相続税申告を自分でおこなう5つの判断基準と手続きステップ!

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「相続人は私一人だから、揉めることもないし、相続税申告も頑張れば自力で出来てしまうのではないだろうか」「相続財産も多くないのに、申告書作成を税理士に頼むと報酬が高くて・・・できることなら自力で作成したい」

相続税がかかるような財産はないだろうと思っていても、いざ相続財産を細かく確認してみると、実は相続税の課税対象に該当してしまった!と慌てるケースは少なくありません。

そこでネックとなるのが、税理士に申告書作成を依頼した場合の報酬(費用)ですよね。専門家にお願いすれば、間違いなく、安心できることは分かっていても、やはり費用はあまりかけたくない・・・というのが相続人の方の本音だと思います。特に、相続財産の総額が高くなければ、何とか自力で申告する術はないものか?と悩まれていらっしゃると思います。

本記事では、ご自身で相続税の申告書を作成できるかどうかの判断の目安をお伝えし、「事前に確認すべきこと、必要な書類、申告書の作成方法」などに関し、ポイントを絞ってご説明いたします。

1.相続税の申告は自分でもできる

相続税の申告書作成は、専門的な資格は必要なく、相続財産を引き継いだ相続人ご自身でおこなって頂くことができます。しかし、相続税の計算をするには、一つ一つの財産の評価額を掲載しなければならず、正しく評価できるかがポイントとなります。

相続財産が預貯金や死亡保険金だけの場合は、評価のための複雑な計算は必要ないので、相続人ご自身が申告書を作成することは可能です。申告書の書き方などで不明点がある場合には、税務署の方に相談すると教えて頂けます。

【相続税の申告書作成は自分でできる?5つの判断基準】
 ① 相続人は自分一人
 ② 分割内容はすでに決まっていて揉めることはない
 ③ 相続財産に不動産はない(もしくは少ない)
 ④ 相納税額をゼロにできる相続税の特例が適用できる
 ⑤ 申告書作成に要する時間をじっくりとれる

図1:相続税の申告は”自分でも”できる

2.まず確認!相続税の申告が必要となる2つのケース

相続税の申告は、財産を引き継いだ方全員が必要となるわけではありませんまずは、ご自身が相続税の申告が必要であるかどうかを確認しましょう。

※相続税申告義務の有無の判断基準について詳しくはこちらをご覧ください。

2-1.相続財産の総額が基礎控除額を超えている場合

相続税の課税有無を判断する際、ポイントとなるのは、相続税のかからない基礎控除額となります。相続税がかかる(課税される)のは、相続財産の総額に対し、基礎控除額を超えた部分です。相続税の基礎控除額は「3,000万円+(相続人の数×600万円)」で求めることができます。

図2:相続税の基礎控除額の計算

図3:相続税の基礎控除額を超えた部分に相続税がかかる

図4:相続税の課税対象財産の算出方法

例えば、相続財産の総額が8,000万円、相続人が2人の場合は、

基礎控除額:3,000万円+(2人×600万円)=4,200万円
相続税課税対象額:8,000万円4,200万円3,800万円

よって、3,800万円に相続税が課税されることになります。

※相続税の基礎控除について詳しくはこちらをご覧ください。

2-2.特例の適用で相続税を減額する場合

相続税は、配偶者の税額軽減の特例(配偶者控除)や、小規模宅地等の特例を適用することで、相続税がかからなくなる(納税額が0となる)場合があります。しかし、その場合は必ず相続税の申告手続き(申告書を作成して管轄の税務署へ提出する)が必要となります。
「特例を適用すると相続税はかからない」という申告内容を税務署に伝えなければ、特例の適用が認めてもらえず、課税されるリスクがあることに注意が必要です。必ず申告期限内に相続税の申告をおこなってください。

配偶者の方は、配偶者控除の特例を適用することで、1億6,000万円、または法定相続分までの金額には相続税がかかりません。亡くなられた方がお住まいだった土地、事業されていた土地、貸していた土地について、一定の要件を満たす方がその不動産を相続したときに、評価額を最大80%減額できる特例が、小規模宅地等の特例となります。これらの特例を適用する場合には、必ず申告が必要です!

