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相続した不動産の売却にかかる税金と損せず売却するための3つの特例

子供のころの夏休みの思い出。卒業アルバム。
実家には、楽しい思い出がたくさん詰まっていますよね。

そんな思い出の詰まった実家も、親が老人ホームに入居したり、相続で住む人が誰もいなくなったら、手放す決断をせざるを得なくなる場合も出てきます。

実際に、古くなった空き家が問題になっているケースもあり、空き家のまま放置していると、衛生面や防犯面で近隣の方に迷惑をかけることになります。

ここでは、実家を売却する場合にかかってくる税金と、節税につながる特例などをご紹介していきたいと思います。

1.相続した不動産を売却するまでにかかる3つの税金とそのタイミング

相続も不動産の売却も、人生でそんなに何度も経験するものではありません。まずは、相続した不動産を売却するときにかかってくる税金には、いつごろ、どのような税金がかかってくるのか確認してみましょう。

1-1.売却する前の準備として名義変更をする際にかかる「登録免許税」

相続した不動産を売却するためにもっとも大切なことは、「不動産の名義が、亡くなった人のままではその不動産は売却ができない」ということです。まずは、その不動産を誰が相続するのかを決めて、「相続登記」をすることが必要です。この「相続登記」とは、亡くなった人の名義から相続した人の名義に変更することをいいます。その時にかかってくるのが、「登録免許税」という税金です。

1-1-1.不動産の相続登記の方法

相続登記は、法務局で行います。ご自身で行うことも可能ですが、相続登記の手続きには、亡くなった人の出生から死亡までの戸籍などの必要書類を揃える必要があり、それだけでも不慣れな方が行うとかなり手間がかかります。自分ではじめても途中で断念される方も多いですので、登記の専門家である司法書士に依頼するといいでしょう。

そうすると、相続登記で必要な費用は、「登録免許税」と「司法書士の手数料」の2つになります。

※相続時の名義変更について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)

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1-1-2.相続登記の税金「登録免許税」の計算方法

相続で不動産を取得した場合の登録免許税は、下記の計算方法で計算できます。

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(例)固定資産税評価額が2,000万円の場合、8万円になります。

また、固定資産税評価額の調べ方には2つあります。
(1)毎年、市区町村から送られてくる固定資産税の納税通知書を確認
(2)市役所で「固定資産税評価証明書」を取得

1-1-3.相続登記の委託費用「司法書士の手数料」

不動産の登記を司法書士の方にお願いする場合は、手数料として証明書等の取得や交通費等の実費も含めて、5万円~10万円程度が一般的です。

1-2.相続をする方にかかる「相続税」

財産の所有者が亡くなると、その方の財産を相続や遺贈(遺言によって相続)によって誰かが取得することになります。この取得した人にかかってくる税金が「相続税」です。そして、相続税の申告は、相続の発生の日の翌日から10カ月以内に行うことになっています。また、あわせて相続税がかかる場合には、相続税の申告期限までに、相続税を納税することが原則となります。

1-2-1.「相続税」の申告と納税の必要・不要の判断基準

相続税は、相続や遺贈によって財産を取得した人すべてにかかってくるわけではありません。相続税には「基礎控除額」という非課税の枠があり、これをベースに申告と納税の必要性を判断していきます。相続財産の対象となる財産は、不動産の以外にも現預金や有価証券、自動車や保険の権利などがあります。またそこから亡くなった方の債務や葬儀費用を差し引いたものを「相続財産」として考えます。

次の式での計算結果に応じて0以下であれば相続税の申告も納税も不要です。
0より大きい場合には申告が必要となり、相続税の納税については相続される方に応じて、特例などを適用し判断をしていきます。その結果、納税が必要でしたら納税をすることになります。

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1-2-2.「相続税」の税率について

相続税は、財産額に応じて税率が高くなりますが、相続税の特例を使って減額できる場合もありますので、一概にいくらになるということはいえません。特例を利用しない場合には、次の税率表で計算してすぐに相続税が決まります。

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1-3.不動産を売却した年の翌年の確定申告でかかる「譲渡所得税・住民税」

相続した不動産を売却するためには「名義変更」「相続税の申告・納税」が必要であり、それが終わると売却ができます。そこで不動産を売却して利益が出た場合、その利益が譲渡所得となり「譲渡所得税・住民税」の支払いが必要となります。これについては、売却の年の翌年2月16日から3月15日までの間に、確定申告をして納税する必要があります。

1-3-1.「譲渡所得税・住民税」の考え方

譲渡所得税・住民税は、「不動産は売却によって値上がり益が得られる」ことに着目して課税されている税金です。

譲渡所得(不動産売買の利益)の計算は、下記のようになります。

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1-3-2.必要経費の考え方(取得費)

取得費は、資産の購入代金や購入時の仲介手数料、登記費用などの合計額です。建物の場合には、購入代金などの合計額から一定の方法で計算した「償却費相当額」を控除(取得費から差し引く)して計算します。

