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相続した土地をすぐに売却した方がよいといわれる2つの理由と注意点

父が亡くなって、実家を相続することになったけれど・・・
「すでに自分には持ち家があるし、将来相続した家に住む予定もないから売ってしまおうかな。」
「不動産は維持するだけでも費用などがかかって大変そうだな・・・」
「相続した土地はすぐ売却した方がよいって聞くけどなんでだろう?」

不動産を相続すると、「維持していくべきか、それとも売ってしまった方がよいのか」決断が難しい場合があると思います。すでにご自身がご自宅を所有されているならば、なおさら悩ましい問題なのではないでしょうか。売却するならば早い方がよいと分かっていても、税金は複雑で分からないことが多いですよね。

この記事では、相続した土地をすぐに売却した方がよいといわれる理由と、注意すべき税金について、分かりやすく解説していきます。

相続した土地をすぐに売却すべきかどうかのご判断に役立てて頂ければと思います。

1.相続した土地をすぐに売却すると得られる2つのメリット

相続した土地をすぐに売却するとよいといわれるのは、税金面で大きく2つの理由があります。

1つは、固定資産税(毎年1月1日時点で不動産を所有している方に対して課税される税金)を払わなくて済むことです。もう1つは、相続した土地を売却して利益が生じた場合、「譲渡所得税」という税金がかかりますが、この税金を軽減できる特例を利用できる可能性があるからです。聞きなれない「譲渡所得税」については2章で詳しくご説明します。

【相続した土地をすぐに売却すると得られる2つのメリット】
①固定資産税の支払いがなくなる
②譲渡所得税を軽減できる可能性がある

図1:相続した土地すぐ売却することのメリット

 

2.売却して利益が生じた場合にかかる譲渡所得税とは

譲渡所得税とは、土地や建物などの不動産を売却した際に得た利益(譲渡所得)に課税される税金です。
亡くなられた方が土地を購入した当時の金額と、相続された方が今回その土地を売却した金額(譲渡価格)を比べて、売却した金額の方が高い場合は、利益(譲渡所得)が出たことになります。

譲渡所得に対して、所得税と住民税が課税され、これらをまとめて「譲渡所得税」といいます。譲渡所得税は、売却した年の翌年に確定申告を行い、納める必要があります。

図2:購入時より高く売れると「譲渡所得税」がかかる

2-1.譲渡所得税の計算方法

まず、土地を売却して得られる「譲渡価格(収入金額)」から「取得費と譲渡費用(売却するための必要経費)」を引いて、譲渡所得を求めます。譲渡所得に、所得税の税率と住民税の税率をかけて算出した金額が「譲渡所得税」です。

取得費とは、亡くなられた方がその土地や建物を購入した当時に支払った費用のことです。土地の購入価格のほかに、購入時に支払った印紙代や仲介手数料なども含めることができます。もし、購入当時の価格が分からない、もしくは購入時の価格が、今回の売却価格(譲渡価格)の5%に満たない場合は、売却価格の5%を取得費として計上することができます。

図3:譲渡所得税の計算式

2-2.譲渡所得税の税率のカギは「不動産を所有した期間」

譲渡所得にかかる所得税と住民税の税率は、表1のように、不動産を所有していた期間によって異なります。亡くなられた方が土地を購入された日から売却する年の1月1日までの期間が、5年を超える場合(長期)は20.315%、5年以下の場合(短期)は39.63%となっています。今回、不動産を相続された方が所有した期間ではありませんので安心してください。

表1:譲渡所得税の税率 

2-3.売却時にかかるその他の税金・費用

不動産を売却する際にかかる税金は、譲渡所得税以外に、必ずかかる印紙税や、登録免許税(相続登記のため)といった税金があります。
印紙税は、不動産の売買契約に対して課税される税金です。契約金額が大きくなれば、契約書に貼る印紙も上がります。金額が10万円を超えるもので、平成26年4月1日から令和4年3月31日までの間に取引されるものには、表2のような「軽減措置」が適用されます。

表2:印紙税の軽減措置について(不動産譲渡契約書)

また、登録免許税は、不動産の所有者が変わる際の登記手続きにおいて課税される税金です。
亡くなられた方名義の土地を売却する場合は、相続された方にいったん名義変更(相続登記)をしなければ、売却することはできません。登記の原因が相続の場合の登録免許税は、「固定資産税評価額に0.4%の税率をかけた額」(100円未満は切り捨て)となります。

亡くなられた方が売却行為をすることは事実上できませんので、相続登記を行い、相続人の方が所有権を引き継いでから、買主である新所有者の方に売却し、新所有者の方が売買を理由とする登記を行う流れとなります。
売買登記に関する登録免許税は買主側の負担となりますので、相続人の方にはかかりません。

図4:相続登記の登録免許税の計算

売却する際にかかる費用は、2章で説明した譲渡所得税を計算する際の「必要経費」に該当するものもありますので、以下を参考にしてください。

図5:売却する際にかかる費用は譲渡費用に含まれる?

