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相続する田舎の土地はいらない!問題を次世代に残さないための考え方

「地方で一人暮らしをしていた父が亡くなった。父が住んでいた実家を相続しても、将来的に住む予定はない。このままずっと空き家の土地を放置しておくのは、ご近所にも迷惑だし、良くないだろう。しかし、すぐに処分できるかどうかも分からないし、いったいどうすればよいのだろうか?」

ご実家を相続しても、ご自身にとっては不要で、できれば手放したいとお考えではありませんか。
不動産は、所有し続けるだけで固定資産税がかかりますし、維持管理するためには手間と、様々なリスクが伴います。

都心に生活の拠点がある相続人の方にとって、田舎の土地の相続が大きな問題になることはめずらしくありません。

この記事では、「相続した田舎の土地がいらない」ときの考え方のポイントと、対処方法をまとめています。ご自身の場合は、どのような選択をすればよいのか、検討する参考として頂ければと思います。

1.相続した田舎の土地はいらない時の4つの考え方

相続で突然田舎の土地を引き継ぐことになったものの、ご自身にはすでに持ち家があり生活の拠点も離れていたり、維持管理が負担なので、相続する土地を何とか上手に手放せないか、とお悩みのことだと思います。
「土地をいらない」と判断するならば、まずは、売却、譲渡、寄付といった3つの手段から、処分することを検討します。
また更に、引き継いだ土地が相続財産の大半を占めている場合や、土地以外に多額の借金がある場合などは相続放棄も選択肢となります。

【土地を手放す4つの方法】
①売却(2章 2-1)
②譲渡(2章 2-2)
③寄付(2章 2-3)
④相続放棄(3章)

図1:田舎の土地がいらないとき処分か相続放棄を検討する

2.土地を処分する3つの方法

田舎のいらない土地を処分する方法を3つご紹介します。
やはり売却が一番お勧めです。立地条件が悪く、買い手が見つからないなど、売却が難しい場合には、譲渡、もしくは寄付を検討していきましょう。

2-1.方法①売却

田舎の土地を上手に売却することができれば、プラスで利益を生むことも期待できます。
また、現金に換えることにより、相続財産の分割を公平で分りやすくするというメリットがあります。

但し、田舎の土地の場合は、なかなか思うように買い手が見つからないということもあるでしょう。売り出し価格を下げてしまえば、仲介手数料や、売却に伴う税金などの支払いにより、利益はほとんど残らないかもしれません。
しかし、それでも固定資産税などを払い続けるよりは、売却してしまった方が将来的には得になることも多く、維持管理の煩わしさからも解放されます。

図2:田舎の土地と建物を売却して現金に換え分割する

亡くなられた方がお一人で住んでいた不動産を、空き家になったままの状態で相続人が売却し、売却益が生じた場合、一定の要件を満たす必要はありますが、本来支払うべき税金を特別に減らすことができます。
売却で生じた利益から3,000万円を控除することができるという特例で、上手に適用すれば、節税効果が生じます。
この特例は、令和5年12月31日までが適用期限となりますので、売却のタイミングに注意してください。

※3,000万円控除の特例について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)
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2-2.方法②譲渡

買い手の見つからない、資産価値が低いと判断される土地の場合、譲渡や寄付ができるかどうかを確認しましょう。
たとえば隣家などへの無償の譲渡であれば、敷地拡大により利用価値があるかもしれません。
しかし、この場合、譲渡された方に贈与税がかかることに注意が必要です。

2-3.方法➂寄付

譲渡が難しければ、国や自治体に寄付をすることを検討しましょう。
ただし、道路拡張など公共利用の目的がない土地の寄付は受け付けてもらえません。
自治体に早めにご相談されることをお勧めいたします。

3.田舎の土地を相続放棄した方がよい場合

相続放棄とは、亡くなられた方の借金などのマイナスの財産だけではなく、プラスの財産も含むすべての財産を引き継がないことです。
相続する予定の土地がいらないからといって、その土地だけを相続放棄することは残念ながらできません。
すべての財産を相続できなくなるので、相続放棄の申し出をする前に、把握できていない財産がないか、丁寧に調査をおこないましょう。相続財産の全体を把握した上で、放棄の判断をする必要があります。
相続放棄には期限があり、相続開始から3ヶ月以内に家庭裁判所にて手続きを行う必要があります。

図3:相続放棄をすると全ての財産が相続できない


3-1.いらない土地が相続財産のほとんどを占めるなら相続放棄する

相続放棄は、一般的に債務の方が財産より明らかに多い場合におこないますが、相続しても困る田舎の土地が財産のほとんどを占めている場合には、相続放棄も選択肢になるでしょう。
しかし、ほかの財産もすべて放棄することになりますので、預貯金などの財産がある場合は、慎重に判断しなければなりません。