図5:配偶者の税額軽減の特例

※配偶者の税額軽減について詳しくはこちらをご覧ください。

※小規模宅地等の特例について詳しくはこちらをご覧ください。

3.相続税の申告を自分でおこなう5つのステップ

ご自身で相続税の申告手続きをおこなうと判断された場合、以下に示す5つのステップにそって、考え方を整理しながら、申告の準備を進めていきましょう。相続税の申告手続きは、相続が発生してから10ヶ月以内に申告及び納税まで完了させる期限があります。申告の手数料はかかりませんが、申告に必要な書類を揃えるには費用がかかります。

また、申告書の作成進める前に、遺言書が残されていないかどうか、念のため確認しておきましょう。公正証書遺言書であれば公証役場で、自筆証書遺言書であれば、亡くなられた方のご自宅、もしくは法務局で保管されている可能性があります。

表1:相続税申告に関する概要

申告期限 亡くなられたことを知った日の翌日から10ヶ月以内
申告書の提出先 亡くなられた方の最後の住所地を管轄する税務署
申告書の提出方法 ・税務署の窓口に直接持参
・郵送
・e-taxから電子申請
申請にかかる手数料 提出方法に関わらず無料 ※送料はかかります

図6:相続税の申告をするための5つのステップ

3-1.ステップ1:法定相続人・相続財産の全容を確認する

亡くなられた方の財産を引き継ぐ権利のある方、つまり「法定相続人」を確定します。正確に法定相続人を確認するために、亡くなられた方の出生からご逝去までの繋がったすべての戸籍(除籍)謄本を各役所から取り寄せる必要があります。(戸籍類は、相続税を申告する際の必要書類でもあります。)

配偶者の方は、必ず相続人となり、その他の法定相続人は「相続できる順位」が法律で定められています。

図7:相続順位とは「相続する権利がある方の順番のこと」

相続財産には、預貯金などのプラスの財産に加え、借金などのマイナスの財産も含まれますので、すべてを確認することが大事です。
通帳やキャッシュカード、各所から届いている郵便物などから、名義のある金融機関名などを確認します。不動産については、毎年夏ごろに所有者宛に送られてくる「固定資産税納税通知書」がお手元に残されていれば、その記載内容から不動産の情報を確認することができます。納税通知書が見当たらなければ、「登記簿謄本(法務局で取得することができます。)や売買契約書など」を探すことで所有状況を確認することができます。

図8:相続財産の確認内容と調査方法

※相続人を確定する相続順位について詳しくはこちらをご覧ください。

※相続財産を確認する方法について詳しくはこちらをご覧ください。

3-2.ステップ2:相続財産の評価額を求める

相続税を計算するためには、相続財産の評価額を求める必要があります。
亡くなられた方が残された財産の価値を財産の種類ごとに、決められた評価方法で計算します。相続財産が預金だけの場合は、亡くなられた日の口座残高がそのまま評価額となりますが、不動産の場合は、土地と建物に分け、それぞれの評価額を計算しなければなりません。

表2:主な相続財産の種類と評価方法

種類 評価の方法(ポイント)
預金 亡くなられた日の残高がそのまま評価額となる
(通帳の印字履歴、または金融機関発行の残高証明書を確認)
生命保険金 実際に支払われた金額が評価額となる(支払調書の額を確認)
不動産 「土地」と「建物」に分けて、それぞれ評価を行う
・土地の評価は「路線価」を使って計算(もしくは倍率評価)
・建物は固定資産税評価額=建物の評価額
上場株式 次の4つの株価のうち『一番低い株価』を使って評価を行う
★証券会社に『残高証明書』の発行を依頼することも可能
①亡くなった日の終値 
②亡くなった日を含むその月の全終値の平均額 
③亡くなった日を含むその月の前月の全終値の平均額 
④亡くなった日を含むその月の前々月の全終値の平均額

