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貸金庫が相続時に見つかった場合の対処法と開けるため4つのSTEP

貸金庫と聞くと、金融機関に毎月お金を支払って利用することから“お金持ちの方が利用するもの”と思いがちですが、大震災の被災地で金融機関の貸金庫が無事であったというニュースもあり、近年は貸金庫を利用する方が増えています。
貸金庫にはその方にとって重要なものを保管することから、預金通帳や不動産の関係書類などを入れる方もいれば、アルバムや思い出の品を入れる方まで様々なケースがあります。

この貸金庫は契約した方しか開けることができません。つまり、契約した方が亡くなられた場合、貸金庫の鍵があっても簡単には開けられません。
金融機関の複雑な手続きを踏まないと開けられなくなるため、相続時に貸金庫が見つかると中身を確認することだけでも大変です。貸金庫に相続財産が入っていると相続の対象となることから、中身を確認しないまま相続を進めることもできないのです。

本記事では亡くなられた方が契約していた貸金庫を相続時に開扉する方法について詳しくご説明します。

1.貸金庫の契約があることがわかったら最優先で手続きしよう

貸金庫の中身はたとえ仲の良いご家族であっても、契約している方からなかなか教えてもらえるものではありません。契約している方が亡くなられると各金融機関では所定の申請書類を記入し、相続手続きで必要な書類と類似の提出書類も求められます。貸金庫を開けるために多くの時間を費やしてしまうこと、中身を確認しないと相続手続きも進められないことから、最優先での手続きが必要となります。

また、貸金庫の利用料は正式に解約が終わるまで継続しますので、こちらも早めに対応した方がよい理由の一つです。

1:貸金庫を開ける手続きは難しいイメージ

1-1.貸金庫の開扉は申請から1ヶ月ほどの日数を要する

書類を揃える手間を含めると、申請から実際に貸金庫を開けるまでにはおおよそ1ヶ月ほどの日数を要します。書類を完璧に整えてから金融機関へ申請をしたとしても、金融機関がその書類を確認するため開扉は後日となります。

特に亡くなられた方の財産がマイナスの場合には相続放棄をするべきか判断が必要となりますが、相続放棄の期限は亡くなられてから3ヶ月であり、その間に判断して裁判所へ書類の提出が必要となります。よって申請に1ヶ月の時間がかかるとなるとやはり早期に実施する必要があります。

1-2.貸金庫は原則、相続人全員の立会いがなければ中身の確認ができない

貸金庫を開けるのは、原則、相続人全員の立会いが必要です。亡くなられた方が貸金庫を開けるための代理人を定めている場合がありますが、この代理人の権利は生前のみのため、亡くなられたあとは代理で開けることができず相続人全員の同意が必要となります。

一方で、相続人全員が立ち会うことが難しい場合は、相続人全員の同意のもと代表者が開扉して中身を確認することはできますが、貸金庫の中身をそのまま持ち帰ることは着服や隠ぺいを防ぐために制限されることがあります。

1-3.金融機関が不明の場合は探すだけで時間がかかる

亡くなられた方が貸金庫を利用していたかどうかは、通帳を確認した際に引き落としに気づいたときや、貸金庫の鍵を見つけた時などです。いずれの場合も貸金庫の契約があるということは分かりますが、該当する金融機関が分からないこともあります。
そんな場合には、まず亡くなられた方が住んでいた地域や仕事先の近くの金融機関へ照会に行きましょう。金融機関には「亡くなられた方(契約者)の除籍謄本」「相続人と証明できる書類」「ご自身の顔写真付の身分証明書」を持参して直接窓口に問い合わせに行きます。

2:金融機関で照会してもらう際に必要な書類

2.貸金庫を開ける4つのステップ

貸金庫には相続の対象となる財産が保管されている可能性がありますが、1章でご説明したとおり簡単に中身を確認することはできません。開扉の前提条件として相続人全員が立ち会う、もしくは同意している必要がありますので難易度も高くなります。
次の4つのステップに沿って、最優先で手続きを進めていきましょう。

