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養子縁組で相続はよく考えて!相続の5つのメリットと5つの注意点

多様な家庭のあり方や、相続税の対策がインターネットで容易に調べられるようになったことで、相続のための養子縁組を検討されている方も増えています。

たとえば、このような思いで本記事を読まれていらっしゃるのではないでしょうか。
・可愛いお孫さんの将来を思い、ご自身の財産を引き継いでもらいたい
・同居もして、世話になっている長男のお嫁さんにも財産を引き継がせてあげたい
・再婚した奥様の連れ子にも財産を引き継がせたい
・子どもがいないので後継者がほしいと思っている

このような思がある場合には、養子縁組の制度を利用することは有効的であり、もしもの時に備えておくことができ、ご自身の財産を確実に引き継いでもらうことが可能です。しかし、養子縁組をされる方も、メンタル面で繊細な問題となる側面がありますので、一方的な思いで進めてしまうと、いざという時に大きな揉め事が生じかねません。
また、養子縁組をすると本来財産を相続できる相続人にとっては相続できる割合が減ることになるため、こちらへの配慮も必要となってきます。

養子縁組制度を上手に活用して円満な相続を実現するためには、正しい知識と周りへの配慮を忘れずにお考え頂ければと思います。

1.養子縁組すれば相続の権利関係は実子と同じ

「養子縁組」をおこなうことで、ご自身のお子さんではなく直接血の繋がりがない方と法的に親子関係を結ぶことができます。よって、養子縁組が成立した時点から、養子になった方は実際のお子さんである実子と見なされ、相続においても実子と同じ権利を持ち、同じ割合を相続できることになります。また、養子になった方は実親と養子縁組をした養親の両方の相続権を持つことになります。

図1:養子縁組を考えるイメージ

1-1.養子は実子と同じ割合を相続することができる

養子は、相続において「法定相続人」として扱われますので、実子と同等の権利を持つことになります。よって、相続できる割合である法定相続分は、実子と均等になります。

図2:養子も実子と同じ法定相続分

法定相続分はこちら → 多様な家族も大丈夫!図解でわかる法定相続分の割合と計算【完全版】

1-2.一般的な養子縁組の3つの事例

先にご説明したとおり、養子縁組は本来の相続人や養子縁組をする方への配慮が必要ですが、養子縁組の3つの事例をご紹介します。相続対策として養子縁組をするような場合は実親との親子関係はそのまま継続されていることが一般的です。これは「普通養子縁組」という制度になります。相続権を、実親と養親の両方で保有することになります。

1-2-1.お孫さんを養子にする

生前にまとまった財産を一度にあげてしまうと贈与税がかかってしまいます。かわいいお孫さんの将来のために、ご自身が築きあげた大切な財産を確実にお孫さんに引き継ぎ、お孫さんに使ってもらいたい場合には、お孫さんと養子縁組をしておくという選択肢があります。お孫さんを養子にした場合、法定相続人が増えることになりますので、相続税の基礎控除額(法定相続人1人につき600万円)も増えて節税対策にもなります。ただし、養子縁組には相続税の基礎控除等は制限がありますので、2-3をご確認ください。

(例)お孫さんをご自身の養子にする場合
 相続人:配偶者・長男・長女・お孫さん

図3:お孫さんを養子縁組するイメージ

1-2-2.お子さんの配偶者を養子にする

長年、同居してよく尽くしてくれたご長男の嫁にも、長男や長女といったご自身のお子さんたちと同等に財産を譲りたいとお考えの場合、普通養子縁組をすれば、財産を確実に譲ることが可能となり、同時に基礎控除額も増やすことができます。

<特別寄与料制度(平成30年の民法改正)>

長男のお嫁さんなど、亡くなられた方の介護等をしていた方に「特別寄与料の請求権」が与えられることになりました。この制度により直接介護をしていた相続人以外の方が財産を相続できるようになります。ただし、この制度は無償で貢献していることなど条件があること、請求すれば無条件で支払いが認められるわけではないことなど、注意点も多くあります。

図4:長男のお嫁さんを養子縁組するイメージ

1-2-3.再婚して連れ子を養子にする

再婚した妻に実子(連れ子)がいらっしゃる場合、そのお子さんとは血縁関係がありませんので、そのままにしておくと、再婚した妻やその再婚した妻とのお子さんがいる場合には相続人となりますが、連れ子には相続権がありません。再婚した奥さまの連れ子をご自身の相続人にするためには養子縁組をする必要があります。再婚すれば、奥さまのお子さんとも自動的に親子関係が成立していると勘違いされる方も多いので注意してください。また、連れ子を養子縁組することで、相続人である長男・長女の相続財産の割合が減る点に注意しましょう
 
