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生前贈与は贈与税が非課税となる4つの特例と暦年贈与を上手に使おう

「生前贈与をしたいと思うが、贈与税ってどのくらいかかるのだろうか?」
「相続税対策のために生前贈与をしておこうと考えているが、注意すべき点ってあるのだろうか。」

生前贈与は、財産を譲りたいと思う方に確実に引き継ぐことができ、また、譲りたいタイミングと必要な用途に応じて計画的に引き継ぐこともできるので、ご自身が築き上げた大切な財産を納得のいく形で有効活用できる可能性があります。さらに将来の相続においても節税効果が得られるとしたら、生前贈与を前向きに検討したいと考えている方は多いのではないでしょうか。

本記事では、生前贈与で贈与税を非課税とすることができる4つの特例と暦年贈与、相続時精算課税制度の利用方法についてまとめています。また、生前贈与にはいくつかの注意点がありますので、この記事を参考にしてご検討いただければと思います。

1.年間110万円を超える生前贈与には贈与税がかかる

生前贈与とは「個人から個人へ、無償で財産を贈ること」です。将来の相続人に生前のうちに財産を贈与することにより、相続の際に引き継がねばならない財産を減らしておくことができますので、相続税対策として活用される方が多いといえます。

生前贈与をする方法は「暦年贈与」「相続時精算課税制度」があり、どちらかを選択することになります。一般的な暦年贈与は、年間の贈与財産の総額(一人の方が贈与される財産の総額)が110万円を超えてしまうと、贈与された方には贈与税がかかることになりますが、非課税となる基礎控除枠と4つの特例を賢く利用することで、贈与税と相続税の両方の節税を実現することができます。

図1:年間110万円超の生前贈与をすると贈与税がかかる

2.生前贈与の贈与税が非課税となる4つの特例

贈与税がかからないケースには「年間110万円までは課税されない基礎控除額」「贈与税が非課税となる特例」があります。「贈与税の非課税の特例」は4つあり、基礎控除額110万円と併用して使うことができます。

年間110万円の基礎控除額を超えて贈与する場合や贈与税の非課税の特例を適用する場合は、贈与税の申告が必要です。

図2:贈与税の基礎控除額は年間110万円

表1:贈与税が非課税となる4つの特例

2-1.基本となるのは「暦年贈与」

年間(1/1~12/31)の贈与額を基礎控除額110万円以下で行う贈与のことを「暦年贈与」といいます。暦年贈与であれば、贈与税は一切かからず、贈与税の申告も不要です。また、贈与税が非課税ならば、所得税や住民税への影響もありません。

暦年贈与は、贈与税の非課税枠を利用して上手に財産を引き継ぎ、将来の相続財産を徐々に減少させていく効果が期待できる、節税対策としては取り組みやすい手段といえます。

図3:年間110万円以下の贈与は贈与税がかからない

※暦年贈与について詳しくはこちらをご覧ください。(当サイト内)
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2-2.特例①:住宅取得等資金の贈与

父母または祖父母から18歳以上かつ年間所得が2,000万円以下のお子さん・お孫さんが住宅を取得するための資金の贈与を受ける場合、最大で1,000万円まで非課税となる特例です。 適用期限は、令和8年12月31日までです。

※住宅取得資金の贈与について詳しくはこちらをご覧ください。(当サイト内)
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2-3.特例②:教育資金の一括贈与

父母または祖父母から30歳未満のお子さん、お孫さんに対し、教育資金を一括で1,500万円まで非課税で贈与できる制度です。教育資金とは学校等の入学金、授業料、あるいは塾などの習い事も含みます。学校や塾以外の贈与については、500万円までが非課税となります。

ただし、受贈者(贈与を受ける人)が30歳になった時点で、贈与額に使い残しがあれば、その残額に贈与税が課税されます。また、受贈者が23歳未満や在学している場合を除き、受贈者が30歳になる前であっても、贈与者が亡くなられたときはその時点で使いきれていなかった生前贈与残高がある場合には相続税がかかります。(受贈者が23歳未満や在学している場合でも、相続税の課税価格が5億円を超える場合には残額に相続税が課税されます。)

