立木の相続税評価は必要か?庭の立木・森林の立木・果樹の立木の評価

  • 相続税

「亡くなった父は森林の土地を所有していた。さらに、実家の敷地は広く、定期的に庭師を呼んで手入れするほどの庭があり、大きな松の木が鎮座している。森林も、庭の松の木も価値があるんだ・・・と生前の父はよく話していたが、森林の木や庭の木が相続税に影響するのだろうか・・・?」

相続では、土地の評価が必要であることは分かっていても、その土地に存在する立木の評価が必要なのかどうかは判断が難しいと思います。資産価値のある立木かどうかは、どのように判断すればよいのでしょうか?

実際のところ、立木が相続税評価の対象にならないケースも多いです。資産価値がなく売却できない立木であれば、相続税の評価対象に含めなくても、税務署の指摘を受けるようなことはないかもしれません。

本記事では、相続する立木の評価について、詳しくご説明いたします。

1.立木も立派な相続財産!樹木の種類で相続税評価の方法が異なる

「立木(たちき)」というと、聞きなれない言葉なのでイメージできない方もいらっしゃると思いますが、樹木のことです。相続でいう立木は、1本1本の樹木を指す場合と、森林などのような種類や樹齢が同じ樹木のまとまり(税務的には1団地と表現しています)を立木として考えます。

「庭に生えている木を評価する必要など本当にあるのだろうか?」と疑問をお持ちかもしれません。評価が必要な立木は、資産価値の高い樹木とご理解下さい。一般的な庭に、通常植えられるような樹木について、細かく評価する必要はありません

とはいえ、樹木自体にそれなりの資産価値がある場合、ほかの相続財産と同様に、相続税の課税対象財産として評価しなければなりません。立木が存在している土地の所有者が土地と共に引き継ぐもの、と考えるのが一般的ですね。

評価方法は、立木の存在する場所や、種類、樹齢などを加味して、評価単位ごとに異なります

図1:立木の所在、種類、樹齢によって異なる評価方法

2.庭園にある立木の相続税評価

庭園というと、池などがある大そう豪華な庭をイメージしてしまいますが、かなり費用をかけて造った庭の立木であれば、個別に評価するのではなく、家屋に付随する「庭園設備の1つ」として評価することになっています。

庭園設備とは、立木(庭木)のほかに、庭石や庭池、あずまやなどを含めて考えます。評価額は、庭を造るために要した費用の100分の70に相当する価額となります。

図2:庭木等の相続税評価額の計算式

3.森林にある立木の相続税評価

森林に茂る立木を1本ずつ評価するのは大変です。国税庁ホームページで示す「財産評価の基本通達」では、森林の主要樹種となる杉やひのきなどは、各都道府県において定める標準価格をもとに評価することになっています。

考え方や計算式が明確なので、計算自体は難しいものではありませんが、計算するために必要な情報を集めることに手間がかかります。

3-1.立木の評価に必要な書類

森林の立木を評価する上で重要なのは、森林簿、保安林台帳、分収造林契約書といった評価の基礎となる資料を適切に揃えることです。

【森林簿】
森林の所在地や所有者、面積や森林の種類、材積や成長量など、森林に関する情報が詳しく記載された台帳のことです。各都道府県の森林事務所(または農林事務所)で入手できます。役所の森林課などで入手できる場合もありますが、行政によって異なりますので、事前に確認が必要です。

交付してもらうには、相続が発生したことが分かる書類を提出する場合があります。相続税申告で必要な旨と必要書類を問い合わせの上、出向くようにしましょう。

【保安林台帳】
立木の中に、保安林が存在しているという場合には、伐採関係区分を把握する必要があります。各都道府県作成の保安林台帳で確認できます。入手先は森林簿と同じ場所です。

【分収造林契約書】
立木の中に、第三者が所有する立木が存在している場合は、収益などを分配している可能性があるため、持分割合を把握する必要があります。分収造林契約書という書面で確認できます。通常は、森林地の所有者の方が保管している契約書です。お手元にない場合には、第三者の所有者の方に協力していただく必要があるかもしれません。

3-2.立木の2つの評価方法

評価方法には、立木のエリアを1つの区画(1団地という)と考え、その土地の単位で評価する方法と、立木ごとに評価する方法の2パターンあり、ともに「標準価額比準方式」で評価します。

3-2-1.森林の立木の評価方法

森林の主要樹種である杉やひのきなどは、原則、樹種と樹齢が同じ1団地をまとめて評価します。そのエリアの地積や、立木の樹齢や密度などから土地の状態などを加味し、各都道府県で定めている標準価格と掛け合わせて評価します。算式としては次に示すとおりです。

