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【同時死亡したときの相続】死亡の先後が明らかでないときの考え方

「家族を同時に亡くした場合の相続はどのようにすればよいのでしょうか・・・。」

車や船舶における事故、火災、天災、災害といった不慮の事故に巻き込まれ、大切なご家族が同時に亡くなられてしまうといった計り知れない深い悲しみの中にいても、残された遺族は、これからの人生のために「相続」をして、前に進んでいかなければなりません。

相続は、亡くなられた順序により、法定相続人や相続割合が大きく変わります。

複数の方が亡くなられ、どちらが先に亡くなられたのか分からない場合、「同時に死亡した」と推定します。

本記事では、同時死亡の具体的な事例をもとに、相続関係について詳しくご説明いたします。

1.死亡の順序が分からないとき「同時死亡」と推定する

同時死亡とは、複数の人が亡くなられ、どちらが先に亡くなられたのか分からない場合に、同時に死亡したものと推定するという民法の制度です。

誰が相続人となるかは民法で定められています。配偶者は常に法定相続人となり、お子さん、ご両親、兄弟姉妹の順番で遺産(相続財産)を引き継ぎます。どなたが先に亡くなられたかにより、法定相続人や相続財産を引き継ぐ割合(法定相続分)が決まります。

図1:法定相続人の順位と範囲(父が先に亡くなった場合)

【事例】父、母、子(長男のみ、長男には配偶者あり)
父と子(長男)が同時ではなく、順番に亡くなられた場合、死亡の先後で相続できる割合が変わります。子(長男)の配偶者は長男の財産を相続する権利のみ持ちます。長男にお子さんはいないものとします。

父の相続財産:600万円
子(長男)の相続財産:300万円

①父が先、子(長男)が後に亡くなられた場合
お父さまが先に亡くなられた場合、お父さまの財産は配偶者であるお母さまが1/2300万円)、子である長男が1/2300万円)取得することになります。次いで長男が亡くなられた場合には、長男の財産(父の相続財産分と自身の財産分を足して計600万円)は、長男の配偶者が2/3400万円)、お母さまが1/3200万円)取得することになります。つまり、父と長男が順に亡くなられた場合、お母さまが500万円、長男の配偶者が400万円を相続することになります。

図2:父が先、子が後に亡くなられた場合の相続人と相続割合

②子が先、父が後に亡くなられた場合
子である長男が先に亡くなられた場合、長男の財産は長男の配偶者が2/3200万円)、ご両親が1/650万円)ずつ取得することになります。次いで、お父さまが亡くなられた場合には、お父さまの財産のすべてをお母さまが取得します(650万円)。長男の配偶者には、お父さまの相続財産を相続する権利はありません。よって、結果としてお母さまが700万円、長男の配偶者が200万円を相続することになります。

図3:子が先、父が後に亡くなられた場合の相続人と相続分

※法定相続分について詳しくはこちらをご覧ください。(当サイト内)
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2.相続における同時死亡の具体例

ご家族が複数亡くなられた場合で、同時死亡と推定された場合の法定相続人と相続する割合はどうなるのでしょうか。同時死亡と推定された方の間では、お互いに相続人にはなりません。具体例とともに確認していきましょう。

2-1.父子が同時死亡(孫がいないとき)

1章の事例で、お父さまと子(長男)のどちらが先に亡くなられたかが不明の場合は、同時死亡と推定され、父子の間では相続が発生しないと考えます。お父さまが亡くなられた時の相続人はお母さまのみとなり、お父さまの財産のすべてを相続します(600万円)。長男が亡くなられた時の相続人は、お母さまと長男の配偶者となり、長男の相続財産は、お母さまが1/3100万円)、長男の配偶者が2/3200万円)相続することになります。

図4:父子が同時死亡して孫がいないときの相続人と相続する割合

 

2-2.父子が同時死亡して孫がいるときは代襲相続する

父と子(長男)が同時死亡し、長男にお子さん(孫)がいる場合は、長男が相続するはずであったお父さまの財産を代わりに相続します(代襲相続)

