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相続税の修正申告と更正の請求って何が違うの?注意すべき期限と手続

「相続税の申告と納税がようやく終わったばかりなのに、新たな相続財産が見つかってしまった!」
「遺言書の内容にそって遺産を受け取り、相続税の申告も済ませたのに、遺留分を請求されてしまった!」
このように「相続税の申告内容が変わってしまった」場合はいったいどうすればよいのでしょうか?

相続税の申告期限は、原則「亡くなられた日の翌日から10ヶ月以内」となっています。期限後に「申告漏れの相続財産が発覚した場合」や、「申告内容に変更が生じた場合」には、正しい申告内容に修正する手続きが必要です。

申告期限後に修正を行う手続きには、「修正申告」と「更正の請求」という2つの手続きがあります。なお、申告期限前であれば、修正申告とは言わず「訂正申告」手続きとなります。訂正申告の場合は、申告期限後の手続きとは異なる点がありますので確認(5章)しておきましょう。

本記事では、一度提出した申告書を修正しなければならない場合の期限や手続きの進め方について、詳しくご説明いたします。各々の手続きの違いを理解して、できるだけ早めに申告内容を修正できるように進めていきましょう。

1.「修正申告」と「更正の請求」の違い

申告した相続税に変更が生じた場合、正しい税額に修正する手続きをしなければなりません。相続税の申告期限後に、納めた税金が少な過ぎた場合は「修正申告」を、納めた税金が多すぎた場合は「更生の請求」手続きを行います。申告期限前であれば、修正申告ではなく「訂正申告」を行います(5章参照)。なお、これらの手続きはいずれも、納税者が自主的に行うものとされています。修正手続きにご不安のある場合は税務署で相談することもできます。

図1:納税額が不足している場合は「修正申告」

図2:納めすぎた税金の還付を求める「更正の請求」

表1:修正が必要な場合の手続き一覧

2.「修正申告」の手続き

修正申告は、本来支払うべき相続税の金額より少ない税額で納めた場合に、不足分を追加で支払う手続きです。早めに修正申告をすることによってペナルティは軽く済みます(2-5参照)。

図3:修正申告をして不足分の税金を支払う

2-1.修正申告が必要となる5つのケース

修正申告が必要となる主なケースは以下の通りです。

①後から新たな相続財産が見つかった
②相続税の計算ミス、財産評価に誤りがあった
③相続税の特例適用にミスがあった
④未分割申告を行い、その後決まった分割内容で相続分に変更が生じた
⑤税務署から財産の申告漏れを指摘された

2-2.修正申告の方法

修正申告の手続きは、「修正申告書」に修正前と修正後の金額を記入し、表2に示す必要書類を添付して税務署に提出します。

特例の適用などをする場合には必要書類が異なってきますので、事前に税務署に確認をしておくと安心です。修正申告書の提出方法は、直接税務署に提出郵送により提出、あるいは国税庁のe-taxからのオンライン申請と方法は選べます。

参照:国税庁ホームページ「相続税の申告書等の様式一覧(令和4年分用)」
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/sozoku-zoyo/annai/r04.htm

図4:相続税の修正申告書様式

表2:修正申告の必要書類

2-3.修正申告の期限

修正申告ができるのは、法定申告期限(相続開始を知った日の翌日から10ヶ月)の翌日から5年以内です。不足分の納税期限は修正申告をした日になりますので、修正申告書を提出するときに追加分の納税も速やかに行いましょう。

法定申告期限の翌日から5年以上たってから間違いが発覚した場合、相続税には時効があるため、修正申告は必要なくなりますが、意図的に相続税を少なく申告していたとみなされた場合には、相続税の時効を7年まで延長するケースがあります。

図5:修正申告の期限も原則5年

2-4.修正申告を行うと異議申し立てできない

税務調査で指摘されてから修正申告を行うと、異議申立てはできなくなります

修正申告を税務署に勧められても、「どうしても納得できずに応じない場合」には、税務署から修正した納税額が通知(更正処分)されることになります。更正処分といっても、あくまでも「通知」なので、別途罰則があるわけではありません。また、税務署が更正処分を通知できるのは、原則5年(虚偽があったとみなされた場合は7年)までと定められています。

2-5.修正申告のペナルティ

相続税の申告期限を過ぎると、法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて、利息として「延滞税」がかかります。支払いが遅くなればなるほど、延滞税は増えていきます。

図6:修正申告におけるペナルティ

 

また、本来支払うべき相続税額より少なく申告したときは、過少申告加算税が課されます。修正申告を行う時期により加算税率が異なります。(表3参照)

税務調査の連絡前に自主的に修正申告した場合は、過少申告加算税はかかりません。税務調査の連絡を受けた後、税務署からの指摘を受ける前に自ら修正申告した場合は、追加で納める相続税額に対して5%(税額によっては10%)、税務調査実施後に修正申告をした場合は10%(税額によっては15%)が上乗せされます。

表3:過少申告加算税の利率

※延滞税について、詳しくはこちらを参考にしてください。(当サイト内)
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※相続税の修正申告について、詳しくはこちらを参考にしてください。(当サイト内)
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3.「更正の請求」手続き

