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株は贈与税を払って早めの贈与がお得!【上場株・非上場株の対策】

ご両親が亡くなって「相続税の納税で困った、苦労した」という話は耳にされたことがあると思います。
その一つに上場株式など資産運用で保有している株も対応に困ったり、税金に困ったという話があります。
もう一つに、会社経営をしているお父さまが亡くなり、同族会社を営んでいることから株の相続で苦労したという話があります。

上場株式の贈与税に関わる内容は2章で、非上場株の贈与税に関わる内容は3章でご説明をしていきます。

非上場株においては、余り聞き慣れないと思いますが、主にはこのような内容です。
同族会社の場合には「社長」兼「株主」というパターンがほとんどです。
同族会社の社長さまは、売上にはとても興味をお持ちですが、意外と自分の会社の株価がいくらなのか、についてあまり気にされていない方が多いものです。事業が順調に成長していくと株価の価値は上がり、社長さまの資産価値は気付かないところで大きくなっていきます。

いざという時に、相続が発生して家族が知る現実としては、資産価値が大きくなった会社の株に対する高額な相続税の支払いです。非上場株式である同族会社の株は、上場株と違って、換金性が非常に低いので、納税用のお金は別で準備をする必要がありとても苦労することがあります。

ここでは、株の贈与についての基本的な考え方と、生前の対策として株の贈与を活用した相続税対策をご紹介したいと思います。

1.株式を贈与する場合の金額換算の考え方

株式には上場株式にも非上場株式にも価格があります。
1株100円の株もあれば、5,250円の株、20,000円の株もあります。
その株の価値をもとに価格が決まるのですが、この価格は容易に分かる場合と分からない場合があります。

“株価が公開されており日々価格が変わる株式(上場株式)”は容易に確認できますが、“株価が公開されておらず日々変わらない株式(非上場株式)”の確認には専門的な知識が必要となります。

株式を贈与する場合の価格の考え方と対策について、上場株式は2章で非上場株式は3章でご紹介します。
贈与税の計算方法や株式を生前贈与するメリットは4章を確認ください。

2.上場株式の贈与は株価を自分で計算できる

上場株式を贈与する場合には、市場で取引されている価格を基に計算をします。新聞やインターネットに株価が公開されていますので、対処となる株の株価は自分で確認できます。なかなか難しいですが、将来値上がりする可能性のある銘柄を価格が低いうちに贈与できれば、大きな節税につながります。

2-1.上場株式は4つの中で一番低い価格で計算する

贈与する株式が上場株式の場合、その株式の税金の対象となる課税価格の評価額は、次の4つの中から最も低い金額で計算します。
 
次の①~④のうち最も低い価額で評価します。
 ① 贈与する日の終値(その日の株式市場が閉まった時点の金額)
 ② 贈与する日が属する月の毎日の終値の平均額
 ③ 贈与する日が属する月の前月の毎日の終値の平均額
 ④ 贈与する日が属する月の前々月の毎日の終値の月平均額

図1:贈与する株式の株価の考え方

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本日の終値が1,650円の株式を2種類所有していた場合に、上記の考え方を当てはめると、実は贈与する価格が全く違うものとなります。表1において、A株式は1,650円で評価しますし、B株式は1,000円で評価することになります。

表1:株価の考え方

2-2.上場株式の贈与は、証券会社で手続きを

上場株式を贈与する場合には、証券会社の窓口に問い合わせをして、口座移管の手続き方法を確認します。各証券会社のWebページに、贈与等のための移管手続きに関わる説明が掲載されていますので、一読してそのルールに沿って対応をしましょう。

2-3.上場株式を贈与する3つのタイミング

将来、価値が上がる株式を価格が低いうちに贈与することが一番のメリットになりますが、こればかりは誰も当てることができません。贈与のタイミングについては、次のように考えてはいかがでしょうか。
・直近3ヶ月で大幅に株価が上昇した株を上昇前の金額で贈与できる
  ⇒表1のA株式のように急激に上昇した場合にも、前々月の価格で贈与可
・年間110万円までの贈与税の非課税枠内を利用して無税で順次贈与をしていく
・配当や優待などメリットがある株式を早い段階で贈与してその利益を得る

3.非上場株式(同族会社)の贈与は専門家と相談して決める

上場株式は贈与する価格がはっきりと決まりますが、非上場株式の場合は会社の経営権に与える影響度合いを加味して計算することから、大きく2つの判断方法があります。いずれにしても、非上場株式の場合は、そのほとんどが親族だけの同族会社というケースが多く、相続の際に困らないように、計画的に次の世代へ株式を贈与しておきたいものです。

