SO0233
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

相続争いは意外に多い!争いに発展する7つの要因とその対処法

「相続になって、兄弟のどちらが実家を引き継ぐかで揉めたらしいわ。最終的に、実家は二束三文で売却することになってしまい、大損して、それからというもの兄弟が絶縁関係になってしまったらしいわよ・・・。」

「とても仲の良さそうなご家族だったけれど、相続で前妻のお子さんが相続権を主張してきて揉めてしまい、遺産を分けるのが本当に大変だったらしいわ・・・。」

ご近所の方や友人の話で「相続で揉めて大変だった」という話を聞くと、ドキッとして「我が家は大丈夫だろうか・・・」と不安な気持ちになってきますよね。相続で、大切な家族や親族が争うことなどないように、何か事前にできる対処法があればしておきたいとお考えではないでしょうか。

本記事では、相続争いになってしまう要因を具体的にご紹介し、相続争いを未然に防ぐ対処法をご説明したいと思います。

相続争いは、身内であるという思いから、お互いの思いを主張し、つい感情的になってしまう面があり、一度争いに発展してしまうと収拾するのは非常に困難です。相続争いの要因を知り、事前に争いを回避できるよう、本記事を参考にしていただければ幸いです。

1.相続争いは実は遺産が少ない方が起こりやすい

相続争いは、相続税がたくさんかかるような富裕層と言われる方々の問題だと思われている傾向が強いのですが、実際のところは、相続税を申告するような財産状況でなくても揉めているケースは非常に多いのです。

裁判所の統計からみても、遺産額が5,000万円以下で相続争いに発展しているケースが7割を占めています。ごく普通のご家庭で、揉めるような財産はないと思っていても、実はそんなことはなく、相続争いは遺産の多い少ないに関わらず、誰にでも身近に起こり得ることなのです。

図1:相続争いは「遺産の多い少ないに関わらず起こるもの」

2.相続争いに発展する7つの要因

相続争いは、仲がよい家族、親族という関係性だからこそ、つい本音でぶつかってしまい、それが発端となって芋づる式に揉めてしまうといった背景があるように思います。お互いの主張をストレートにぶつけてしまい、想像以上の争いごととなって収拾がつかなくなってしまいます。相続争いが起きてしまう主な要因を7つご説明いたします。

2-1.遺言書がない

「我が家は遺言書を残すほどの財産はないし、子どもたちは仲がよいから大丈夫」とおっしゃられる方が多いのですが、実際に相続が発生すると「だれが何を相続するか」を事細かに話し合う必要があり、限られた時間の中で、煩雑な相続手続きを進めていくと、ちょっとしたすれ違いで揉め始め、収集がつかなくなってしまうケースがあります。

遺言書があれば、遺言書の内容にそって手続きを進めていくことができますが、遺言書がなければ、遺産分割協議書などを作成して、相続人全員が同意した上で、全員の署名、全員の実印がそろわなければ、相続手続きを進めることはできません。

図2:遺言書がないと・・・

2-2.親の介護をしていた

介護をしていた方は、その見返りとして、他の相続人より多く財産を引き継ぎたい!と考えていることが多く、故人からも「世話になったぁら、財産を多く引き継いでほしい」と口頭で伝えられているケースが多々あります。こういった場合、介護をしていない相続人の方から、介護の労力を軽視するような発言があったり、また、親の介護は当たり前のことなので考慮するのはおかしい、などの意見が生じると、認識のズレが大きく、争いの溝は深まっていきます。

3:親の介護

2-3.生前に財産をもらっている

特定の相続人の方だけが、生前贈与を受けていた場合、財産をもらっていない相続人の方は、相続発生時点ですでに不平等だと思っているケースが多く、生前贈与された分を加味して、相続財産を分割したいと主張します。

一方、生前贈与を受けた相続人は、「それなりの理由があって、すでにもらったものだから、相続とは関係ない」と考えています。この場合、双方で意見が異なり、相続争いに発展する可能性が高まります。

