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相続についての口約束は有効?口約束を実現するため2つの方法と条件

離れて暮らす年老いたご両親のことが心配で、頻繁に実家に戻り、できる限りのサポートをしていたら、ご両親から「大変なのにいつも世話をしに来てくれてありがとう。自分たちに万が一のことがあったら、この家と土地をもらってほしい」という話をもらった。

このように、口頭で将来の相続についての話をされた場合「口約束」となります。今、まさにご両親からは口約束で財産を譲ってもらえると話をもらったが、実際に相続が発生した場合そのことを知らない弟夫婦とうまく話を進められるか心配だと思っていらっしゃると思います。

本記事では、口約束は法的に弱い部分がありますので、「口約束を確実な約束」にするための方法をご紹介します。

1.相続に関する口約束は、必ず法的な効力を持たせておく

生前に相続の話を進めておくことはとても大切なことですが、相続の話が口頭だけであった場合にはあくまで口約束であり、遺言とは言い難く、実際には口約束の内容を主張しても実現することが難しくなります。生前の話し合いが相続人全員でおこなわれていて皆が納得していれば良いのですが、そのようなケースはまれですので、誰もが納得できるように法的な効力を持たせておくことが大切です。

図1:書面にしなかったことを後悔するイメージ
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1-1.口約束は「財産を託したいという意思表示」

口約束と言っても実際にご両親が亡くなられた際に、「ご両親が口にしていないことを口約束した」と主張するようなあくどい話は無いとしても、実際にご自身が逆の立場だった場合を考えましょう。もし次男から「お父さんが自宅はすべて次男に譲る、と言っていたから僕がもらうね」と言われたら、その事実を聞いていないご自身としては納得できないと思います。
口約束は「財産を託したいという意思表示」になりますので、実現することが大切であることから、正しい手続きをしておきましょう。

1-2.財産を譲る方の意思は尊重することが大切

相続においては財産を譲る方の意思を尊重することが大切です。つまり、口約束であってもそれが事実であれば実現することが大切なことです。ただし、亡くなられたあとに口約束の話がでても、誰も証明できなければ、亡くなられた方の意思であったかどうか、確認できないことが課題となります。

1-3.相続が開始すると法定相続人の権利が優先

相続が開始すると、相続する権利のある人、つまり法定相続人が財産を引き継ぐ権利を持ちます。この法定相続人の権利は法律で守られることになります。よって、ただの口約束の状態では、相続人の権利に対抗することはできません。しかし、口約束の内容を公に立証できる証拠があれば、話は変わってきます。

1-4.お世話をしている第三者なら確実に法的手続きが必要

内縁の妻や、介護をしていた長男の嫁、親しい友人の方などが口約束をしている場合には、相続時には全く相続権を持たないため、特に注意が必要です。何もしてこなかった相続人であっても法的には、相続の時には相続人が相続する権利を持ちますので、法的にご自身への相続の意思を示してもらいましょう。

2.相続に関する口約束を実現するための生前に準備する2つの方法

口約束を実現するためには、やはり「相続が発生する前」に対処しておくことが最善となります。亡くなられた後に口約束を実現することは難しいため、お元気なうちにしっかりとした対策が必要となります。「遺言書の作成」または「死因贈与の契約」のいずれか対応しておきましょう。

図2:口約束を確実な約束へする方法のイメージ
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2-1.生前に遺言書の作成がおススメ

実際に相続が発生すると、法定相続人の相続する権利が守られますが、遺言書がある場合には亡くなられた方の意思を尊重するため、遺言書の内容が優先されます。ただし、遺言書には書き方のルールなどいろいろな取り決めがあります。口約束はこれら遺言が有効と認められる項目を満たさないため、遺言の代わりにならない点に注意しましょう。

口約束だけを証拠と言い張るのは、認められるどころか相続人同士の大きなトラブルに発展しかねません。できることなら遺言書として残して頂くことが望ましいでしょう。もちろん遺言書では法定相続人以外の第三者へ財産を譲ることも指定でき、相続人の同意は必要ありません。

※「遺言」について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)

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※「遺贈」について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)

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3:遺言に残してもらう
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2-2.生前に死因贈与契約を取り交わしておく