図5:連れ子を養子縁組していない場合

6:連れ子を養子縁組した場合

1-3.実は養子縁組制度は2種類ある

養子縁組制度には、ごく一般的な「普通養子縁組」と、特別な事情がある場合に結ぶ「特別養子縁組」という2種類があります。
普通養子縁組は、主には家の存続に関係する理由で、実親との親子関係を継続したまま、養親との親子関係を作るという二重の親子関係を成立される制度です。実親との親子関係を断つことはないので、双方に大きな変化はなく、ごく一般的に活用される制度です。特別養子縁組は、実親では育てられないなどのやむを得ない事情がある場合、一定の要件を満たす必要はありますが、実親との法的な親子関係を解消し、養親の実の子として親子関係を成立される制度です。其々の要件を以下の表にまとめましたのでご確認下さい。

表1:普通養子縁組と特別養子縁組について

普通養子縁組 特別養子縁組
目的 親側の家系を保持するため 子の福祉・利益を図るため
縁組の必要性 特になし 父母による養育が著しく困難または不適当である場合
養親の要件 成年以上
単独(独身)でもOK
婚姻した夫婦のひとりが25以上
(その場合もうひとりは20歳以上)
養子の要件 養親より年長でない者 原則審判申し立て時、6歳未満
実親の同意 養子が15歳未満のとき代理承諾 必要
実親との親子関係 継続 終了
縁組の手続き 養親と養子の同意による(届出) 6ヶ月の試験養育期間あり
家庭裁判所による審判で成立
戸籍の表記 養子・養女 長男・長女
相続権 実子と同じ権利
養親と実親の相続権を持つ
実子と同じ権利
養親の相続権のみ持つ
相続税 法定相続人の養子数に制限あり 実子として法定相続人の数に含める
(養子の数に制限なし)

2.養子縁組で得られる相続における5つのメリット

将来の相続に備えて対策を考える場合、養子縁組の制度を活用する場合、どんなメリットがあるか確認をしていきましょう。また、先にも記載しておりますが、対策をすることが中心となり、養子縁組をされる方の気持ちや、本来相続人となる方の気持ちなどをおろそかにしないよう、十分に配慮しましょう。

2-1.メリット①:実子と財産を平等に分けられる

養子縁組が成立すれば、実子と同じ権利を持つことが認められます。法律で決められた相続できる割合である法定相続分および、主張できる権利等もすべて実子と同等になります。先に記載したとおり、再婚した奥さまの連れ子に関しては、再婚と同時に法的にはお子さんとならないため、養子縁組をしてはじめてお子さんと同等の権利となります。

2-2.メリット②:法定相続人ではない方へ相続できる

法定相続人ではないお孫さんや、第三者(例えば、長男の配偶者)に相続で財産を確実に譲りたい場合には養子縁組しておくと実子と同等に財産を引き継いでもらうことができます。血の繋がりがない方でも、お互いの同意があれば養子縁組は成立し、実子として財産を引き継いでもらうことが可能となります。

2-3.メリット③:相続税の基礎控除額を増やせる

相続税を計算する際に、相続税がかからない基礎控除という非課税枠があります。この基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」という式に当てはめて計算します。養子縁組をすることで、この計算式の法定相続人の数が増えるため、非課税枠が大きくなります。

図7:基礎控除の考え方

注意点は、養子縁組によって相続人が増えた場合、法定相続人としてカウントできる人数に上限がある点です。
(1)亡くなられた方に実子がいる場合、養子は1人まで
(2)亡くなられた方に実子がいない場合、養子は2人まで

なお、次の場合は、養子でも実子として扱うため、法定相続人として制限はありません。
(1)特別養子縁組により養子になっている場合
(2)再婚した配偶者の実子が養子になっている場合(連れ子)
(3)亡くなられた方の養子が以前死亡、または 相続権を失ったため、代襲相続人となった場合