<先祖代々の土地で購入費が分からない場合>

先祖代々の不動産を売却する場合、いくらで購入したか分からないケースが多くなります。
そうなると取得費が分からなため、その場合には譲渡価額(収入金額)の5%を取得費の金額として計算
することができます。

1-3-3.必要経費の考え方(譲渡費用)

算式の必要経費のうち、譲渡費用とは、売却の際の仲介手数料、測量費など、売却のために支払った費用の合計額となります。

1-3-4.「譲渡所得税・住民税」の計算方法と2つの税率

譲渡所得にかかる税金の計算は、下記のようになります。

売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超える不動産を売却した場合の譲渡所得は「長期譲渡所得」といい、5年以下の場合は「短期譲渡所得」といいます。税率は、下記のようになります。

・長期譲渡所得の場合・・・20.315%(所得税15.315%、住民税5%)
・短期譲渡所得の場合・・・39.63% (所得税30.63%、住民税9%)

<所有期間5年の考え方>

売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えるとは、具体的には、平成28年中の売却である場合、購入が平成22年12月31日以前であれば、「長期譲渡所得」に該当します。

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1-3-5.「相続財産の取得日」は亡くなった方が実際に購入した日

相続で取得した不動産の場合、相続した日がその不動産の取得の日ではなく、亡くなった人が実際に購入した日をそのまま取得日として引き継ぎます。ですから、ほとんどの場合、売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超え、税率の低い「長期譲渡所得」に該当することになると思われます。

1-3-6.譲渡所得税・住民税の計算例

(例)
亡くなった父が30年前に購入した不動産の譲渡価額が5,000万円
取得費は不明、譲渡費用(仲介手数料や測量費など)が200万円の場合

譲渡所得=譲渡価額 5,000万円-(取得費 5,000万円×5%+譲渡費用 200万円)=4,550万円
税額=4,550万円×20.315%≒924万円

計算例を見ていただくと分かるように、相続した不動産を売却する場合、いくらで購入した不動産か分からないことが多く、取得費を譲渡価額(収入金額)の5%で計算することになり、結果的に税額が高くなりがちです。

1-3-7. 譲渡所得税・住民税の申告は税理士に相談するのがオススメ

相続税の申告だけではなく、譲渡所得税・住民税の申告も税理士の専門分野になります。専門家である税理士に依頼すれば、自分で申告するより数十万円、場合によっては数百万円の税額を低く抑えられる場合も出てくる可能性があります。自分で確定申告を毎年しているなど申請に慣れている方も、かかってくる税額が大きくなるので、税理士に依頼して間違いのない申告をすることをオススメします。
また、自分でおこなった際に、もし間違っていると税務署からのペナルティがあり、高い率のお金を納税することになりかねません。

不動産の譲渡所得の税理士報酬は、売却価額が大きいほど高くなります。少なくても10万円~30万円、場合によっては、それ以上になります。税理士に申告を依頼する前に、必ず見積りをとるようにしましょう。

※相続税のペナルティについて詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)

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※税理士の選び方について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)

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2.相続した不動産を売却するときに知っておくべき3つの特例

相続した不動産を売却した場合には、いろいろな税金がかかってきますが、特に「譲渡所得税・住民税」は、思っていたよりも税額が高くなることが多いです。ここでは、相続した不動産を売却したときに使える譲渡の特例を3つご紹介します。特例を活用して最大限に「譲渡所得税・住民税」の支払いを抑えましょう。

2-1.相続税を払ったら、相続後3年10カ月以内の売却で特例がある

譲渡所得税・住民税は、相続税を払っているからといって、免除されるものではありません。しかし、支払った相続税額のうち、一定の金額を取得費として、譲渡所得の計算で必要経費に加算することができるという譲渡の特例があります。その特例を「取得費加算の特例」といいます。

2-1-1.「取得費加算の特例」は3年10ヶ月以内

取得費加算の特例は、相続により取得した土地、建物などを、相続発生の日の翌日から3年10カ月までの間に売却した場合に適用があります。不動産を相続して、相続税も支払っている場合には、売却のタイミングとして、相続発生の日の翌日から3年10カ月がひとつの目安となります。

取得費に加算できる相続税額の計算方法は、下記のようになります。

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2-2.住んでいる不動産の売却には特例がある

居住用不動産いわゆるマイホームを売却したときに売却利益が出た場合、譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができるという譲渡の特例があります。この特例を「居住用不動産の3,000万円特別控除」といいます。この特例の適用があれば、譲渡所得が3,000万円までは、税金がかかってこないということになります。

2-2-1.「居住用不動産の3,000万円特別控除」を利用するための期間条件

譲渡所得が3,000万円を超える場合には、その超えた部分から税金がかかってくるので、長期譲渡所得の場合、3,000万円×20.315%=約600万円、税額が軽減されることになります。この特例は、相続で取得した不動産に限っての特例ではありませんが、特別控除額が3,000万円と、とても大きいのが特徴です。この特例は、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の年末までに売却した場合に適用があります。

