「生計を一にする」とは?相続税・扶養控除・年金で異なる判断ポイントも解説

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「父とは別居していたけれど、生計を一にすると認められるのだろうか」このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

相続税の申告や所得税の控除、年金の請求などでは、「生計を一にしているかどうか」が適用要件に関わってくることがあります。
しかし、「生計を一にする」とは具体的にどういう状態を指すのでしょうか? 同居していなければ該当しないのか、あるいは別居でも認められるケースはあるのか、判断に迷うことも少なくありません。

また、「生計を一にしている」ことを証明するためにどのような資料が必要なのかも、意外と知られていないポイントです。

本記事では、「生計を一にする」ことの定義や認められる具体例、注意が必要なケース、証明に使える資料などについて、わかりやすく解説します。
相続税対策や日々の税務手続きでお悩みの方は、ぜひ参考にしていただければ幸いです。

1.「生計を一にする」とは

「生計を一にする」とは、「同じ財布(家計)で生活している状態」を指します。同居しているかどうかではなく、「生活費の共有」「経済的な援助」が判断の基準となります。

(同居している場合)
同じ住居で暮らし、「食費や光熱費などを共同で負担している」「世帯主の収入で生活している」といった場合は、「生計を一にしている」とみなされます。

(別居している場合)
住居が別であっても、勤務や修学、療養などの事情があり、生活費や学費、療養費などの仕送りが継続的に行われている場合には、「生計を一にしている」と認められます。

このように、形式的な「同居・別居」だけではなく、実際の経済的なつながり(生活実態)が重視されるのが特徴です。

図1:生計を一にする
生計を一にする

 

2.「生計を一にする」と認められやすい事例

同居している場合は原則として「生計を一にする」と扱われますが、別居している場合は実際の仕送りや経済的なつながりがポイントとなります。以下で具体的なケースを見ていきましょう。

2-1. 同居して生活費・家計を共同で負担している

最も典型的な例です。家族が同じ住居に暮らし、食費・光熱費・住宅費などを共通の財源から負担している場合、「生計を一にしている」と認められます。

2-2. 単身赴任中の配偶者が生活費を送金している

配偶者が単身赴任により別居している場合でも、定期的に生活費の仕送りを行っているのであれば、「生計を一にしている」と認められます。

2-3. 一人暮らしの子どもに親が仕送りしている

大学進学や就職のために実家を離れて一人暮らしをしている子どもに対し、親が生活費や学費を仕送りしているケースは「生計を一にしている」と認められます。

2-4. 別居している高齢の親に生活費を援助している

介護や生活支援を目的として、介護施設や病院に入所・入院している高齢の親に定期的に生活費や施設費・医療費を仕送りしているケースも、「生計を一にしている」と認められます。

3.「生計を一にしている」とは認められにくいケース

一緒に暮らしている家族であっても、家計が経済的に独立している場合などは、「生計を一にしている」とは判断されないことがあります。

3-1. 同居していても財布が完全に別々

同居していても、家計を完全に分けており、それぞれの収入で独立して生活費を負担しているようなケースでは、「生計を一にしている」とは認められません。
たとえば、親と子が二世帯住宅に同居しているが、光熱費・食費などを完全に分担し、お互いに経済的支援が一切ないようなケースです。

3-2. 婚姻届を出していないパートナー(事実婚)の税法上の扱い

民法に基づく婚姻関係にない「事実婚」の場合、健康保険や厚生年金などの社会保険においては、家計が同じであることや一定の収入要件などを満たせば「生計を一にしている(生計同一・維持)」とみなされ、扶養に入れることが可能です。

しかし、所得税や住民税、相続税などの税法においては、法律上の配偶者であることが原則的な適用要件となります。そのため、生計を一にしているかどうかにかかわらず、配偶者控除や医療費控除の合算、相続税の配偶者控除(配偶者の税額軽減)などの適用対象外となります。

社会保険の手続きと税務で扱いが大きく異なる点に注意しましょう。

4.「生計を一にする事実」かどうかが影響する3つの場面

「生計を一にしているかどうか」は、税務・年金手続きにおいて重要な判断基準となります。

4-1. 所得税と住民税の扶養控除・配偶者控除

家族を税金上の扶養に入れるためには、「生計を一にしている」ことが必須要件となります。たとえば別居している大学生の子どもであっても、生活費を仕送りしていれば扶養控除が認められます。