お父さまが亡くなられたときの相続人は、お母さまと長男のお子さん(孫)となり、お父さまの相続財産をお母さまが1/2300万円)、長男のお子さん(孫)が1/2300万円)相続します。長男が亡くなられたときの相続人は、長男の配偶者と長男のお子さん(孫)となり、長男の相続財産を長男の配偶者が1/2150万円)、長男のお子さん(孫)が1/2150万円)相続します。

図5:父子が同時死亡して孫がいるときは代襲相続する

※代襲相続について詳しくはこちらをご覧ください。(当サイト内)
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2-3.夫婦が同時死亡(子がいるとき)

夫婦が同時死亡した場合は、夫婦間で相続は発生しません。お子さんがいる場合、法定相続人はお子さんだけとなり、お子さんがすべての財産を引き継ぐことになります。

夫の財産300万円、妻の財産500万円のとき、お子さんは800万円をすべて相続します。

図6:夫婦が同時死亡して子がいるとき子がすべて相続する

2-4.夫婦が同時死亡(子がいないとき)

夫婦が同時死亡し、お子さんがいない場合、夫の相続財産は夫のご両親が、妻の相続財産は妻のご両親が引き継ぐことになります。もし、夫のご両親がすでに亡くなられている場合は、夫の相続財産は夫のご兄弟に、というように親族間で順位が移ります。

夫(長男)の財産300万円、妻(長男の配偶者)の財産500万円のとき、夫のご両親は150万円ずつ、妻のご両親は250万円ずつ相続することになります。

図7:夫婦が同時死亡して子がいないときそれぞれのご両親が相続する

3.同時死亡は死亡の先後を示す証拠がでてきたとき覆される

同時死亡は推定に過ぎないため、後にどちらが先に亡くなられたのかを示す証拠が出てくれば、その推定を覆すことができます。遺産分割をやり直すことになりますので、相続分が少ない方や、新たに相続人となる方は、多く取得していた相続人に対して、相続財産の返還を求めることができます。これを「相続回復請求」といいます。

【事例】
交通事故で夫婦が同時死亡と推定されたが、後に夫は即死で、妻は病院に搬送されている途中に亡くなられたことが分かった場合などは、同時死亡が覆され、相続する順位や相続する割合が変わることになります。

<同時死亡と推定されていた際の相続割合>夫(長男)の財産300万円は、同時死亡の妻は相続せず、夫のご両親が150万円ずつ相続します。妻(長男の配偶者)の財産500万円は、妻のご両親が250万円ずつ相続します。

<同時死亡が覆った場合>夫(長男)の財産300万円については、妻(長男の配偶者)が2/3で200万円、夫の両親が1/3を等分して50万円ずつの相続分となります。次いで亡くなられた妻の財産(200万円+500万円)について、妻のご両親は350万円ずつ相続することになります。妻のご両親は、夫のご両親に、各々不足分の100万円を請求する(相続回復請求)ことができます。

図8:同時死亡は死亡の先後を示す証拠がでてきたとき覆される

 

4.まとめ

不慮の事故で複数名のご家族を亡くした場合、亡くなられた順番が明らかなとき、その順番に従って相続します。亡くなられた先後により相続の順位や、相続できる割合が決まってくるので、非常に重要となります。

どちらが先に亡くなられたか分からない場合、同時死亡と推定し相続手続きを進めることになります。亡くなられた方同士に相続権は発生せず、相続財産はほかの相続人に引き継がれるというルールはご理解ください。

同時死亡と推定された後に、死亡の先後が分かった場合には、同時死亡は覆され、遺産相続をやり直すことになります。相続割合に応じて、同時死亡の際の相続分が少ない方や、新たに相続人となられた方は、多く取得していた相続人に対して、相続財産の返還を求める「相続回復請求」をすることができます。

同時死亡と推定するかどうかは相続に大きな影響を及ぼします。もし、分割内容に関し、お困りのことがあれば、早めに相続の専門家にご相談されることをオススメいたします。

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