死因贈与契約とは、生前に財産を譲る方(贈与者)と財産をもらう方(受贈者)の双方の同意で成立する贈与契約のことです。契約なので、極端にいえば、書面の取り交わしがなくても双方の同意さえあれば成立しますが、書面を取り交わしておくことが大切です。
理由は、贈与者が亡くなられ、相続が発生した場合には、他の相続人に対し、死因贈与契約を立証する必要があるため、契約書がない場合に認められることは非常に難しく、もめる原因ともなるためです。

3.遺言と死因贈与のメリットとデメリット

遺言と死因贈与契約は、財産を譲る方が亡くなられたことによって効力を発揮し、財産を引き継ぐ点は似ていますが制度としては大きく異なります。表1の制度の違いと、それぞれのメリット・デメリットを確認して、どちらを活用するかご両親と相談しましょう。

表1:遺言と死因贈与契約の違い
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※1:条件を付ける代わりに財産を譲るという「負担付死因贈与契約」をした場合には、既に負担や義務を履行していた場合、撤回ができないので注意
※2:双方同意のもと成立した契約のため「相続放棄」ができない
※3:引継ぐ財産に不動産が含まれる場合、贈与契約のため不動産取得税が課税される

3-1.メリットの比較

遺言書のメリットは、相続において最優先として扱われるのが遺言書であるため、遺産分割協議など相続人での話し合いが不要となり、遺言書どおりに相続手続きを進めていけばよいものとなります。遺言書の作成方法のうち、公正証書遺言であれば証人の立会いのもとで作成されるため作成方法に不備が無い状態で公証役場に保管されます。遺言は撤回もでき、また、放棄することも可能です。

死因贈与契約の最大のメリットは、贈与契約でありながら、贈与税よりも税率の低い相続税が課税されることです。予め、どんな財産を引き継ぐのか把握もでき、不動産の場合は仮登記まですることが可能です。

表2:遺言書と死因贈与契約のメリット比較

3-2.デメリットの比較

自筆証書遺言の場合、不備があれば遺言書が無効になってしまいます。また、分割内容が遺留分を侵害するような場合は遺留分減殺請求される恐れがあります。

死因贈与契約で法定相続人ではない方が不動産を引き継ぐ場合、通常の贈与と同じ扱いで、不動産取得税が課税されます。さらに登記税率も贈与扱いで高くなります。「介護をしてくれたら」などの条件をつけて死因贈与契約を成立させた場合に、すでに負担や義務を履行していた場合には撤回することができません。

4.相続発生後に口約束を実現する2つの条件

万が一、遺言書も死因贈与契約書も整えることができないうちに相続を迎えてしまった場合には、少なくとも以下の2つの条件を満たさなければ、口約束の実現は不可能といえるでしょう。もし条件が整ったとしても確固たる書面の証拠がない限り、相続人の誰かが納得できないなど、承諾しない場合に実現が難しくなってしまいます。非常に厳しい状況となります。

なお、以下の二つの条件を満たし、確固たる証拠があった場合でも、自宅の名義変更をはじめとした相続の手続きを具体的に進めるためには「遺産分割協議書」の作成が必要です。この遺産分割協議書には、相続人全員の署名と実印の押印を頂かなければなりませんので、偏った口約束である場合には実現するにはかなりハードルが高いと言えるでしょう。

①相続人全員が口約束の内容を承諾する
②財産をもらう方(受贈者)以外の第三者の証人がいる

※遺産分割協議について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)

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5.さいごに

遺言書は「亡くなられた方のご意志として最優先されるべきもの」と見なされるため、遺言書の内容とおりの分割であれば、分割協議をする必要はなく、スムーズに財産を引き継ぐことが可能です。
また、死因贈与契約も生前に贈与契約自体は成立しているため、契約書が作成されていれば、相続発生と同時にスムーズに履行されることになるでしょう。

ポイントは口約束を口約束のままにしておかず、確実な約束にするために上記2つのいずれかの対応をしておくことが最も有効といえます。

ただし、どちらも生前の対策が必要となりますので、万が一の場合に備えて早めに対応をしておきましょう。

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