なお、契約をされている方が亡くなられた事実を知ると、金融機関は口座の凍結とともに貸金庫も凍結してしまいます。凍結される前に中身を取り出すことは、相続において大きなトラブルの要因となりますので、避けましょう。

2-1.ステップ①:金融機関に電話をして訪問日を予約する

相続人全員の立ち会いが必要なことから、皆さんの都合が合う日程を決めて金融機関の訪問日予約を取ります。貸金庫を開扉できる時間は自由に選ぶのではなく、窓口の営業時間の中で金融機関から指定される場合が多いです。金融機関によっては、数週間後でなければ予約がとれないこともありますので、早めにご連絡されることをお勧め致します。

2-2.ステップ②:必要な書類を揃える

予約する際に、手続きに必要となる提出書類の説明がありますので、よく確認して必ず訪問日までに揃えましょう。書類に不備があると開扉できない可能性がありますのでご注意ください。また、訪問日よりも前に必要書類の提出を求められることもあり、その場合には郵送可能な場合がありますので、その点は該当の金融機関に事前にご確認ください。

基本的な必要書類は表1のとおりです。

なお、鍵を紛失していた場合は再発行費用が別途かかります。最近は貸金庫も暗証番号(パスワード)認証で開扉できる全自動型貸金庫などもあります。貸金庫の形態によっては必要書類が変わることもありますので念のため、詳細については金融機関へご確認いただくと安心です。

1:亡くなられた方の貸金庫を開ける際に必要な書類

必要書類 取得場所
1 亡くなられた方の除籍謄本 亡くなられた方の本籍地の役所
2 相続人全員の戸籍謄本 それぞれの本籍地の役所
3 相続人全員の印鑑証明書 それぞれの住民登録地の役所など
4 各金融機関所定の開庫手続きの書類、念書 該当金融機関
5 貸金庫の正鍵またはカード 亡くなられた方のご自宅
6 貸金庫契約時の届出印 亡くなられた方のご自宅

2-3.ステップ③:予約した日時に相続人全員で金融機関へ行く

金融機関に提出した書類に不備がないことが確認されると、いよいよ貸金庫の開扉です。開扉する際、行員の方は「当日立ち会われた方々のお名前」と「金庫の中身」に関し、詳しく記録をとります。この記録書類は金融機関に保管されると同時に、立ち会われた方にも控えが渡されます。記録がきちんと残りますので財産の不正な着服や隠匿行為は事実上できないことになっています。

相続人全員が立ち会うことができない場合、公証人の方の立ち会いが求められることがあります。これは、中身の記録を公正証書(事実実験公正証書という)として残す必要性が高いと判断された場合です。金融機関としては、万が一勝手に開扉して財産が紛失したということになってはいけないのでこのような厳重な対処をしている場合があります。

図3:金融機関の行員の方が立会いのもと貸金庫が開けられるイメージ

2-4.ステップ④:中身を確認して貸金庫の解約手続きをする

貸金庫の継続契約は可能ですが、大抵の場合は開扉し中身を持ち帰ることになります。その場合には、そのまま解約のお手続きを進めることになります。この時点では、当然契約された方が亡くなられた事実が金融機関に伝わっていますので、口座は凍結されています。よって、解約の日まで発生し続けた利用料の支払いが滞っていますので、未払い分は開扉された方が現金で精算することになります。事前に精算金の確認をされておくとスムーズです。

また、相続人全員が立ち会うことができなかった場合、中身をそのまま持ち帰ることができない場合があります。先述したように責任問題に発展するような事態を防ぐためです。やむを得ない理由がある場合は事前に金融機関へご相談ください。全員が揃わない場合の対処法については次の3章でもご説明します。

3.全員で行くことができない場合の対処法

相続人が遠方に住んでいる場合や、高齢のため外出が困難である場合、仕事の関係等の理由で相続人全員の立ち会いが難しい場合もあります。その場合にはどのようにすればよいか、ご説明します。

3-1.同意書(委任状)があれば開けられる

当日立ち会いができない相続人がいる場合には、開扉に関する同意書(委任状)を作成してもらい持参します。この場合には、公証人や弁護士、司法書士といった専門家に立会いを求めることがあります。すでに相続に関してご相談されている専門家の方がおられましたら、まずはその方にご相談してみましょう。