「更正の請求手続き」とは、納め過ぎた相続税を還付(戻す)してもらう手続きのことです。「更正の請求書」を税務署長に提出すると、修正内容が審査され、納めすぎた税金があると認められた場合に税金が還付されます。明らかに税金を納め過ぎていた場合でも、更正の請求手続きをしなければ、還付されることはありません。

図7:更正の請求をして納め過ぎた税金を還付してもらう

図8:更正の手続きのスケジュール

3-1.更正の請求が必要となる5つのケース

更正の請求が必要となるケースは以下の通りです。相続税申告において、未分割財産の分割方法が決まり、還付を受ける請求をするというケースがよくあります。相続税の申告は、亡くなられた翌日から10ヶ月以内に行わなければならないため、たとえ遺産分割協議が成立していない場合であっても、相続税の申告期限は延長されません。

この場合、いったん法定相続分で相続財産を取得したものとみなして各人の相続税を計算し、申告・納税をすることになります。申告後に分割協議が成立し、いったん納めた相続税額が遺産分割後の相続税額より多い場合には、更正の請求手続きを行い、納めすぎた相続税を還付してもらいます。

①計算ミスで相続税を納めすぎてしまった
②未分割だった財産の分割方法が決まり、納めた税額より少ない税額に変わった
③相続人が増えたため(認知した子など)、相続税の控除額が増えた
④遺留分侵害額請求に応じたため、自分の相続分が減少した
⑤遺贈に関わる遺言書が見つかった

3-2.更正の請求手続きの方法

更正の請求の手続きは、還付を受ける相続人ごとに「更正の請求書」と「修正申告書」を作成して税務署に提出します。修正の事実を証明する書類の添付が必要です。

図9:更正の請求書

参照:国税庁ホームページ「税の更正の請求書」
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/sozoku-zoyo/annai/1585-10.htm

更正の請求が認められた場合は、「相続税の更正通知書」が届き、納めすぎた税金が還付されます。

更正の請求が認められない場合には、「更正すべき理由がない旨の通知書」を受け取った日の翌日から3ヶ月以内に、処分を行った税務署長に対し再調査の請求、あるいは国税不服審判所に審査請求をするかのいずれかを選択することができます。これらの手続きを経ても更正の請求が認められない場合には、裁判所に課税処分の取消し訴訟を行うことができます。

表4:更正の請求の必要書類

3-3.更正の請求の期限

更正の請求は、理由によって2つの期限があります。

単純に相続税の計算ミスや財産の評価の間違いなどの理由で手続きする場合の期限は、相続税の申告期限から5年以内です。
未分割申告後に分割が決まり、特例を適用させて還付を受けるなど特別な事情があった場合の期限は、その翌日から4ヶ月以内となります(特則)。期限を過ぎてしまうと還付を受けられないので注意が必要です。

図10:更正の請求の期限は原則5年

図11:特別な事情が生じた場合の期限 ※知った日の翌日から4ヶ月

4.未分割申告であっても分割協議確定後の相続税総額が変わらないとき修正申告は不要

未分割のまま相続税の申告をして、その後遺産分割協議が成立し、遺産相続の割合が変わった場合でも、相続税の総額に変更がなければ、修正申告は不要です。

ただし、相続人ごとに納めるべき相続税の納税金額が変わることにはなるため、相続人のうちのだれかひとりでも更正の請求手続きをした場合には、他の相続人の方も修正が必要となります。更正の請求手続きをするのか、相続人間だけで調整するようにするのかは、相続人同士でよく話し合って決めましょう。たとえ相続人間であっても、高額な金銭のやり取りは後に贈与などを疑われてしまう原因になりかねませんので十分注意してください。

5.申告期限前に行う訂正申告

相続税の申告期限前に申告を修正する手続きを「訂正申告」といいます。訂正申告の場合、たとえ少なく税金を納めていたとしても、期限内なのでペナルティはありません。訂正申告をする場合は、改めて相続税申告書を作成し直し、期限内に申告・納税をしてください。分かりやすいように申告書の余白に赤字で「訂正申告」と記載しておきましょう。期限内に訂正申告を複数回行った場合は、最後に提出した申告書が採用されますので、提出済みの申告書を取り下げるなどの手続きは必要ありません。

6.まとめ

修正申告と更正の請求手続きはどちらも申告期限を過ぎてから、申告内容を修正する手続きのことです。

当初申告した額と正しく計算した金額を比べて不足分がある場合は「修正申告」、多く納めすぎていた場合には「更正の請求手続き」を行います。修正申告は、手続きが遅くなればなるほどペナルティとして別途税金が加算されます。また、更正の請求手続きは、定められた期限を過ぎてしまうと還付手続きができなくなる場合がありますので注意が必要です。

新たに相続財産が見つかった場合、あるいは未分割の相続財産の分割協議が成立した場合などで、修正申告や更正の請求の手続きが必要な方は、早めに手続きをしましょう。修正申告などに不安がある場合には、相続税に詳しい税理士に早めにご相談されることをお勧めいたします。

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