図3:森林の立木の相続税評価の計算式

算式に当てはめる数値の詳細については、3章の3(3-3)でご確認ください。

3-2-2.森林の立木以外の評価方法

森林地などの樹種や樹齢が同じ立木群や、庭園以外の立木については、1本ごとに評価します。

図4:森林の立木以外の相続税評価の計算式

3-3.算式に当てはめる数値の説明

それぞれの数値は、入手した森林簿や、国税庁ホームページで確認することができます。

3-3-1.主要樹種の標準価額

標準価額は、立木の種類、所在、樹齢などによって異なります。売買実例価格や精通者意見価格等を参考に、1ha当たりの標準価額が公表され、国税庁のホームページで確認することができます。

立木の種類や樹齢などが分からない場合は、実際に現地で調査する、もしくは、森林簿を入手して確認する必要があります。

図5:立木の標準価格

参考:国税庁ホームページ「森林の立木の標準価額表」
https://www.rosenka.nta.go.jp/main_r02/tokyo/tokyo/others/d220200.htm

  3-3-2.地味級

土地の良し悪しを示す指標で、樹齢と樹木の太さ、高さなどで判定します。樹齢は森林簿に記載がありますが、樹木の太さ、高さについては森林簿に記載はなく、現地調査が必要になります。

杉とひのき以外は、原則「1.0」となります。

図6:杉とひのきの地味級判定表

参考:国税庁ホームページ「地味級」
   https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/05/03.htm#a-118

3-3-3.立木度

その森林にどれだけの立木が立っているかをおおまかに判定した値で、密集程度によって「蜜」(立木度1.0)→「中庸」(同0.8)→「疎」(0.6)となります。

植林した森林については蜜、自然林については中庸としますが、がけ崩れ等が散在しているエリアについては1ランクずつ下げて考えます。

3-3-4.地利級

立木を伐倒し運搬するときの利便性の高さを尺度で表現したものです。立木をケーブルで運ぶと仮定した際のケーブルの起点から集材場所までの距離(小出し距離)と、集材場所から最寄りの製材工場等までの距離(小運搬距離)から確認できます。

小出し距離については森林簿の林道距離を当てはめることができますが、小運搬距離については現地調査が必要です。

図7:地利級判定表

参考:国税庁ホームページ「地利級判定表」
   https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/05/05.htm#a-121

3-3-5.森林の地積

地積については、森林簿で確認をすることができます。

3-4.森林の立木の評価事例

算式に当てはめる数値を以下のように想定し、計算してみましょう。

標準価額:60千円/1ha
地味級 :上級(1.3)
立木度 :密 (1.0)
地利級 :7級(0.6)
地積  :2ha
相続税評価額 = 60千円×1.3×1.0×0.6×2 = 93.6千円

3-5.保安林などは評価を下げる控除額がある

保安林の指定を受けている場合は、伐採制限に応じて、立木の評価額を最大80%まで減額することができます。また、特定森林経営計画が定められている区域内にある立木については、評価額を5%減額することができます。控除に関することは、専門家である税理士に確認されることをお勧めいたします。

4.果樹の相続税評価

リンゴ農園を相続する場合、リンゴの木はどのように評価すればよいのでしょうか?

果樹については、種類ごとに、幼齢樹(成熟樹に達しない樹齢のもの)、および成熟樹(収穫物による収支が均衡する程度の樹齢に達したもの)に分け、樹齢に応じて評価します。

※参考:国税庁ホームページ「成熟の年齢又は樹齢の判定が困難な場合」※所得税基本通達
    https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/08/09.htm#a-03

図8:樹齢の判定

4-1.費用現価方式

果樹については、生育するまでにかかる期間と費用の把握ができることから、樹種ごとに「費用現価方式」で評価します。

【幼齢樹】

植樹期から課税時期までに要した苗木代、肥料代、薬剤費等の現価の合計額の100分の70に相当する金額によって評価

【成熟樹】

植樹期から成熟期までに要した苗木代、肥料代、薬剤費等の現価の合計額から、成熟期から課税時期まで(1年未満の端数があるときは1年とする)の償却費の額の合計額を控除した金額の100分の70に相当する金額によって評価

※償却方法は、定額法によるものとし、耐用年数には省令で定められる耐用年数を用いる

4-2.簡便法

果樹の場合、所得に応じて確定申告をされている可能性が高く、評価の実務として、確定申告に用いられる「収支内訳書」「青色申告決算書」等をもとに評価することも可能です。

5.まとめ

立木が相続財産だということを今回の相続で初めて知った方も多くいらっしゃると思います。資産価値がある立木については、正確に評価額を計算して、相続税の申告書に計上しなければなりません。

森林の立木の評価は、情報を収集することに手間がかかり、また、立木の評価減の特例が適用されるかどうかの判断などは非常に難しいため、専門家である税理士にご相談されることをお勧めいたします。

森林の立木の評価などは、地域性が関係するものなので、現地の税理士にご相談される、もしくは、森林、農地などの評価経験が豊富な税理士事務所に依頼されるとよいでしょう。

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