※不動産の相続について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)
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※相続登記について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)
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 3.譲渡所得税を軽減できる2つの特例

譲渡所得税は、特例を適用することができれば、納税額を軽減することができます。

相続税を支払った場合は「取得費加算の特例」または「空き家の3,000万円特別控除」のいずれかを、相続税を支払っていない場合には「空き家の3,000万円特別控除」という特例が利用できるか確認してみましょう。特例を適用するためには、確定申告が必要です。

3-1.相続税を支払った場合は「取得費加算の特例」または「空き家の3,000万円特別控除」

「取得費加算の特例」とは、相続税を支払った相続人の方が、相続から3年10ヶ月以内に不動産を売却する場合、取得費用として、相続人の方が支払った相続税の一部を含めて計算することができるというものです。


不動産を売却した譲渡金額(収入金額)から、取得費を多く差し引くことができるので、譲渡所得が減少し、その結果、譲渡所得税を軽減することができます。
取得費加算の特例を受けるには、以下の要件をすべて満たす必要があります。

【取得費加算の特例を適用する要件】
①相続や遺贈により財産を取得していること
②相続税が課税されていること
③相続発生から3年10ヶ月以内に売却していること

図6:取得費加算の特例を適用した場合の譲渡所得の計算式

※取得費加算の特例について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)
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3-2.相続税を支払っていない場合は「空き家の3,000万円特別控除」

「空き家の3,000万円特別控除」とは、亡くなられた方のご自宅を相続された方が、相続開始から3年を経過する日の属する年の12/31までにその不動産を売却した場合、譲渡所得から3,000万円まで控除できるという特例です。

この特例を適用できると、譲渡所得が3,000万円以下であれば税金はかかりません。譲渡所得が3,000万円を超える場合には、その超えた部分に税金がかかります。 相続税を支払っていない場合でも、以下に示す一定の要件を満たしていれば、特例を適用することができます。

また、特例の適用対象となる不動産は、昭和56年5月31日以前に建築された建物となりますが、耐震基準を満たしていない場合は、「修繕する、もしくは更地にして売却しなくてはならない」点に注意が必要です。

【空き家の3,000万円特別控除の要件】(適用期間:平成28年4/1~令和5年12/31まで)
①亡くなられた方が一人暮らしをしていたご自宅であること
②昭和56年5月31日以前に建築された家であること
③相続から売却するまで引き続き空き家であること
④売却価格(譲渡価格)が1億円以下であること
⑤相続発生から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること

図7:3,000万円の特別控除の特例を適用した場合の譲渡所得の計算式

※3,000万円の特別控除について詳しくはこちらの記事を参考にしてください。(当サイト内)
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4.特例を適用する場合の2つの注意点

相続した不動産を売却して、譲渡所得税を軽減する特例を適用したいとお考えの場合は、売買契約成立のタイミングに注意してください。不動産は思うようなタイミングで売却することができない場合もありますので、相続発生から「3年以内」を目途に、契約が成立するようにして頂くことをお勧め致します。

また、「取得費加算の特例」と、相続税を最大80%減額できる「小規模宅地等の特例」、もしくは「空き家の3,000万円特別控除」は併用できる、できないがありますので以下でご説明致します。

4-1.相続税を減額するなら「相続から10ヶ月以内は売却しない」

小規模宅地等の特例」と、「取得費加算の特例」を併用することは可能です。

小規模宅地等の特例を適用するのであれば、配偶者以外の方は「相続税の申告期限まで土地を保有していること」が要件となりますので、土地を相続してから10ヶ月以内に売却することはできません。相続してから10ヶ月経過以降、3年の間に売却することがポイントとなります。

また、小規模宅地等の特例を利用することで相続税が軽減されますが、取得費に加算される相続税も減少してしまいます。小規模宅地等の特例で相続税を大幅に減らす方がよいか、それとも小規模宅地等の特例は適用せずに、取得費に加算する額を増やした方がよいかなど、比較しながら慎重に判断する必要があります。

図8:小規模宅地等の特例を適用するなら「相続から10ヶ月間」は売却しない

4-2.取得費加算の特例と3,000万円特別控除は併用できない

「取得費加算の特例」と「空き家の3,000万円特別控除」を併用することはできません。

両方の特例が適用可能な場合は、どちらの特例を利用する方がより納税額を減額できるのか、シミュレーションをした上で選択されることをお勧め致します。
比較検討する場合には、専門的な知識が必要となりますので、相続専門の税理士にご相談されることをお勧め致します。 

※土地を売却した際に利用できる特例について詳しくはこちらの記事を参考にしてください。(当サイト内)
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5.まとめ

相続した不動産を今後、利用する予定がないのであれば、売却を検討されると思いますが、売却には多額の税金がかかる可能性があります。また、売却した時期によっては税額に影響が生じる場合があることをご理解頂けましたでしょうか。

売却により利益が生じ、譲渡所得税がかかった場合も相続税を支払っていれば、減額できる可能性があります。相続税の上に、また税金!?と思われると思いますが、売却するタイミングさえ誤らなければ、譲渡所得税を軽減する特例を利用できます。

しかし、不動産は売却したくても、こちらが望む条件で思うように売却できないことが多々あります。特例が適用できる期限が過ぎてしまった場合には、税額を軽減することができず、大損してしまう可能性があります。相続した不動産の売却を検討するならば、税額、利用できる特例の期限を把握することがポイントとなります。

相続では利用できる特例がいくつかありますが、ご自身で「何を選択すればよいのか」判断するのは難しいものです。
特例には、要件や期限が定められていますので、使えるチャンスを逃さないためにも、早めに専門家に相談されることをお勧め致します。

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