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債権は相続できる!権利の消滅と時効に注意して債務者へ請求する方法

「お父さんが生前に個人事業主のお友達にお金を貸した」と言っていたけど、お父さんが亡くなったあとでも返済の請求ができるだろうか。

個人的にお金の貸し借りをしている場合や、個人事業主を営んでいて営業上の貸し借りがある場合、亡くなられたあと、相続ではどのように考えればよいのでしょうか。

このような債権債務も相続の対象となります。

本記事では回収できていない債権があった場合はどのように対応したらよいのか、相続財産としてどのように取り扱えばいいのかについてご説明します。

1.債権を相続すれば相続人が返済を請求できる

債権とは一般的に、金銭を貸した方が借りた方に対して返還を求めることを言います。また、お父さまがお友達などに個人的に貸したお金であっても、亡くなられたあとに相続人が引き続き返済を求めることができます。これは相続の際に債権の内容も相続財産に含み、遺産分割協議の中で債権の権利も分割するからです。

ただし、回収できない可能性もありますので、一人が相続して回収に注力することは得策ではありません。相続人全員で権利を保有し、返済された場合には平等に受領していきましょう。

2.相続の対象となる債権と対象とならない債権

相続の対象となる債権とならない債権がありますので、次の内容を確認しましょう。

【相続の対象となる債権】
・貸金の債権
・賃貸借関係にもとづく債権(未払い家賃など)
・売掛金債権
・損害賠償請求権(交通事故などで被害者になったなど)

【相続の対象とならない債権】
・養育費の請求権
・年金の受給権や生活保護の受給権

3.債権には時効があるため権利が消滅しないように注意する

債権には時効が定められており、時効を過ぎるとその債権は消滅してしまいます。債権者は「時効の中断」といって時効により債権が消滅することをストップさせる必要があります。
この時効の中断をおこなわずに時効期間が経過し、経過後に債務者が「時効の援用」といって時効となった旨を主張することにより時効は成立してしまいます。

債権法の改正がすでに決まっており、2020年4月1日以降は改正されたルールに基づきます。施行日前に発生した内容は、現在の債権法が適用されます。

【主な債権の消滅時効】
・商品の売掛金の債権:2年
・損害賠償請求権:3年
・商行為により生じた債権:5年
 ※クレジットカードのローン
 ※消費者金融からの借り入れ 等
・家賃:5年
・個人間の貸付(借金):10年

時効の中断がされると、それまで進行してきた時効期間がリセットされます。
たとえば、お父さまがお友達にお金を貸していて返済されずに9年経過していたとしても、その時点で時効の中断をおこなうと時効のカウントが0に戻ります。よって、その時効の中断をおこなった時点からさらに10年経過をしないと消滅時効が成立しないことになります。
1度の対応で期間を最大限に伸ばすことができますので、債権を相続したらすぐに対応しましょう。

3-1.時効の期限を延長するために相続後すぐに債務者へ請求する

債権の相続がある場合、次のような手続きをとることにより、6か月間は時効が猶予されるようにすることができます。債権を相続した後は、相続が発生して債権を相続した旨や相続人が確定した旨、さらに債権者に支払いの請求または債務内容の確認を求めるなど時効の中断に該当する内容証明郵便を送ります。これで6ヶ月間猶予されますが、このような6ヶ月の時効の延長が利用できるのは1度のみです。

その後は時効が進行していきますが、期限内に解決できないケースがほとんどであるため、このような裁判外の催告から裁判上の請求に変わるように、裁判所への手続きをします。

3-2.時効が継続して延長されるように裁判の手続きをする

3-1.のとおり裁判外の請求だけでは時効は継続しませんので、猶予された6ヶ月以内に訴訟の提起や支払督促など法的手続き(裁判上の請求)をおこします。それにより、当初の消滅時効が適用されて、時効はゼロリセットされ、時効が延長されます。

4.手続きをスムーズに進めるための債権の遺産分割方法

債権は遺産分割協議の前であっても、債権者であるお父さまが亡くなられた場合には、そのご家族が法定相続分に応じて分割された権利を相続すると定められています。実際には、遺産分割協議の中で、法定相続分どおりに相続するか、全員の合意により相続割合を変更するかなど、決めることができます。

4-1.原則は法定相続分での相続となる

原則としては、債権は各相続人の法定相続分に応じて分割され引き継がれます。
たとえば、お父さまがお友達の経営する会社に1,000万円を貸していた場合、亡くなられた時点の法定相続人がお母さま、長男、長女だった場合、債権の相続分はお母さま500万円、長男・長女はそれぞれ250万円となります。この場合には、債権を回収できない場合のリスクは平等ですが、3人で請求をするため必ずしも手続きがスムーズとは言えません。

図1:債権1,000万円を法定相続分で分割する場合

※法定相続分について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)
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4-2.一人が代表して引き継ぐと効率的に進められる