2-4.不動産など分割が難しい財産がある

現預金は、きっちり平等に分けることが比較的簡単にできますが、不動産、有価証券などは、平等に分けることが難しい財産です。

特に、相続財産の大半が不動産だった場合は、不動産の分け方について、争いの要因になる可能性が高いといえます。同居していた場合などは、なおさら揉める可能性が高くなります。

不動産を売却してきっちり分割をしたい相続人と、実家には思い入れがあるため売りたくない相続人がいた場合、分割協議をしても合意に至らず、そのまま相続争いに発展することは珍しいことではありません。

また、平等に分割することが決まっても、不動産の価値(評価方法)を決めるには、いくつかの考え方があり、例えば、相続税の評価額(路線価評価)とするか、実勢価格(時価)による金額とするかで、意見の食い違いが生じてしまう可能性があります。

なお、不動産の分け方は以下の4通りありますので参考にしていただければと思います。

①相続人の1人が単独で不動産を相続する方法
②不動産を引き継いだ相続人が、他の相続人にその対価分として金銭を支払う(代償する)方法
③不動産を売却して現金で分割する方法(換価分割)
④不動産を共有名義で相続する方法

不動産を共有名義で相続してしまうと、時間が経過するにつれて、共有者が増えていく可能性があり、権利関係がどんどん複雑化してしまうのでお勧めはできません。

図4:相続財産に不動産がある

 

2-5.偏った内容の遺言書がある

「すべての財産を長男に相続させる」というような偏った内容の遺言書は、他の相続人にとって不公平な内容となるため、争いの要因となります。相続人には、最低限の相続できる割合「遺留分」という権利が法律で守られています。遺留分への配慮がない遺言書は、遺留分を主張された際には、遺留分の方が優先されることになっています。

図5:偏った内容の遺言書

2-6.相続人の家族が口をだす

相続争いで実はよくある原因の一つです。仲のよい兄弟であっても、それぞれ家庭を持ち、抱えている事情が異なります。マイホームがほしい、子どもの受験を控えているなど・・・。

相続人同士はある程度納得していても、相続人の配偶者などから「もらえる権利はきちんと主張すべき」などの意見(助言)が出ると、話し合いがこじれてまとまらず、争いに発展してしまう場合があります。

図6:相続人の配偶者が意見をしている・・・

2-7.亡くなられた方のお金を管理していた相続人がいる

亡くなられた方の口座を管理していた方や、一緒に住んでいた方がいらっしゃると、亡くなられた方の預金口座の履歴に使途不明金があった場合、「預金を勝手に使っていたのでは?」と疑念を持たれて、その結果、争いに発展する可能性があります。

同居して日々の生活のお世話や、介護などをされていた場合には、預金の使いみちは明確に、請求書や領収書を残しておくことが大切です。

3.相続争いを未然に防ぐ方法

相続争いに発展してしまうと家族仲は悪くなり、その後の相続手続きに悪影響を及ぼします。亡くなられた方の預金を早急に引き出したくても、遺言書がない場合は、相続人全員の同意が原則、必須となるため、揉めてしまうと預金ですら、なかなか引き出すことができなくなります。

相続税の申告が必要な場合は、分割協議が整わなければ、適用できるはずの特例が使えないまま、相続税が減額されない状況で期限内申告をしなければならなくなります。

様々な不利益が生じるとともに、争いが長引いて調停や裁判で争うことになってしまうと、余計な費用までかかりますので、相続争いは極力未然に防いでおきたいものですね。

3-1.遺言書・財産目録を作成する

遺言書の作成は、相続争いを避ける最善の方法といえます。遺言書がある場合、原則、遺言書通りに速やかに財産を引き継ぐことができます。亡くなられた方の意思ですから、相続人も納得しやすいものです。