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ただし、家屋を取り壊した場合には、上記の範囲内で、家屋を取り壊してから1年以内にその敷地の売却に関する契約が締結され、かつ、取り壊し後、その敷地を貸駐車場などその他の用に供していないことが要件です。

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2-2-2.「居住用不動産の3,000万円特別控除」を利用するための適用条件

居住用不動産の3,000万円特別控除の特例は、原則として、家屋の所有者が自己の居住用としている家屋とその敷地の売却をした場合に適用できる特例です。実家で同居していた場合には、その居住用不動産を相続して、自分の名義に変更すれば、3,000万円控除は適用可能です。

しかし、親と同居しておらず、親が住んでいた実家を相続して売却する場合には、相続した人はその家屋に居住していないので、3,000万円の控除の適用はありません。だからといって相続直後に、この特例の適用を受けることだけを目的として入居した場合や、売却までの一時的な目的で居住した場合などについても、3,000万円の控除は適用できません。

2-2-3.「居住用不動産の3,000万円特別控除」の活用

仮に、父名義の実家に父と母が住んでいて、父が先に他界した場合、残された母が一人暮らしになります。その後、母も老人ホームなどに入居してしまうと、空き家になってしまいます。このような場合は、母が実家を相続して、老人ホームに入る時には思い切って実家を処分し、そのときに居住用不動産の3,000万円の特別控除を使って母の譲渡税額を抑え、老後の資金にするという方法が考えられます。

2-3.相続後の空き家の売却には特例がある

居住用不動産の3,000万円の特別控除は、相続後、空き家となった不動産には適用がなかったので、売却しても多くの税金がかかってきてしまい、実家を手放すことにメリットを感じない方も多くいました。そうしたなかで、相続により、その後適切な管理がされず、放置されている空き家が増加しているという、いわゆる「空き家問題」がでてきました。

2-3-1.「相続空き家の3,000万円特別控除」が新たにスタート

そこで新たに、平成28年4月1日から、相続した空き家を売却した場合にも、一定の条件を満たすと、3,000万円の特別控除が適用されるようになりました。この特例を「相続空き家の3,000万円特別控除」といいます。

この特例の要件は、下記の通りになります。
・相続開始直前において被相続人が一人で居住していたものであること
・売却する家屋はマンション等の区分所有建物ではないこと
・売却する家屋は昭和56年5月31日以前に建築されたものであること
・相続の時から売却の時まで、事業、貸付、居住の用に供されていないこと
・譲渡価額が1億円以下(共有の場合には、合計が1億円以下)であること
・相続開始の日から3年を経過する日の年末までに譲渡すること
・家屋を取り壊して売却すること
・家屋を取り壊さず売却するときは、その家屋が新耐震基準に適合すること

2-3-2.特例を受けるための建築日の確認方法

実家が昭和56年5月31日以前に建築されたものであるかどうかは、全部事項証明書いわゆる謄本を確認すれば分かります。昭和56年5月31日以前の建築であっても、マンションの場合は適用がありません。この用件だけでも、対象となる不動産はかなり絞られてきます。

2-3-3.空き家の売却の注意点

この特例を適用した場合には、取得費加算の特例は併用して適用できません。どちらか有利な方を選択して申告をすることになります。

この特例以外にも、特定の空き家については、固定資産税の住宅用地の軽減を適用しないという措置があり、危険な空き家を放置しておくと、固定資産税が6倍にも跳ね上がります。

その他、空き家の解体やリフォームに、国や自治体から補助金が出る場合もあります。
これらの対策が近年出てきているということは、「空き家問題」の深刻さがうかがえます。
売却の際には、最新の特例を確認して有利なものを活用しましょう。

3.節税のポイントまとめ

上記の3つの特例を、ポイントを絞って一覧にしてみました。

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これらの3つの特例は、あくまでも「譲渡所得税・住民税」にかかわる特例です。相続税もかかってくる場合には、相続と譲渡をトータルで見て、税金が一番安くなるように考えるべきです。

税理士に依頼するときには、相続税のことについてはもちろんのこと、相続後の譲渡についても相談できるかどうか、確認するようにしましょう。

4.最後に

相続した不動産を売却する場合、予想以上に税金がかかってくると思われた方が多いのではないでしょうか。

節税のための譲渡の特例も、要件が複雑であったり、相続税が絡んできたりと、ご自身で申告をするのはなかなか難しいのではないかと思われます。さらには、ミスがあるとペナルティを課せられてしまうリスクもあります。

また、不動産の売却は、不動産仲介業者に依頼しますが、彼らは税金のプロではありません。
不動産を売却しても、税金が多くて手許に現金があまり残らなかったということのないように、税金のプロである税理士にも相談するようにしましょう。

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