※相続税の評価額について詳しくはこちらをご覧ください。

3-3.ステップ3:遺産分割協議を行う

遺言書があれば、その内容に沿って相続財産を分けることになります。遺言書がない場合には、法定相続人全員で相続財産をどのように分けるかを話し合う「遺産分割協議」をおこないます。
遺産分割協議は相続人全員の合意により成立しますが、相続人の数や相続財産の内容によっては、なかなか協議がまとまらないことも考えられます。あまり日を置かず、四十九日を過ぎたころを目安に、遺産分割協議を始めましょう。

相続税は、相続する財産の額に応じ、各人の納税額が決まりますので、遺産分割協議が成立していない段階で、相続税の申告書を作成しても、後に修正申告をする必要性が生じるなど、相続手続きがますます複雑なことになってしまいます。遅くとも、申告期限の3ヶ月前くらいには、協議を成立させることを目指して手続きを進めて頂けるとよいでしょう。

※遺産分割協議について詳しくはこちらをご覧ください。

3-4.ステップ4:相続税申告書の作成・添付書類を整える

相続税の申告書は、該当する相続人の方全員に送付されてくるものではありません。相続人の方自身で、税務署へ出向き入手する、または国税庁のホームページからダウンロードをして準備します。
相続税申告書の様式は、第1表から第15表まであり、相続財産の種類や適用する控除などにより、使用する用紙が異なります。少々複雑ではありますが、決められた順番のとおりに記入することで税額が計算できるようになっています。

また、申告書の作成と同時進行で、申告書に添付する必要書類を用意します。詳しくは次の第4章をご覧ください。

参照:国税庁ホームページ「相続税の申告書等の様式一覧(令和元年分用)」

※相続税の申告書について詳しくはこちらをご覧ください。

3-5.ステップ5:申告書提出・納税

申告書の必要事項をもれなく記入し、申告書が完成したら、亡くなられた方の最後の住所地を管轄している税務署へ相続税の申告書を提出、または郵送で送ります。

★令和1年10月1日(火)から、相続税の申告書が「e-Tax」で提出できるようになり、作成がより簡単にできるようになりました。

参照:国税庁ホームページ e-Tax「利用可能手続き一覧 ”相続税申告”」
ここで、申告手続きは完了となりますが、合わせて相続税の納付を行います。納付方法は、金融機関での一括納付が一般的ですが、クレジットカード、コンビニエンスストア、税務署の窓口での納付も可能です。

※相続税の納付方法について詳しくはこちらをご覧ください。

4.相続税の申告に必要な書類

相続税の申告に必要な添付書類は、それぞれのケースで異なりますので、ご自身が必要な書類を確認して用意します。また、こちらから相続税の申告に必要な添付書類のチェックリストをダウンロードすることができますので、是非ご活用ください。

※相続税申告の必要添付書類チェックリスト

4-1.共通する必要書類

相続税の申告をする際に必ず必要となる添付書類です。相続人の方を確認するもの、亡くなられた方との関係を証明するもの、相続財産をどのように分けるのかを明確にするもの、が必須になります。

表3:<共通>必要書類

書類 備考
マイナンバー番号確認書類 相続人全員分 ※写し
相続人の身分確認書類(運転免許証など)も準備しておくとよい
亡くなられた方の除籍謄本類 法定相続人を確定するため
出生からご逝去までのつながった戸籍謄本類一式
亡くなられた方の住民票の除票 最後の住所地を確認するため
相続人全員の戸籍謄本 相続人であることを証明するため
相続人全員の印鑑証明書 遺産分割協議の際に必要
遺産分割協議書 遺言書がない場合に必要
遺言書 ※写し

 