2-4.メリット④:生命保険金の非課税限度額を増やせる

相続において、基礎控除とは別に死亡を原因として受け取る保険金には、相続税がかからない「非課税枠」があります。「500万円×法定相続人の数」という式に当てはめて計算します。こちらも基礎控除と同じように、無限に人数を増やせるわけではなく、実子がいれば1人まで、実子がいなければ2人までと決まっています。

図8:生命保険の非課税枠

2-5.メリット⑤:死亡退職金の非課税限度額を増やせる

もし、定年前の現役世代で会社務めされていた方が亡くなられた場合、死亡退職金を受け取れる場合があります。死亡保険金と同じように「500万円×法定相続人の数」という非課税枠があり、法定相続人の人数制限
の考え方も死亡保険金と同じです。

図9:死亡退職金の非課税枠

3.養子縁組で注意すべき5つのポイント

一般的な普通養子縁組であれば、お互いの同意することで養子縁組が成立してしまう気軽さがある反面、先にご紹介したとおり権利が実子と同等になるため、のちにトラブルに発展してしまう可能性を秘めていることを忘れてはいけません。

3-1.ポイント①:一人あたりの相続財産が減る

養子が増えると実子と同等の法定相続人が増える一方で、相続人で均等に財産を分割するため一人当たりの財産が少なることを意味します。養子縁組できる人数には制限がありませんので(先にご説明した、基礎控除等の控除には制限があり)養子が増えれば増えるだけ、一人が取得できる財産の割合が少なくなり、「こんなはずではなかった・・・」と不満が募り、もめてしまうかもしれません。

3-2.ポイント②:相続税が2割加算される場合がある

本来はお子さんに相続しそのあとお孫さんに相続するという流れですが、相続する権利を一つとばしてお孫さんを養子にしてご自身の相続時に財産を相続させる場合には、相続税が2割加算されます。また、法定相続人ではない第三者を養子にした場合なども、相続税が2割加算されます。取得できる割合は実子と同じとなりますが、相続税は高くなる点に注意しておきましょう。

3-3.ポイント③:養子縁組をした時期により代襲相続は認められない

養子縁組したお子さんがすでに亡くなられている場合、実子と同様にその養子縁組したお子さんの子どもつまりお孫さんは代襲相続をすることができます。しかし、注意が必要なことは、養子縁組のタイミングです。養子縁組した方との血縁関係は、養子縁組をした時から始まりますので、お孫さんが養子縁組する前に生まれていた場合には代襲相続ができません。

代襲相続については → 代襲相続人は誰?対象範囲と割合の考え方と4つのケース

図10:養子縁組と代襲相続について

3-4.ポイント④:養子縁組は個々の縁組なので養親の立場を引き継げない

ご夫婦にお子さんがいらっしゃらない場合、後継ぎを考えて養子縁組をしてお子さんを迎え入れることもあります。この養子縁組したお子さんが結婚し、ご夫婦よりも先にお子さんが亡くなってしまうと後継ぎが途絶えてしまいます。養子縁組をしたお子さんと結婚した奥さまには相続権が引き継がれないため、お子さんの奥さまを改めて後継ぎにする場合には、新たに養子縁組をする必要があります。

3-5.ポイント⑤:相続人の間でもめてしまう場合がある

養子縁組をしていた事実を実子の方々が知らず相続時に初めて知る場合には、想定していた相続分を相続できないことから、相続人同士の揉めごとがはじまってしまうケースも珍しくありません。このような場合に、納得できないから遺産分割協議書に同意しないなど、相続手続きが完了しない事態になった場合、いつまでも手続きが完了できなくなります。

そのような事態を避けるためにも、養子縁組をする前にご自身の思いを実子の皆さんに伝えておくことが最適であり、加えて財産の分割についても遺言を活用してご自身の想いを相続人の皆さんへ伝えていくことが大切です。ご家族がこの先もずっと円満に暮らしていけるような配慮をしておきましょう。

4.さいごに

普通養子縁組であれば、互いの立場が大きく変化するわけではないので、相続対策としてすぐに思いつき利用されることがあります。法定相続人が増えることで、相続税の基礎控除額や生命保険金や死亡退職金の非課税枠を増やすことができるので節税に直結するためです。
しかし、法定相続人が増えることにより、一人あたりの相続分が減ってしまうことなどから、遺産分割協議等でトラブルに発展し、円満な相続をすることができなくなってしまう恐れについてもご紹介しました。

現在のご家族のことを第一に考えて、配慮することを忘れずに、「養子縁組制度」をご検討いただければと思います。

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