※相続放棄について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)
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3-2. 【注意】相続放棄をしても土地の管理責任が残る

相続放棄をすると、相続権が次の順位の相続人の方に移ります
相続する土地の管理責任も次順位者に引き継がれることになりますので、ご自身が相続放棄をした場合には、必ず次の相続人の方にその旨を伝えることが大切なポイントとなります。

図4:相続放棄をすると相続権が次順位者に移る

相続人全員の放棄手続きが完了したら、再度、家庭裁判所に「相続財産管理人選任の申立て」をおこない、相続財産の管理と処分をお願いしなければなりません。
相続放棄したから関係ない、と思いたいところではありますが、相続財産管理人を選任してもらう手続きまではしっかりしなければなりません。
さらに注意しなければならないことは、相続財産管理人に管理と処分を依頼するには、事前に数10万円~100万円程度の予納金(最終的に余った分は返還されます)を支払わなければなりません。
相続財産管理人への報酬は原則、相続財産が充てられますが、選任されるまでの土地の管理費用などを相続財産から支払ってしまうと相続放棄が無効となる恐れがありますので注意してください。

※相続放棄した家の管理責任について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)
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4.いらない田舎の土地を放置する4つのリスク

田舎の土地を相続するということは、税金や、維持管理費の支払いなどの経済的な負担と、安全に維持するために定期的に土地を見回るなどの時間や手間の負担があります。
空き家にしていることで、近隣住民の方とトラブルが発生すれば、その対応に追われることもあります。
たとえいらない土地であっても、所有者であれば責任を背負うことになります。

※ご実家が空き家になることのリスクについて詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)
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4-1.固定資産税がかかる

固定資産税は、毎年1月1日時点で不動産を所有している方に課される税金です。
その場所に住んでいなくても、その不動産を所有している限り、納め続けなければなりません
「空き家」のまま放置し続けると、倒壊などの危険や、害虫の発生など、衛生上有害とみなされる恐れがあり、このような状況で「特定空き家」に行政が指定すれば、現在の6倍にも及ぶ固定資産税を支払わなければならなくなりますので、管理には注意が必要です。

※相続発生後の固定資産税について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)
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4-2.維持管理費がかかる

土地を所有し続けると維持管理費がかかります。
家の修繕費や庭の手入れ、定期的な管理のため、現地を訪れる度に交通費がかかり、また時間的にも大きな労力を費やすことになります。
管理会社に委託すると安心ですが、別途費用が発生することになります。

図5:景観の悪化や衛生上有害となるリスクがある

4-3.近隣とのトラブル発生

老朽化した建物は、倒壊して近隣住宅を傷つけてしまったり、通行人にケガをさせてしまう恐れがあります。
景観や不法投棄など、ゴミの問題、治安の問題など、地域社会に迷惑をかけるかもしれません。
損害賠償責任を負う可能性もあるのです。

図6:建物の倒壊等で近隣トラブルになるリスクがある

4-4. 次の世代に問題を先送りすることになる

いらない田舎の土地が「どうにもならない」と放置しておくと、やがて子どもの世代に問題を引き継いでしまうことになります。ご自身の代の責任として土地を処分、もしくは活用するなど、検討して早めに実行していただきたいと思います。
子供たちのためにも、現時点で対応しておくことが望ましいといえます。

5. いらない田舎の土地を処分できないなら活用する

土地を手放すことが難しかったり、一方で立地条件がよく収益が見込める場合は、土地を活用することを前向きに検討しましょう。
立地や広さにもよりますが、アパート経営、戸建て賃貸住宅、駐車場、トランクルーム、太陽光発電、貸し農園などで利益を生む可能性があります。
土地活用の専門家である不動産業者や、税金のことなども含め、相続に強い税理士に早めにご相談されることをお勧めいたします。

6.まとめ

相続する田舎の土地がいらないときは、処分(売却・譲渡・寄付)もしくは相続放棄を検討します。
利益が生じる可能性のある売却が一番お勧めですが、もし買い手が見つからない土地であれば、譲渡や寄付ができないか、確認してみましょう。
田舎の土地が、相続財産のほとんどを占めている場合や、多額の借金があった場合は、相続放棄も選択肢になります。相続放棄をするとすべての財産を引き継ぐことができないということや、相続放棄をしても土地の管理責任が残ることに注意が必要です。
また、相続放棄には手続きの期限がありますので、ほかの相続人とよく話し合い、速やかに手続きを進めることが大切です。

不動産は所有し続ける限り、固定資産税や維持管理費がかさみ、また管理不足による近隣住民とのトラブルが発生するなど、負担も大きくなります。いらない土地の相続問題を次世代に先送りしないためにも、ご自身の代で解決できるように対処していただければと思います。

処分することが難しい土地の活用方法や、相続放棄について不安のある方は、相続問題に強い税理士に、まずはご相談されることをお勧めいたします。

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