適用期限は、令和8年3月31日までです。

2-4.特例③:夫婦間で不動産を贈与

婚姻期間が20年以上の夫婦で、夫から妻へ、もしくは妻から夫へ、居住用不動産(家や土地)または居住用不動産の購入資金を贈与する場合、2,000万円までは非課税となります。同じ配偶者からの適用は一度のみとなります。贈与税の配偶者控除(おしどり贈与)とよばれます。適用期限はありません。

※おしどり贈与について詳しくはこちらをご覧ください。(当サイト内)
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2-5.特例④:結婚・子育て資金を贈与

父母または祖父母から18歳以上50歳未満のお子さん、お孫さんに対し、結婚・子育て資金を一括で1,000万円まで非課税で贈与できるという制度です。結婚・子育て費用とは挙式費用、新居の住居費(結婚に際して300万円まで)、出産費用や不妊治療費、子の医療費などです。

ただし、受贈者が50歳になった時点で贈与額に使い残しがあれば、その残額に贈与税が課税されます。また、受贈者が50歳になる前に贈与者が亡くなられた場合には、その時点の生前贈与の残額に相続税がかかります
適用期限は、令和7年3月31日です。

2-6.相続時精算課税制度

制度名から、相続の制度と混同されがちなのですが「相続時精算課税制度」は生前贈与の手段の一つとなります。

相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母または祖父母から18歳以上の子・孫への生前贈与について、2,500万円までは非課税となる制度です。贈与額が2,500万円を超えた場合には、超えた金額に対して一律20%の贈与税が課税されます。また、令和6年1月1日以降の贈与から相続時精算課税の特別控除額2,500万円とは別に、基礎控除110万円が認められます。年間110万円以下の贈与であれば、贈与税の申告も不要です。

贈与者が亡くなられたときは、生前贈与された贈与財産を相続財産に加えた総額に対して相続税が課税されます。すでに納付済みの贈与税額がある場合は、新たに支払う相続税から控除することができます。

表2:令和5年度の改正後の相続時精算課税制度

相続時精算課税制度は暦年課税のように財産そのものを減らすわけではありません。生前贈与の贈与税を先送りして、相続の際に相続税として納めるという制度になります。

相続時精算課税制度は暦年贈与と併用することはできず、一度選択すると暦年贈与に戻せません。また、相続財産に含める際は、財産は贈与時点の価値を採用することになりますので、将来の相続税シミュレーションなどを加味して、慎重に判断する必要があります。

※相続時精算課税制度について詳しくはこちらをご覧ください。(当サイト内)
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3.生前贈与の贈与税の計算方法

贈与税は、贈与された財産の非課税枠を超える分にかかります。贈与税の申告と納税は、贈与された方の住所地を管轄する税務署に、贈与された翌年2月1日から3月15日までの間に行わなければなりません。

3-1.暦年贈与の計算方法

贈与税は、1年間に贈与された財産の合計額から基礎控除額110万円を引いた金額にかかります

税率は贈与される人によって異なり、一般税率と特例税率の2つがあります。父母・祖父母から18歳以上のお子さんやお孫さんに贈与をする際には「特例税率」を用います。一般税率は、兄弟間の贈与、夫婦間の贈与、父母・祖父母からの贈与でお子さんやお孫さんが未成年者の場合など特例税率に該当しない場合に用います。

図4:贈与税の計算式

表4:贈与税の速算表 ※特例税率は贈与をうける人(子・孫)が18歳以上のとき

【暦年贈与の贈与税の具体例】
未成年のお孫さんに祖父から1,000万円、祖母から500万円の贈与をおこなった場合、一般税率を用いますので、贈与税は450.5万円になります。

図5:孫に1,500万円を贈与した場合の贈与税の計算

3-2.贈与税非課税の特例を適用後に使い残しの贈与財産があったとき

教育資金贈与、結婚・子育て資金贈与については、一定の年齢で使い切れなかった贈与財産があるとき、その時点で残額に贈与税が課税されます。贈与税の申告と納税が必要です。

図6:贈与財産に使い残しがあるときの贈与税の計算式

【使い残しの贈与財産の贈与税の具体例】
教育資金贈与をおじいさまから1,500万円受けたが、30歳になったときに500万円使い残していた場合、一般税率を用いますので贈与税は53万円になります。

