別荘地も相続税評価は必要!特別な評価法はないが傾斜地なら減額可能

  • 相続税

「亡くなった父がバブルのときに購入した別荘地を相続しなければならない。購入した当時に比べると、かなり価値が下がっている。立地条件も悪いので売れるとは思えないが、もし売却できたとしても損失の方が大きい。それでも相続税評価をしなければならないのだろうか・・・」

かつては人気を博した別荘地も、時代の流れと景気の悪化が影響して相場が下がり、いざ相続することになっても「不要な財産」となっている方もいらっしゃるかもしれませんね。場所が遠ければ、なおさら利用する機会は少なく、ただ別荘を維持するだけで、負担の方が大きくなるかもしれません。

別荘地は、亡くなられた方が所有していた財産なので、相続税の課税対象財産として評価をしなければなりません。

本記事では、別荘地の相続税評価について、「特別な計算方法があるのか?」、また「評価を下げることができるような方法があるのか?」などの疑問点について、具体的にご説明いたします。

1.別荘地の相続税評価は通常の土地の評価方法と同じ

別荘地だからといって、相続税の評価方法に「特別な計算方法」はありません。どんなに不動産としての価値が下がっていたとしても、別荘地の評価に特別な考慮はありません。現況に応じて、通常の土地と同じように評価しなければなりません。

建物が建っているのであれば、売却の可能性を期待することができますが、ただの荒れ地と化してしまった場合には、財産として引き継ぐことしか、選択の余地はないかもしれません。もし、売却をご検討される場合は、地元の不動産屋に一度ご相談されてみることをお勧めいたします。

別荘地は所有し続ける限り、固定資産税などの維持費がかかりますが、相続人が払うしかありません。固定資産税は、計算の元となる「課税標準額」が、土地で30万円未満、家屋で20万円未満であるならば、「免税点以下」となり、かかりません。

2.土地の相続税評価をするための3つのステップ

評価方法は、以下の3つのステップで進めます。それぞれのステップを詳しく確認していきましょう。

図1:別荘地の相続税評価を計算するための3ステップ

2-1.ステップ①:土地の種類「地目」を確認する

土地の評価額を計算する前に、土地を使いみちによって区分した「地目」を、登記簿謄本などで確認しましょう。ご自宅の土地のように、通常、建物が建っている場合の地目は「宅地」です。宅地以外の地目には、田、畑、山林、原野など、全部で23種類の地目があります。

厳密にいいますと、登記簿謄本(正しくは全部事項証明書といいます)に記載されている地目ではなく、所有者の方が亡くなられた時点での別荘地の現況を確認した上で判断する必要があります。

2-2.ステップ②:路線価地域か倍率地域かを確認する

土地の評価方法には、「路線価方式」「倍率方式」という2種類の計算方式があります。路線価方式とは「道路についた値段によって評価する方法」、倍率方式とは「路線価のないエリアを評価する方法」です。

【2つの方式の計算式】
路線価方式:路線価(道路についた値段)×面積(土地の広さ㎡)=相続税評価額
倍率方式:固定資産税評価額×倍率(国税庁で定めた一定の率)=相続税評価額

まずは、評価対象の別荘地が、路線価地域に所在があるのか、倍率地域に所在があるのかを確認します。国税庁ホームページ「路線価図・評価倍率表」の項目へアクセスして、市区町村名の索引図からたどって、該当する土地の所在がどちらの地域に属しているのかを調べることができます。詳しい閲覧方法は、国税庁ホームページで説明されています。

参考:国税庁ホームページ「路線価図・評価倍率表」

図2:路線価地域と倍率地域が混在した「路線価図」の例

たとえば、別荘地が接している道路に「55F」のような「数字+アルファベット」が書かれている場合は、その土地は「路線価地域」ということになります。道路に何も記載がない場合は倍率地域となり、路線価図上でも「倍率地域」と明記されています。

2-3.ステップ③:それぞれの方式で評価額を計算する

別荘地がどちらの地域に属しているかを確認できたら、各々の方式にそって、相続税評価額を計算していきます。

図3:相続税評価額の計算方法

2-3-1.路線価方式の場合の計算

別荘地が接している道路に書かれている「52F」のような表示が「路線価」を表しています。路線価とは1㎡ごとの土地の価格で、千円単位で付けられています。「52F」であれば、1㎡あたり52,000円という意味です。

数字の後ろのアルファベットは、その土地が借地に該当する場合の「借地権割合」を表していますが、借地でない場合には関係ありません。

図4:路線価図の見方

路線価地域では、土地の面積(㎡)に路線価を掛け合わせたものが相続税評価額となります。厳密な評価を求める場合には、その土地の形状や道路に接している条件などを考慮して、評価額の補正や加算が必要となります。