3-1.非上場株式(同族会社)の株価の考え方

上場株式に比べて、非上場株式は評価方法も非常に複雑になっています。
大まかには、贈与を受けた方が、その株式を発行した会社の経営支配力を持っている株主になるのか、それ以外の株主なのかよって、それぞれ原則的な評価方式又は特例的な評価方式によって評価をします。一般的には、原則的な評価方式の方が特例的な評価方式より株価が高くなる傾向があります。

3-1-1.会社の経営権を支配する場合の株価の計算方法(原則的な評価方式)

評価する株式を発行した会社を総資産価額、従業員数、および取引金額によって、次のように区分し評価をします。
 
表2:株価の計算方式

会社規模 方式 具体的な計算方法
大会社 類似業種比準方式 類似した業種の上場会社平均株価を基にして、株価を計算する方法
中会社 併用方式 類似業種比準方式と純資産価額方式を併用して、株価を計算する方法
小会社 純資産価額方式 会社の総資産や負債を基にして、株価を計算する方法

安定して利益を出している会社について、原則的な評価方式で評価をした場合には、一般的に次の順で、株価が高くなる傾向があります。

図2:原則的な評価方式で評価をした場合の株価の高さ

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また、株価を計算する際には、「類似業種比準方式」と「純資産価額方式」の2つを計算した結果、「純資産価額方式」の方が低い場合には、「純資産価額方式」を採用することができます。ですから、傾向としては、会社の規模が大きいほど、株価は低くなるということになります。

3-1-2.経営権を支配しない場合の株価の計算方法(配当の形で利益を得ているだけの場合)

配当還元方式を利用します。その株式を保有することで受取ることのできる1年間の配当額を一定利率で還元し、元本である株式の価額を計算する方法です。この計算された価額を「配当還元価額」といい、次の計算式で計算ができます。

図3:配当還元方式の計算式

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年間配当額は次のとおりとする
〔直前期末以前2年間の配当金額×1/2〕÷〔1株あたりの資本金等の額を50円とした場合の発行済み株式数〕

3-2.評価額の高い非上場株式を相続すると大変!

安定して利益が出ている会社は、毎年利益が積み重なっていきますので、株価もどんどん高くなります。その影響から知らないうちに自社の非上場株式の価値が上がり、贈与や相続をするときに非常に高額な財産として評価され、納税資金の準備に苦労する方が多くいらっしゃいます。非上場の同族会社の株は、ほとんど換金性がないため株式を売却して納税資金を準備することができません。よって、非上場の同族会社については、生前からの相続対策として自社株の計画的な贈与が必要になってきます。

3-3.非上場株式の贈与は「評価を下げてから贈与」が基本

3-1でご説明した方法を用いて、贈与や相続をする場合には、贈与や相続があった時の評価額に対して課税されます。相続の場合は時期を選べませんが、贈与の場合は、あらかじめ計画的に株価を下げてから贈与することが可能です。
次のような対策を取って、株価の評価を下げてから贈与をすることを検討しましょう。

3-3-1.対策1:配当をださない

「類似業種比準方式」を用いる場合は、配当・利益・純資産の3つの要素を基に株価を計算します。3つの要素の一つである「配当」を出さないをしない、あるいは安くすると株価を下げることができます。特に、同族会社の場合は、配当の額の決定も容易にできます。この方法は、経営権を支配しない場合の評価方式である「配当還元方式」でも有効です。

3-3-2.対策2:含み損のある土地などを売却する

「類似業種比準方式」を用いる場合の3つの要素のうちの「利益」についても、大きな損失があれば減少するため、株価は下げることができます。バブルの時に高額の土地を購入し、そのまま保有している場合など、かなりの含み損が見込めます。特にその土地の利用価値がないのであれば、思い切って売却してしまうのも一つの方法です。

3-3-3.対策3:退職したときが贈与のチャンス

そろそろお子さんに会社を任せたい、と考えていらっしゃる場合には、ご自身が退職するタイミングで贈与をすることも1つの方法です。ご自身が退職するタイミングで多額の退職金を支給することになれば。一度に損金として計上するため、利益は大幅に引き下げられます。また、役員退職金を支払った場合、「純資産価額方式」でも評価額は引き下げられます。

役員の退職金は高額になります。退職金規定を整備したり、保険を活用するなどの対策も必要です。
※退職金を受け取ると個人の資産が増えるため、別途個人資産の対策も必要になります。

役員の退職金は、次の計算式で計算されるのが一般的です。

図4:役員の退職金の計算式

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3-3-4.対策4:法人で不動産を購入する

「純資産価額方式」を用いる場合は、まず会社の総資産や負債を原則として相続税の評価方法で評価します。その評価した総資産の価額から負債や評価差額に対する法人税等相当額を差し引き、残りの金額から評価をします。不動産の場合、実際の購入価格よりも相続税評価額の方が低くなるため、不動産を購入することによって、株価を下げることができます。
ただし、不動産を購入してから3年以内に贈与や相続が発生した場合には、購入価額で評価することになるため気をつけましょう。