同意書(委任状)は、各金融機関でそれぞれ用意している書式がありますので問い合わせましょう。
また、同意者(委任者)本人の直筆でご記入をいただきましょう。もし専門家に依頼したとしても、もちろん同意書(委任状)の提出は必要ですが、書面の用意を代行してくれます。

3-2.遺言で遺言執行者に権利を与えれば一人だけで開けられる

すでにお手元に遺言書がある場合には遺言の中身を確認します。遺言の中で遺言執行者が指定されており、その遺言執行者に開扉する権限が与えられていれば、遺言執行者の方の権限で何の問題もなく開けることできます。遺言執行者の指定がない場合は、あとからでも家庭裁判所へ申し出をして選任することが可能です。開扉に関して困った場合には司法書士や弁護士など早めに専門家へご相談されることをお勧めします。

※遺言執行者について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)

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4.貸金庫に入っているケースが多いものとその相続方法

いざ貸金庫を開扉するとなると中身は何だろう?と期待する気持ちが多少はありますよね。貸金庫に保管されていそうなものと、貸金庫で見つけたものの相続方法について事例を含めてご紹介します。金融機関によっては、貸金庫に預けてよいものを定めている場合があります。

4:貸金庫の中身のイメージ

4-1.貯金通帳

預金通帳が入っていた場合は、まずは記帳内容を確認します。場合によっては過去の履歴や現時点での残高証明書を金融機関に発行してもらう必要があります。残高が確認できれば分割対象財産に含めます。その後は、遺産分割協議が調ったのち、預金の解約手続きを行い、相続人が相続します。

※預金の相続について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)

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4-2.不動産関係の書類

不動産の権利証が保管されていることも多くあります。古いものであれば登記内容がすでに変わっている可能性もありますので、法務局で最新の登記情報を確認しましょう。亡くなられた方の所有と確認できれば、分割対象財産に含めます。相続する人が決まったら相続登記(所有権変更)を忘れずに行いましょう。

4-3.保険の証書

保険の証券が入っていた場合には、該当の保険会社に問い合わせをして、現在の契約内容を確認します。受取可能な保険金があれば、指定された受取人自らが手続きをしましょう。受取人が指定された保険金は分割対象の財産には含まれませんが、非課税枠を超えた場合は相続税の申告または納税が必要となる場合がありますので注意が必要です。

また、保険金は契約のパターンで課税される税金が異なる可能性がありますのでご不安な場合は税理士に相談しましょう。

について詳しくはこちらの記事をご確認ください。

※保険契約について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)

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4-4.貴金属、宝石

貴金属等が見つかった場合には、それぞれの価値を確認します。金であれば亡くなられた日の価格で計算をします。貴金属や宝石については、その評価額が分からず分割対象財産とすべきか判断しかねるので、迷った場合は専門の買取業者等に査定して頂くのも一つの方法です。評価額が5万円以下のようなものであれば、分割対象というよりは形見として引き継ぐという考え方ができます。

4-5.アルバム、思い出の品

亡くなられた方が大切に保管しておきたかった形見の品です。その思いを大事に受け継ぎましょう。
できれば全てをデータ化して保存すれば、相続人同士で共有することもできますし、長期間の保存も可能になります。亡くなられた方の思いを大切に受け取って頂ければと思います。

5.さいごに

貸金庫をできる限り早めに開扉した方がよい理由をご理解頂けましたでしょうか。

実際のところは開扉してみないと何が預けられているか分からない貸金庫の中身に、この後の相続を左右する財産や遺言書、または負債に関する契約書類などが保管されていた場合、相続手続きにもたらす影響は大きくなります。
また、相続税の申告や相続放棄の判断には期限があります。すでに手続きを終えてしまった後に貸金庫の存在が分かった場合には、相続のやり直しといった事態にもなり兼ねません。

貸金庫の開扉は、最優先事項としてお手続きを進めて頂き、亡くなられた方が大切に保管されていたものを早めにご確認して頂ければと思います。

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