500万円-110万円)×20%-25万円=53万円

3-3.相続時精算課税の計算方法

相続時精算課税制度は2,500万円までの生前贈与について、贈与税がかかりません。2,500万円を超えた分に一律20%の税率で贈与税がかかります。

図7:相続時精算課税の贈与税額の計算式

【相続時精算課税制度の贈与税の具体例】
60歳以上のお父さまから18歳以上のお子さんに3,000万円の贈与をおこなった場合、100万円の贈与税がかかります。

3,000万円-非課税枠2,500万円=500万円(課税対象額)
500万円×税率20%=100万円

令和5年度の税制改正大綱により、相続時精算課税制度も変更があり、相続時精算課税制度にも110万円の基礎控除が創設されました。
110万円以下の贈与であれば、相続財産に含む必要がありません。贈与税の申告も不要です。
令和6年(2024年)1月1日以降の贈与に適用されます。

図8:令和5年度の改正後の相続時精算課税の贈与税額の計算式
贈与税額計算

【相続時精算課税制度改正後の贈与税の具体例】
60歳以上のお父さまから18歳以上のお子さんに3,000万円の贈与をおこなった場合、100万円の贈与税がかかります。

3,000万円-110万円(非課税)-非課税枠2,500万円=390万円(課税対象額)
390万円×税率20%=78万円

4.生前贈与をするときの3つの注意点

生前贈与は、贈与者が誰に贈与するのか選べるため、ご自身の意思を反映させることができます。ご家族の希望も考慮して財産を渡すことができるため、相続におけるトラブルを回避することもできるでしょう。

また、贈与者が時期を決めることができますので、資金が必要となったタイミングで財産を渡すことができたり、将来的に値上がりが見込める財産を渡すことにより相続税が節税できます

生前贈与を相続対策として上手に活用するために注意すべき点をご説明いたします。

4-1.亡くなられる前3年~7年以内の贈与は相続税の対象

亡くなられる前3年以内に贈与された財産は、相続財産として相続税の課税対象になります。贈与されてから3年以内に贈与者が亡くなられた場合、奥さまやお子さんなど法定相続人への贈与はなかったものとみなされます。

暦年贈与は長期にわたり多数回おこなう方が効果的ですので、相続税対策のためには、なるべく早く生前贈与を始めることが重要です。

図9:生前贈与の相続税3年以内加算

図10:3年内加算の対象者は法定相続人

➡令和5年の税制改正により、生前贈与加算が3年から7年へ延長されました。
 令和6年1月以降は生前贈与の持ち戻し期間が段階的に7年になります。
 延長された4年分については、総額100万円まで相続財産に持ち戻し不要になります。

図11:令和5年度の改正後の生前贈与の相続税3年以内加算

 

 

※相続税の生前贈与加算について詳しくはこちらをご覧ください。(当サイト内)
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4-2.贈与契約書を作成する

贈与契約書の作成は義務ではありません。口約束のような書面によらない贈与も、贈与者と受贈者の双方の合意があれば有効です。しかし、贈与の事実を確実に証明するために、贈与のたびに「贈与契約書」を作成することをお勧めいたします。贈与契約書により、いつ、誰がいくら贈与したかという内容を正確に把握することができます。

税務署から贈与について問われる可能性も多々ありますので、証拠となる書類として、有効な贈与契約書を残しておくと安心です。

4-3.不動産の贈与は贈与税以外の税金がかかる

土地や建物といった不動産も生前贈与することができます。たとえば、将来的に値上がりが予想される土地がある場合には、評価額が低いうちに生前贈与することで、相続税の節税効果が期待できます。また、不動産から収益が得られているような場合は、受贈者の収入にすることができるといったメリットがあります。

しかし、受贈者には、贈与税に加え、不動産取得税、登録免許税といった税金が別途課税される場合があります。また、不動産の維持管理費、固定資産税が新たにかかるようになる点にも注意が必要です。

5.まとめ

生前贈与は、年間110万円の基礎控除額を超える部分に対して贈与税がかかります。年間110万円以内でおこなう暦年贈与は、コツコツと地道におこなう事で相続財産を減らす効果が期待でき、相続税対策となります。

注意点としては、相続開始前の一定期間内に行った暦年贈与については、相続財産に戻し入れて相続税を計算しなければなりません。生前贈与はできるだけ早めに始めることが肝心です。

贈与税の非課税の特例は、贈与者と受贈者、非課税枠、適用期限など細かい要件がありますのでよく確認しましょう。

生前贈与で節税をしたい方は、手段やタイミングに関し、税金の専門家である税理士などに早めにご相談されることをお勧めいたします。

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