
※印鑑は、遺言書と同じものを使用すること。書式は縦書きでも可
※遺言書の開封について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)
4.自筆証書遺言の内容をスムーズに実現するために
作成した自筆証書遺言は、ご家族にすぐに発見してもらえる場所に保管します。ただし、利害関係のある方(相続人)に預けると、改ざんや破棄されてしまうリスクがあり相続トラブルになるかもしれません。弁護士などの専門家や、遺言で遺言執行者を定めた場合には、遺言執行者に預けるとよいでしょう。また、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用することもできます。
4-1.遺留分に配慮する
「遺留分」は、相続人が最低限の遺産を取得することのできる権利です。遺言者は、引き継ぐ方と割合を自由に決めることができますが、特定の方に偏った割合で相続させる場合には相続人間でトラブルにならないように遺留分に配慮が必要です。
遺言書の内容が「長男に全ての財産を相続させる」というものであっても、法定相続人である配偶者や他のお子さんは、長男に対して遺留分の割合だけ財産を渡すように請求(遺留分侵害額請求)することができます。
※遺留分について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)
4-2.法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用する
自筆証書遺言は、自宅で保管されるケースが大半でしたが、法務局で自筆証書遺言を保管する制度が2020年7月10日より始まり、遺言書の紛失や偽造のトラブルを避けることができるようになりました。自筆証書遺言は「検認」が必要ですが、法務局で保管された遺言書は「検認」が不要なため相続手続きをスムーズに進めることができます。
※自筆証書遺言の保管制度について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)
5.まとめ
自筆証書遺言は、公正証書遺言と異なり公証人や証人の立会が必要ないなど、最も手軽に作成できる遺言と言えますが、その分偽造や紛失のリスクが大きく、トラブルになる可能性が高い方式です。
遺言を作成する目的は、ご自身の希望どおりに財産の分け方を決めることであったり、相続人同士がトラブルなく幸せに暮らすことではないでしょうか。せっかく遺言を作成したのに不備があって無効になってしまうと、ご自身の意思が反映されないことも考えられます。
自筆証書遺言の作成方法や遺言書の内容についてご心配な方は、専門家にご相談されることをおススメいたします。