法定相続分どおりに分割するよりも、一人の相続人が債権をすべて相続した方が、債務者への請求や裁判の手続きなどで都合がよいと考えられる場合もあります。この場合は、遺産分割協議により相続人全員が合意することによって、一人が債権を相続することが可能です。

しかし、回収できないリスクもありますので、回収できなかった場合の対応方法など、相続人間であらかじめ協議をしておくことをお勧めします。

図2:遺産分割協議により債権を配偶者が全部相続した場合

回収できない場合の対応例としては、たとえば、債権が1,000万円で、お母さまが全部相続したが、債務者が400万円しか返済しなかった場合、不足分の600万円を法定相続分に応じてお母さま300万円、長男・長女150万円を負担します。長男・長女からお母さまに150万円ずつ渡すということになります。こういったことができれば、お一人が一旦相続することも良いかと思います。

図3:債権を配偶者が全部相続したが、一部回収できなかった場合

4-3.遺産分割協議で分割割合を決めることもできる

4-2.のとおり遺産分割協議で自由に相続分を決められますが、一人が引き継ぐにはリスクがあります。
一方で、相続人の中に未成年のお子さんが含まれている場合には、債権の請求を未成年が行うわけにはいきませんので、債権の相続を法定相続分で分割することをためらうこともあります。このような場合にも、相続人全員の合意があれば、成年者だけで分割するなど状況に応じて自分たちで決めることができます。

5.債権をご自分で回収したくない場合の対応方法

債権を回収する際、面識がある場合にはまだ良いかもしれませんが、面識がない場合などトラブルになりそうで不安な方もいらっしゃいます。債務者によっては請求書を送付しても全く返済する意思がない場合もあります。精神的な負担、あるいは手続きの手間や時間がかかることを考えると弁護士に依頼したほうがよいケースも多くあります。

5-1.弁護士に依頼するメリット・デメリット

弁護士に依頼すれば、必ず債権が回収できると言うわけではありません。債務者に支払い能力がなければ返済は難しいですし、少額の債権の場合は弁護士費用が債権回収の費用を上回ることも考えられます。まずは債権回収の見込みや弁護士に依頼する費用、回収できる債権の額を比較検討した判断が必要です。

【弁護士に依頼するメリット】
・適切な債権回収の方法を提案してもらえること
・当事者同士の話し合いが難しいときの早期解決
・法的な手続きを任せられること

【弁護士に依頼するデメリット】
・費用がかかること

5-2.弁護士に依頼するときの費用相場

債権の額また債権回収の方法によって変わってきますが、弁護士費用の相場としてはこちらになります。

①1時間あたりの相談料:5,000円~1万円
②着手金:1万~30万円
③成功報酬:回収額の10%~20%
④実費(内容証明郵便や調停・訴訟にかかる費用)

債権回収にともなう裁判所の手続きが発生した場合にはその実費を債務者に請求できますが、弁護士費用の請求はできません。弁護士へ依頼される場合には、実際にかかる費用や具体的な回収方法などをまずは弁護士の無料相談で確認されることをおススメします。

6.債権を回収できないケース

債権には回収できないリスクがあります。債務者が自己破産の手続き等をした場合には、そこから先は回収に向けた対応ができなくなってしまいます。債権を回収できない3つのケースをご紹介します。

6-1.相続人が相続放棄をする

債務者ではなく、相続人の一人が相続放棄をした場合には、債権も相続財産であるため相続放棄をした方は
債権の回収ができません。もちろん、相続人全員が相続放棄をすれば、誰もが債権を回収する手続きが取れなくなります。これは、亡くなられたお父さまの財産が、債権よりも借金等の債務の方が多い場合等に考えられます。

※相続放棄について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)
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図4:長男が相続放棄した場合の債権の割合

6-2.債務者が亡くなり相続放棄がされた

債務者へ債権の返済を求めても長期化することが考えられます。全ての返済が終わる前に債務者が亡くなられてしまうこともあり、その債務の額が大きいと相続人が相続放棄をする場合があります。このように、債務者の相続人が相続放棄をしてしまうと、債権の回収はできなくなってしまいます。

6-3.債務者が亡くなり相続人がいない

6-2.と類似の内容ですが、債務者が亡くなられて相続人が誰もいない場合には、債権の請求先が亡くなるため、債権の回収ができなくなってしまいます。

7.まとめ

債権を相続したら、まずは時効を中断するために債務者へ必ず請求をしましょう。一旦、6ヶ月の延長をしてその間に法的な手続きなどを進めていきます。

債権には時効があり、その時効に向けたカウントダウンはすでに始まっています。時効をリセットするまたは延長する、のいずれかの対応をしなければ、債権は消えてしまいます。

本来であれば、亡くなられたお父さまに生前に回収してほしいものではありますが、債権も大切な相続財産であることから、手順に沿って債務者へ連絡をしましょう。

もし、不安な場合には、相続に強い弁護士に相談されることをおススメします。

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