3-3-5.対策5:従業員数100人以上を目指す

3-1-1で説明した原則的な評価方式では、会社の規模によって適用する評価方法が違っています。そして、会社の規模が大きいほど、評価額が低くなる傾向にある「類似業種比準方式」を適用することができます。会社の規模は、従業員数・売上高・資産規模の3の要素で決定されます。

その中で従業員数に関する企業規模の判断基準として、従業員数が100人以上であれば必ず大会社に分類されるというものがあります。従業員数が100人にちょっと足りないくらいであれば、雇用を考えてみてもいいのではないでしょうか。

直前期末以前に1年間における従業員数に応ずる区分
 ① 100人以上の会社は、大会社(総資産、取引金額問わず)
 ② 100人未満の会社は、総資産と取引金額から判定

3-3-6.対策6:贈与税の納税猶予の特例を使う

「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(以後「円滑化法」といいます。)が制定され、「非上場株式等についての贈与税の納税猶予の特例」ができました。後継者である受贈者が、一定数以上の非上場株式等を、先代経営者から贈与され、会社の経営をしていく場合には、贈与税の一部の納税が猶予されます。そして、先代が死亡した場合には、納税が猶予された贈与税額のうち、全部又は一部が最終的に免除されます。


この特例は要件がかなり複雑で、手続きも大変です。
詳しい内容は、国税庁のHPをご確認ください。

納税猶予はこちら⇒https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4439.htm

4.贈与を活用した相続税対策の基本は“早めの対応”

相続が発生して相続税の納税額が分かってから慌てるケースは本当によくあります。
贈与には非課税の特例が多くありますが、相続には非課税の特例がほぼありません。つまり、亡くなるまでご自身が財産を全て保有していると、亡くなった段階でご家族がその財産を引き継げない可能性があるということです。

相続税の納税額を見て慌てたり、生前から株や不動産の贈与を計画的にしてもらっておけばよかった、と後悔しても対策のしようがありません。一方で、贈与をした方が亡くなると相続開始前3年以内の贈与は、相続税の課税対象になります。「贈与」は思いたったら吉日です。早めに対応しましょう。

4-1.将来、値上がりするものは生前贈与をする

贈与税や相続税は、贈与時または相続時の財産価値に応じて税額が計算されます。よって、業績が好調な会社の株などは順次、株価の評価額が値上がりしていくため、早めに贈与することで贈与時点の低い価額で税額を計算すると大きな節税につながります。また、贈与されたものがアパートなど資産を生むものの場合、贈与された時点から贈与を受けた本人の収入として受けることができますのでメリットは大きくなります。

4-2.相続税の税率を知ると節税対策(贈与)がしたくなる

相続税の税率は10%~55%となります。亡くなった際に財産の価値を計算して求めます。相続する財産のうち課税対象となる財産の額がお一人あたり6,000万円であった場合には税率が30%になり、とても高額な相続税の支払いが発生します。そうすると、生前対策として可能な限り非課税で対応したり、価値が低い内に贈与をしておきたいと思うものです。

表3:相続税の税率表

例)
相続財産が2億2,800万円で、相続される方がお子さん3名のみ場合の相続税率

2億2,800万円―4,800万円(基礎控除:3,000万円+600万円×3)=1.8億円
1.8億円×1/3=6,000万円

一人の相続税の課税対象額が6,000円の場合には、相続税が30%となる
 

4-3.贈与税の計算方法

贈与税の計算方法は次のとおりです。贈与税は、贈与を受けた側に税金の支払い義務があります。

図5:贈与税の計算式

4-2の例で計算した一人あたりの相続財産6,000万円を一度に贈与すると、高額な贈与税の納税が必要となりますが、特例を活用することで減らすことができます。相続する予定の財産を単純に生前に一度に贈与してしまうと、贈与の方が高い税率になりますので、複数年に分ける、特例を使うなどして工夫し、贈与税の支払いを最大限抑えましょう。

表4:贈与税の税率表 ※特例税率は贈与をうける人(子・孫)が18歳以上のとき(令和4年3月31日以前の贈与については20歳以上)

5.さいごに

株式は大きく分けて、上場株式と非上場株式の2種類ありますがあり、株価の算定方法が異なることがお分かりいただけたと思います。そして、非上場株式については将来的に相続が発生した場合には、思いがけない負担が必要となる可能性があることを、お分かりいただけたと思います。次の世代にスムーズに移行できるよう、生前からしっかりとした対策が重要となります。

非上場株式は、評価方法も複雑ですし、贈与税の軽減対策についても経営状況などを加味すると、複雑になります。特に、同族会社の経営者の方は、売上だけでなく自社の株価を常に把握しましょう。

株価については、一度自社の株価がいくらになるのか税理士に計算をしてもらうのもいいかもしれません。

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