遺言書を作成する際は、遺留分に十分な配慮をしてください。遺留分の権利は法律で守られていますので、遺留分を侵害した遺言書はかえって争いの要因となり兼ねません。

また、相続財産の内容が一目で分かる財産目録を作成しておくとよいでしょう。財産目録があると、どんな手続きをすべきかが明確になっているので、相続手続きが速やかに進みます。無用の争いを避けるためにも、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産もすべて明記した財産目録を作成することが大切です。

7:遺言書を作成する

3-2.生命保険の受取人を指定する

受取人が指定されている保険金は、受取人固有の財産となり、相続で分割する対象の財産とはなりませんので、確実に受け取ってもらうことができます。

また、相続財産の大半が分割しづらい不動産である場合、生命保険契約を上手に活用することで、代償金に充てる財産を補填することなどもできますね。

図8:生命保険を活用する

3-3.コミュニケーションを図る

相続争いを避けるには、家族間で、それぞれの立場を考慮した話し合いができるような「関係性」を築いておくことが大切です。

生前にご家族が集まって、相続についての思いや相続財産について話しておくことは、とても重要なことです。縁起でもない・・・となかなか相続の話はしにくいものですが、大切なご家族が、相続後の人生も仲良く助け合って、幸せに過ごすためには、コミュニケーションをとって、認識を合わせておくことが大事です。

4.相続争いになった場合の対処法

相続争いはできるだけ避けたいものですが、人それぞれ思いや主張があるため、どうしても争いが起きてしまうことはあります。相続争いが起きてしまったら、いかに争いを長引かせないよう、早期に解決させるかがポイントとなります。

4-1.代償分割する

代償分割とは、相続人の1人が不動産などを相続し、他の相続人に対し、相続分の差額を現金などで支払うことです。ご実家など、残しておきたい財産がある場合は、代償金を支払うことで、他の相続人と公平な形で分割することができます。

4-2.相続分を譲渡する

相続分の譲渡とは、法律で定められた相続できる割合の法定相続分を他の方に譲ることです。有償譲渡(譲渡する対価として代金を支払うこと)、または無償譲渡があります。

相続争いと関わりたくないときに、相続分を譲渡することで、相続争いから離脱することができます。また、相続分の譲渡をすることで、遺産分割協議に参加する必要もなくなります。

9:相続分を譲渡する

※相続分の譲渡について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)

関連記事

4-3.遺留分を放棄する

遺留分とは、亡くなられた方の財産のうち、相続人が最低限相続できる財産の割合です。遺留分は、亡くなられた方のご兄弟(姉妹)以外の法定相続人が認められる権利です。例えば「長男に全財産を相続させる」と遺言書に書かれた場合、次男の方は遺留分を請求することができるのです。

遺言書は亡くなられた方の思いであるため、亡くなられた方の意思を尊重して、あえて遺留分を請求せず、放棄することで、相続争いを避けることもできます。遺留分の放棄に所定の手続きはなく、権利を請求しなければ、放棄したことと同じ意味となります。

4-4.専門家へ依頼する

相続人間だけで解決することが難しい場合は、相続の専門家に相談し、解決を図ることになります。争いについての専門家は弁護士であり、専門知識のアドバイスをして、解決へ導いてくれます。相続人同士では、譲りあえないことであっても、第三者が間に入ることで冷静に話しあうことができ、早期に解決の糸口が見えてくることもありますね。

10:専門家に相談する

5.まとめ

相続争いは、相続財産の多い少ないに関わらず、誰にでも起り得ることです。

相続争いが起こる際にはいくつかの要因があります。その要因をふまえて、事前に対策をとることで、相続争いを防ぐことができます。

相続争いは、家族間の仲が悪くなるだけでなく、相続手続き上も様々な不利益が生じ、何も良いことはありません。相続争いに関し、ご心配な方は、専門家に相談し、早めに対策をとっておきましょう。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

SNSで最新情報をチェック

相続税申告のご相談はこちら