4-2.相続財産により異なる必要書類

相続財産の内容によって異なる其々の評価額の根拠となる資料をすべて添付します。借金などの債務がある場合には、それらに関する書類を添付します。

表4:相続財産により異なる必要書類一覧

書類 主な書類
不動産以外の財産内容を証明する書類 ・金融機関の残高証明書
・通帳の写し
・証券会社の残高証明書
・保険金の支払調書
不動産の評価内容を証明する書類 ・登記簿謄本
・地積測量図や公図
・固定資産評価証明書
負債内容を証明する書類 ・借用証書
・残高が分かるもの
特例の条件を満たすことを証明する添付書類
(特例を利用する場合)
・相続する方の住民票の写し
・相続する方の戸籍の附票
・亡くなられた方の施設入所時の契約書
・引き継がれる方のご自宅の賃貸借契約書

※相続税申告に必要な添付書類について詳しくはこちらをご覧ください。

5.相続税申告を専門家に相談した方が良いケース

相続税の申告はご自身でもおこなう事はできますが、申告内容に誤りがあった場合には、「修正申告」を行わなければなりません。
すでに相続税の申告期限を経過してから修正申告をする場合は、追加分の相続税に、さらに期限を過ぎた日数分の延滞税が加算されます。特に以下にご紹介するような場合には、税理士などの専門家に相談した方が良いケースです。

5-1.相続財産に土地がある場合(特に複数)

相続税の申告では、相続財産を正確に評価することが最も重要となります。
特に土地の形状が複雑で、補正などが必要な土地の場合は、評価の仕方が複雑です。土地の評価額は、路線価を用いて概算で評価することは簡単にできますが、不整形地の土地の評価額を正確に計算する場合には、税理士にご相談された方がよいでしょう。

※相続で使用する土地の評価額について詳しくはこちらをご覧ください。

5-2.10ヶ月の期限ギリギリで申告が間に合わない場合

相続税の申告書の提出と納付は10ヶ月以内に行わなくてはなりません。
申告・納税の期限までに税金を完納しなければ、ペナルティとして延滞税が発生する可能性があります。延滞税が発生するケースは以下の3つです。

<相続税の延滞税が発生するケース>
(1) 法定納期限(相続税申告期限)までに税金を納めていない場合
(2) 期限後申告または修正申告書を提出した場合
(3) 税務調査で指摘を受けて、税金の支払いが必要となった場合

遅れた日数に応じて延滞税の支払いが発生しますので、1日も早い納税が必要となります。早急に正しい申告に修正して納税する必要があるケースは、早めに専門家へご相談される方が良いでしょう。

※相続税の延滞税について詳しくはこちらをご覧下さい。

5-3.特例や控除を適用する場合

相続税には基礎控除以外にも相続税を軽減することができる各種の特例・控除があります。
税理士からの効果的な節税に関するアドバイスを受けることで、相続税を無税にできる場合もあります。できるだけ節税したいというお考えがある場合には、相続を専門としている税理士へ早めにご相談されることをお勧めいたします。

※相続税の基礎控除と減額の特例につきまして詳しくはこちらをご覧ください。

6.まとめ

相続税の申告は、ご自身でおこなう事も可能です。法定相続人の確認、相続財産の確認、相続財産の評価額を求め、遺言書が無ければ相続人全員で遺産分割協議を行い、その後、相続税申告書を作成して、添付が必要な書類の準備を整えたら、亡くなられた方の最後の住所地を管轄する税務署へ申告書の提出と相続税の納付を行います。

相続税の申告は、納付期限を守り、正しく申告しなければ、延滞税などのペナルティが課せられてしまいます。また、特例や控除などの適用で相続税を減額することが可能な場合もありますので、ご自身がどの特例を適用できるのかを検討する必要もあります。相続財産に土地などがある場合には、路線価を用いて評価額を算出しますが、特例を適用すれば税額を大幅に減少できる可能性があります。

特例を適切に活用し、期限内に申告納税をするために、ご自身の力だけで申告手続きができるかどうか、正しい判断をする必要があります。ご不明な点は、専門家の無料相談などを活用して、早め早めに手続きを進められることをお勧めいたします。

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