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遺留分放棄は生前にできる!遺言書の内容どおりの相続を実現する方法

「長男に家業を継がせるため、すべての財産を相続させる内容の遺言書を作成したいけれど、相続発生後に他の兄弟から遺留分を請求されてトラブルになるのではないか…。」
とご心配でしょう。

遺留分とは、亡くなられた方の兄弟姉妹以外の相続人に対して最低限保障されている相続分です。遺留分を下回る内容の遺言や生前贈与が行われた場合、遺留分の権利を持つ相続人は遺留分に相当する金銭を取り戻すことができます。

遺留分は遺言書より優先されますので、特定の相続人にのみ財産を引き継ぐ遺言書を作成しても、遺留分侵害額請求を受ければ拒否することはできません。

遺言書の内容を希望通りに実現するために、ご自身が健在なうちに遺留分を放棄してもらうと安心です。

本記事では生前にできる遺留分放棄の手続きと知っておくべき遺留分放棄の注意点についてご説明いたします。

1.遺留分放棄は生前にもできる

遺留分放棄とは、一定の相続人に対して最低限保障される相続分である遺留分を自ら放棄する手続きです。遺留分放棄は生前と相続発生後のどちらも行うことができますが、手続きが異なります。

生前の遺留分放棄は、放棄するご本人の意思に反して行われないように、家庭裁判所の許可が必要です。一方、相続発生後の遺留分放棄は家庭裁判所の許可は不要です。特別な手続きをせずに遺留分侵害額請求の時効を迎えると遺贈を承認した(遺留分放棄をした)ことになります。あるいは、遺留分を侵害している相続人に対して、遺留分放棄をする意思表示をすれば足ります。

図1:遺留分を請求できる権利を持つ相続人

※遺留分侵害額請求について詳しくはこちらをご覧ください。
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※遺留分侵害額請求の時効について詳しくはこちらをご覧ください。
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2.生前に遺留分放棄するためには家庭裁判所の許可が必要

生前に遺留分を放棄するためには、遺留分の権利を持つ相続人が家庭裁判所に申立てをして許可を得なければなりません。家庭裁判所が許可をするかどうかの判断には、3つの基準がありすべてを満たす必要があります(2-3参照)。

2-1.遺留分放棄の手続き4STEP

遺留分の放棄の許可を得るまでの手続きは、下記4STEPです。

STEP1:「遺留分放棄の許可」の申立て
STEP2:照会書または審問期日の通知
STEP3:家庭裁判所で審問を受ける
STEP4:遺留分放棄の許可または不許可の通知

遺留分放棄の必要書類(2-2参照)を遺言者(被相続人)の住所地を管轄する家庭裁判所に提出すると(STEP1)、家庭裁判所から照会書または審問の期日が通知されます(STEP2)。照会書を受け取った場合は回答し、審問の場合は家庭裁判所で審問を受けます(STEP3)。


審問では遺留分放棄が本当に申立人の意思によるものなのかを確認されます。遺留分放棄の許可がおりたら通知が届きます(STEP4)ので、証明書を取得しておきましょう。

2-2.遺留分放棄の申立ての必要書類と費用

遺留分放棄の申立てに必要な書類は表の通りです。申立書は裁判所のホームページからダウンロードできます。状況により裁判所から追加書類の提出を求められることがあります。
申立ては1件につき800円の手数料がかかり、収入印紙を購入して申立書に貼って納付します。

申立書はこちら→https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/file2/2019_betsu1shinpan_m.pdf

表1:遺留分放棄の手続き方法
遺留分放棄の手続き方法

2-3.家庭裁判所が遺留分放棄の許可をするための3つの判断基準

家庭裁判所が遺留分放棄の許可をする基準は下記3つです。

①遺留分放棄がご本人の意思により行われている
②遺留分放棄に合理的な理由と必要性がある
③遺留分放棄と同等の見返りを受けている

遺留分放棄が遺言者や他の相続人などから強要されたものでなく、遺留分の権利を持つご本人の意思であるか(①)、事業の継続のため特定の相続人に相続させるなど遺留分放棄に合理的な理由と必要性があるか(②)、遺留分を放棄する相続人が代償として贈与など遺留分と同等の見返りを受けているか(③)という3つの要件がすべて満たしている場合に許可されます。

3.生前に遺留分放棄をしても相続権は失わない

遺留分放棄は遺留分を請求する権利を放棄することなので遺産相続をする権利は失いません。遺留分の請求は遺言書があり遺留分を侵害していることが前提となりますので、遺言書がない場合は通常通り遺産分割協議が行われます

3-1.遺留分放棄をしても遺産分割協議で財産を取得できる

遺留分放棄をしても相続権がありますので、遺言書がない場合放棄をした相続人に遺言により指定した相続分がある場合遺言書に記載されていない財産が見つかった場合などは、遺産分割協議に参加して財産を取得することができます。

3-2.遺留分放棄をしても借金を引き継ぐ

遺留分放棄は、プラスとマイナスの財産をすべて放棄する「相続放棄」とは異なりますので、遺留分放棄をした相続人も債務がある場合は引き継がなくてはなりません。資産よりも負債が多い場合は相続放棄を検討しましょう。

※遺留分侵害額請求の時効について詳しくはこちらをご覧ください。
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3-3.遺留分放棄の撤回は原則できない

遺留分放棄は家庭裁判所に許可された場合は原則として撤回ができません。ただし、家業を継ぐ予定で全財産を相続させる長男が継がないことになったなど放棄を認めた事情が変わった場合は撤回が認められる可能性があります。遺留分放棄の撤回についても、家庭裁判所へ申立てをおこなわなくてはならなということに注意が必要です。

4.まとめ

生前に遺留分放棄をすることにより、相続発生後に遺留分侵害額請求をすることができなくなりますので、遺言者の希望通りの遺産分割を実現できます。遺留分放棄は遺留分の権利を持つ相続人が家庭裁判所に申立てて許可を得なければなりません

遺留分は最低限保証された相続分であるため、遺留分権利者に不利益になることのないようにご本人の意思や申立ての事情などが慎重に判断されます。遺言者は充分な代償を支払わなくてはなりません。

遺留分放棄は相続人間の話し合いが必要になります。遺留分放棄を円滑に進めたいとお考えの方は、相続に強い専門家にご相談されることをおススメいたします。

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