※路線価について詳しくは、こちらを参考にしてください。

2-3-2.倍率方式の場合の計算

別荘地が倍率地域であることがわかったら、該当エリアの「倍率表」を索引図から探します。「路線価図・評価倍率表」のページ画面の左側に「この市区町村の評価倍率表を見る」というボタンがありますので、そこをクリックすると倍率表が開きます。

図5:倍率表の見方

倍率地域の場合、土地の「地目」によって倍率が異なります。土地の固定資産税評価額に、該当地の地目欄に記された倍率を掛け合わせたものが相続税評価額となります。

固定資産税評価額は、所在地の役所で入手できる「固定資産評価証明書」の価格欄に記載された金額です。評価証明書をすぐに入手できない場合は、自治体によって送られてくる時期は異なりますが(4月~6月ごろ)、不動産の所有者宛に年に1度郵送される「固定資産税納税通知書の課税明細書」の価格を使ってください。

図6:固定資産税評価証明書

3.建物の相続税評価額は固定資産税評価額と同額

建物(家屋)の相続税評価額は、固定資産税評価額と同じです。別荘地の建物も通常と同じ考え方です。

原則的には、建物の固定資産税評価額に、所定の倍率をかけて評価することになっていますが、この倍率は「1.0」と定められているため、固定資産税評価額と同額ということになります。

固定資産税評価額は、先述した土地と同じで、「固定資産評価証明書」の家屋分を取得して確認します。課税明細書の価格でも計算はできますが、評価証明書の価格と異なっている場合があるため、正確に評価する際は、土地と家屋両方の「固定資産評価証明書」を取得してください。評価証明書は郵送で取得することもできますので、各自治体のホームページをご確認ください。

図7:固定資産税納税通知書に同封される「課税明細書」

4.別荘地の評価額を減額できる2つの方法

別荘地の場合、通常よりも土地の勾配が大きい、もしくは実勢価格と評価額の差が大きいというような場合があります。そのような時は、より実態に即した評価をすることで、評価額を減額できる可能性があります。

4-1.傾斜地なら造成費を引くことができる

評価する土地が傾斜地だった場合、そのまま家を建てることは困難です。整地費、土盛費、土止費といった「宅地造成費」をかけて、建物が建てられるようにしなければなりません。

建物が建っていない別荘地を相続することになった場合、そこが傾斜地に該当すれば、この宅地造成費を評価額から引くことができます。実際に造成をしなくても構いません。傾斜の角度によって、都道府県ごとに造成費を定めており、国税庁ホームページで詳細を確認することができます。

以下で、別荘地として人気があるエリアを2つ、例として示します。

表1:令和4年度の「長野県」の宅地造成費の金額表

表2:令和4年度の「静岡県」の宅地造成費の金額表

 

※参考:国税庁ホームページ 財産評価基準書「宅地造成費の金額表」令和4年分より
    <長野県>https://www.rosenka.nta.go.jp/main_r04/kanto/nagano/others/c610300.htm
    <静岡県>https://www.rosenka.nta.go.jp/main_r04/nagoya/sizuoka/others/f210300.htm

【路線価地域の150㎡(路線価120,000円)で20度の傾斜地であった場合(静岡県)】

平坦な土地であれば、120,000円×150㎡=18,000,000円の評価となりますが、形は綺麗な整形地であっても20度の傾斜があれば、47,100円×150㎡=7,065,000円が宅地造成費となり、18,000,000円-7,065,000円=10,935,000円まで減額できます。

傾斜度は実際に現地にいって測らなければわからないものです。傾斜地の評価は、専門的な知識が必要となりますので、税理士にご確認いただいた方がよいでしょう。

4-2.評価が実勢価格よりも高い場合は時価を評価額とする

相続税評価額は一般的に実勢価格の80%といわれています。しかし、実勢価格が下がっているのにも関わらず、路線価や固定資産税評価額が以前のままであることなどから、相続税評価額の方が高くなってしまうことが別荘地ではよくあります。

このような場合には、実勢価格である時価を相続税評価額とすることができます。費用がかかりますが、不動産鑑定士に評価額を算出して申告、もしくは相続税の納税期限までに別荘地を売ることができれば、実際の売買価格(時価)を評価額とすることができます。

5.まとめ

憧れの別荘地が「負動産」となってしまっている場合が多々あります。数十年前に流行った原野商法で、山林、原野などを区画割しただけの分譲地を購入してしまったような場合、相続しても、ただ維持費の負担だけを引き継ぐことになるかもしれません。

相続税の心配がある場合は、別荘地も相続財産として、きちんと評価額を計算しなければなりません。特別な評価ではなく、通常の土地と家屋の計算方法と同じです。減額できるケースは、傾斜地に該当したり、、実勢価格が下落しているような場合です。

別荘地を相続される場合は、やはり相続に強い税理士に正確な評価額を算出してもらった方がよいでしょう。何よりも別荘地の場所の特定と、現況を把握するための現地調査を早めにおこない、評価額を確認するとともに、「維持していくのか、売却できるのか」について、現地の不動産業者にご相談いただければと思います。

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