配偶者控除についても、同居・別居にかかわらず、生活費を共有している実態があれば認められます。

4-2. 相続税の小規模宅地等の特例

相続税の「小規模宅地等の特例」とは、亡くなった方(被相続人)の居住用や事業用に利用されていた土地について、一定の要件を満たす場合に、相続税評価額を最大80%減額できる制度です。

この特例では、宅地の利用区分や取得する人の立場によって適用要件が異なります。たとえば被相続人と生計を一にしていた親族であることが要件となるケースもありますが、それだけで適用されるわけではなく、居住や事業の継続などの要件も満たす必要があります。

【小規模宅地の特例の具体例と適用要件(抜粋)】

宅地の区分

具体例

生計を一にする親族が取得する場合の主な要件

特定居住用宅地等
(最大80%減額)

単身赴任により別居していた被相続人と生計を一にしていた家族が居住していた自宅の土地

相続開始前から相続税の申告期限まで引き続きその家屋に居住し、かつその宅地を申告期限まで保有すること。

被相続人の配偶者が取得する場合は、居住・保有要件なしで無条件に適用可能です。

特定事業用宅地等
(最大80%減額)

親(被相続人)が所有する土地で、生計を一にする子が個人商店などの事業を営んでいる土地

相続開始前から相続税の申告期限まで引き続きその事業を営み、かつその宅地を申告期限まで保有すること。


※生計を一にする親族(配偶者を除く)が特例の適用を受けるためには、上記のように申告期限までの「居住継続」や「事業継続」といった要件が定められています。適用の可否については慎重な判断が必要なため、専門家への相談をおすすめいたします。

4-3. 各種年金の請求

遺族年金や未支給年金、死亡一時金などの年金を受け取る際にも、亡くなった方と請求する親族が別居していた場合には、「生計同一関係」であることを証明するための追加資料(生計同一関係に関する申立書や第三者の証明など)の提出を求められることがあります。

5.「生計を一にする」関係を証明するには?

「生計を一にしている」ことを税務署や各種機関に証明するためには、客観的な証拠資料の提出が極めて重要です。主として以下のような書類が判断資料として用いられます。

・銀行口座の記録(毎月の生活費や仕送りの振込履歴)
・生活費の負担記録(家計簿やクレジットカードの利用明細など)
・まとまった費用の領収書(医療費・教育費等の立替払いの記録)
・住民票の写し(同一世帯であることの記録)
・公共料金の領収書(支払いの実態が確認できるもの)

特に相続税(小規模宅地等の特例)や所得税・住民税における各種控除の適用を受ける場合には、これらの書類を準備しておくことがトラブル回避につながります。

※日本年金機構へ遺族年金などの請求で「生計同一関係に関する申立書」を提出する際には、第三者(民生委員や家主、隣人など)による証明が必要になる場合もあります(添付資料についてはこちら)。

6.まとめ

「生計を一にする」という認定は、同居・別居といった住まい方に関係なく、実際に「どのように生活費を共同で負担し合っているか」という経済的な生活実態が重視されます。

相続税の小規模宅地等の特例や所得税・住民税の各種控除は、「生計を一にしているかどうか」が要件となることがあります。そのため、いざという時のために、客観的な証明資料を整えておくことが、スムーズな手続きやトラブル防止に役立ちます

「別居している家族への仕送りは扶養控除の対象になる?」
「小規模宅地等の特例が使えるか不安…」

など判断に迷う場合は、ぜひOAG税理士法人までお気軽にご相談ください。経験豊富な相続・税務の専門家が、お客様の状況を丁寧に整理し、最適な手続きと安心のサポートを提供いたします。

監修者情報
OAG税理士法人 相続チーム 部長奥田 周年

専門分野:相続税、事業承継

(東京税理士会:登録番号83897) 1994年OAG税理士法人に入所。承継相続分野における第一人者として、相続を中心とした税務アドバイスを行うほか、事業承継や相続関連で多数の著書を執筆、監修するなど、幅広く活躍している。