相続で固定資産税は誰が払う?未納・登記・代表者指定の対応ガイド
- 不動産
 
「亡くなった親名義の不動産の固定資産税は誰が払うのか?」
相続が発生すると、多くの方が直面する疑問の一つです。固定資産税は毎年1月1日時点の所有者に課税される税金ですが、所有者が年の途中で亡くなった場合、固定資産税の取扱いはどうなるのでしょうか。
本記事では、相続に伴う固定資産税の基本ルールから、遺産分割中の対応、未払い分の取り扱い、相続放棄との関係性、さらには必要な届出や登記手続きまで、実務で押さえておきたいポイントを解説します。円滑な相続対応にお役立てください。
目次
1.固定資産税の納税義務者
固定資産税は「毎年1月1日時点の所有者」に課税されます。納税義務が誰に引き継がれるかは、遺言書の有無や遺産分割協議の進行状況、不動産の名義変更(相続登記)の有無によって異なります。制度の内容を正確に理解しておくことが重要です。
1-1.相続発生年度の場合
固定資産税は、地方税法に基づき、毎年1月1日現在における登記上の不動産所有者に課税されます。そのため、その年の途中で所有者が亡くなった場合でも、その年分の納税義務者は亡くなった方(被相続人)とされます。
【参考】
固定資産税の納税は一般的に年4回で第1期~4期に分けられます。
納税時期は市区町村で異なりますので、納税時期は市区町村へ確認が必要です。
・4月・7月・12月・2月の地域(多くの自治体)
・6月・9月・12月・2月の地域(東京23区)
1-2.遺産分割中の場合
相続が開始すると、遺産分割がまとまるまでの間、不動産は相続人全員の共有財産とされます。このため、固定資産税も相続人全員が連帯して負担することになります。実務上は、市区町村に「相続人代表者指定届」を提出し(2-2参照)、代表者が納税手続きを行うケースが一般的です。
1-3.遺産分割後の場合
遺産分割協議が成立すると、不動産を取得した相続人が翌年度以降の固定資産税を負担します。ただし、相続登記が完了していないと市区町村は新しい所有者を把握できないため、速やかに名義変更を行う必要があります。
2.遺産分割までの固定資産税に関する注意点
遺産分割が終わるまでの間は、納税通知書の宛名や支払手続きなどに注意が必要です。特に、誰が通知書を受け取り納税するのかは、事前に相続人間で合意しておくことが望ましいでしょう。
2-1.納税通知書は亡くなった方宛てに届く
相続開始後も、登記上の所有者が変更されていなければ、納税通知書は被相続人名義で届きます。相続人はその通知書に基づき納税を行い、支払った人と他の相続人との間で法定相続分などに応じて精算するのが一般的です。
2-2.「相続人代表者指定届」の提出で代表者が手続きできる
市区町村に「相続人代表者指定届」を提出すれば、代表者1名が窓口となり、納税や問い合わせの手続きを一本化できます。届出書は市区町村の資産税担当課に提出し、多くの場合ホームページから様式を入手可能です。
※相続人代表者について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)
	
2-3.納税負担は法定相続分または協議で決定する
固定資産税の負担割合は、原則として法定相続分に従います。ただし、相続人間で合意すれば、異なる負担方法も可能です。例えば「不動産を最終的に取得する予定の相続人が全額を負担する」といった取り決めも認められます。合意内容は遺産分割協議書に明記しておくと安心です。
3.相続発生時の固定資産税の取り扱いと注意点
ここでは、相続が発生した年に固定資産税をどのように処理すべきか、そして特に注意すべき点を解説します。
3-1.未払いの固定資産税は債務控除できる
被相続人が亡くなった時点で未払いの固定資産税がある場合、その金額は相続税の申告において「債務控除」として差し引くことができます。これにより、相続税の課税対象額を減らすことが可能です。
3-2.準確定申告で経費処理できる場合もある
被相続人が不動産事業を営んでいた場合、その事業に係る固定資産税は必要経費に算入できます。納税通知書が生前に交付されていた場合は、相続開始後4か月以内に行う「準確定申告」で経費計上が可能です。
一方、納税通知書が亡くなった後に届いた場合は、準確定申告の経費とはならず、相続人が事業を引き継いだ場合は相続人自身の確定申告で経費に算入します。
固定資産税の経費算入は、以下のいずれかの時点で計上できます。
・納税通知書の交付日
・納期の開始日
・実際の納付日
3-3.相続放棄をすると納税義務がなくなる
相続放棄をした人は、初めから相続人ではなかったものとされます。そのため、固定資産税の未納分や将来の税負担を含め、一切の納税義務を負いません。相続放棄は「相続開始を知った日から3か月以内」に家庭裁判所へ申述する必要があるため、期限に注意しましょう。
4.固定資産税に関連する主な相続手続き
被相続人の不動産の名義は、新しい所有者へ変更する手続き(相続登記)が必要です。登記や市区町村への申告といった一連の手続きを正しく把握し、期限内に対応することが、相続をスムーズに進めるうえで重要なポイントです。
4-1.相続登記
2024年4月から相続登記は義務化され、相続開始を知った日から3年以内に登記を行う必要があります。登記を怠ると過料の対象となるだけでなく、固定資産税の納税通知書が旧名義人宛てのまま届き続け、手続きが煩雑になります。
4-2.現所有者申告届
相続登記が完了するまでの間、相続人は「現所有者」として市区町村に「現所有者申告届」を提出する必要があります。
多くの自治体では「現所有者申告届」と「相続人代表者指定届」を兼ねた様式が用意されており、相続人代表者がまとめて手続きを行うことができます。
5.まとめ
相続における固定資産税は、発生時期や手続きの進行状況によって納税者が変わるため、正確な理解と迅速な対応が求められます。未払い分の債務控除や準確定申告での経費処理、相続放棄との関連性など、税務上のポイントを理解しておくことが大切です。
スムーズな相続手続きを行うためには、早めに相続登記を済ませ、市区町村への届出を適切に行うことが欠かせません。相続人同士での合意形成や協議内容の文書化も、トラブル防止につながります。
相続や固定資産税の取り扱いに不安がある場合は、OAG税理士法人へご相談ください。お客様が直面する一つひとつの問題に寄り添い、円滑な相続の実現をサポートいたします。

- 監修者情報
 - OAG税理士法人 相続チーム 部長奥田 周年
 
専門分野:相続税、事業承継
(東京税理士会:登録番号83897) 1994年OAG税理士法人に入所。承継相続分野における第一人者として、相続を中心とした税務アドバイスを行うほか、事業承継や相続関連で多数の著書を執筆、監修するなど、幅広く活躍している。







