相続税が心配!基礎控除を超えていたら税額早見表を確認【まとめ】

  • 相続税

「父さんも随分と年をとってきた。もし亡くなってしまったら、父の財産の相続手続きが必要になるんだよな。実家や畑の土地、株や保険などがあるみたいだから、相続税がかかってしまうのではないだろうか?母さんだけでは手続きもできないだろうし。もし、急に相続なんてことになったら、相続税の申告なんて全然わからない!だれに聞けばいいのだろう…。」

相続は、人生においてそう何度も経験するものではありませんし、その方の相続の状況によって、各々の手続き内容も異なってきます。そのため、ご自身の相続に関し、どなたに何を相談したらよいのか?と不安に思われている方も少なくないでしょう。

本記事では、相続税とは何か、いったいどのくらいの相続税がかかるものなのか、申告期限や申告する流れ、相続税を少しでも安くするための特例など、まずは相続税について知っておくべき基本のことをまとめています。

相続税はだれもが払うべき税金ではありません。基本的なことが分かっていると、いざという時に慌てることなく、必要な手続きをスムーズにおこなっていただくことができます。
ご一読いただければ幸いです。

1.相続税とは「基礎控除を超えた部分にのみ」かかる税金

相続税とは、引き継いだ相続財産に課税される税金ですが、引き継いだ相続財産のすべてに課税されるわけではありません。亡くなられた方の相続財産の総額が、基礎控除という一定の額を超えた場合に、超えた部分にのみ、課税される税金です。

相続税は、基本的には、財産を引き継いだ「配偶者相続人」や「お子さんなどの亡くなられた方と血縁関係にあった相続人」に課税されます。(法律で相続する権利があると定められる相続人のことを「法定相続人」といいます。)例外として、「遺言書で相続財産を引き継ぐ法定相続人ではない第三者の方」に課税される場合もあります。相続税の基礎控除については、次の章でご説明いたします。

図1:相続税は基礎控除を超えた金額部分にかかる税金

※相続税とは何か、について詳しくはこちらをご覧ください。

※相続税は誰が払うのかについて、詳しくはこちらをご覧ください。

2.相続税の基礎控除と相続税の早見表

相続税の基礎控除とは、相続税が課税されるかどうかのボーダーラインとなる金額のことです。相続財産の総額が基礎控除額を下回っていれば相続税はかからないので、申告も納税も「不要」となります。基礎控除額は法定相続人の数で決まります。法定相続人の数が分かれば、相続税の基礎控除額を計算することができます。

図2:法定相続人

※法定相続人について詳しくはこちらをご覧ください。

2-1.相続財産の総額が3,600万円以下なら相続税は無税

相続税の基礎控除額は「3,000万円+(法定相続人の数)×600万円」で求める事ができます。
法定相続人が1人の場合には、基礎控除額は3,600万円ですので、相続財産の総額が3,600万円以下であれば相続税がかかりません

図3:相続税の基礎控除額を計算するには?

※相続税の基礎控除について詳しくはこちらをご覧ください。

2-2.相続税の早見表

次に、万が一「基礎控除額を超えている!」という場合には、だいたいどれくらいの相続税を納めなければならないのか、一番気になり、早く知りたいところだと思います。

相続税額を確認するには、まず相続財産の総額を計算する必要があります。正確な税額を確認するためには、一つ一つの財産の相続税評価額を計算し、節税の特例などが適用できるか、細かく確認していく必要がありますが、大よその見当をつけるためであれば、評価の概算額から早見表に当てはめて確認することができます。

相続税の早見表を活用する前に、以下のポイントをご確認ください!

【相続税を早見表で確認する前の5つのポイント】
①相続財産の総額を「大よその概算額」としてまずは確認する
②法定相続人の数と財産の分割割合は「法定相続人及び法定相続分」を適用する
③配偶者には「配偶者の税額軽減 ※4章参照」が適用できるものとする
④相続税が高いと思ったら、「適用できる特例や控除を確認」する
⑤そもそも相続財産の総額が「基礎控除額以下」であれば相続税はかからない

表1:相続税の早見表

※1 法定相続人は「配偶者と子2人の場合」で算出した結果とする
※2 税額(総額)は「千円未満切り捨て」とする
※3 対象財産とは「基礎控除額を差し引いた額」とする

※相続税の早見表について詳しくはこちらをご覧ください。

2-3.自分で計算する!相続税算出のための7つのステップ

相続税の早見表から、大よその相続税額を確認することができますが、より具体的な相続税額をご自身で確認することはできないものか?とお考えかもしれません。

以下に示す7つのステップにおける各々の過程で、より正確な数字を求めていくことができれば、より具体的な相続税額を確認することができます。

相続税をより正確に計算するためには、預貯金などの残額が簡単に把握できる財産から、評価が必要となる不動産などのプラスの財産の確認から借金などのマイナスの財産の確認、さらに適用できる控除や特例の確認などが必要となります。

だれにどのくらいの相続税がかかるのかを把握した場合には、法定相続人の確定、及び相続割合を決めることも必要となります。しかし、相続発生前の段階では、分割割合を正確に決めることは難しいと思いますので、法定相続分で分割することを想定して計算するとよいでしょう。

<相続税の計算をするための7つのステップ>
ステップ①:プラス及びマイナスの相続財産をすべて確認する
※不動産などは評価が必要
ステップ②:法定相続人を確定し、相続財産から基礎控除額を差し引く
ステップ➂:法定相続分でいったん分割する
ステップ④:各人の相続財産の額に対する税率から計算して相続税の総額を求める
ステップ⑤:実際の相続割合に応じて相続税を分割する
※法定相続分のままでもよい
ステップ⑥:適用できる相続税の控除を適用する
ステップ⑦:相続人各々の相続税の納付額が確定する

※相続税の計算について詳しくはこちらをご覧ください。

3.相続税の申告及び納付の期限は10ヶ月

相続税の申告・納付期限は、相続開始から10ヶ月以内となります。相続開始とは、亡くなられたことを知った日の翌日です。亡くなられた方の住所地を管轄する税務署へ相続税申告書を提出し、納税も済ませなければなりません。

期限内に手続きを済ませるためにはどのような手続きが必要なのか、また期限を過ぎてしまった場合のペナルティについてご説明いたします。

<相続税の期限厳守のためにやるべき6つのこと>
①相続する方を確定
②相続財産・債務をもれなく把握
➂遺言書の有無を確認
④遺言書が無ければ遺産分割協議を行う
⑤相続税の計算
⑥相続税申告に必要な書類を揃える

図4:相続税の申告期限は10ヶ月以内

3-1.相続税申告の必要書類

相続税の申告に必要な添付書類は、大きく5つに分類することができます。相続税の申告内容によって添付する書類が異なりますが、必要書類は漏れなく添付する必要があります。

<相続税申告の必要書類>
・「相続人のマイナンバー」に関する添付書類
・「相続人の関係性」を明らかにする添付書類
・相続財産の「分け方」に関する添付書類
・「財産の内容に応じた残高・評価」に関する添付書類
・「相続税の特例の適用」に関する添付書類

※相続税の申告必要書類について詳しくはこちらをご覧ください。

3-2.相続税申告期限をやむを得ず延長する際の手続き

相続税申告期限の10ヶ月を延長できる理由としては、「遺産分割協議が調わないから」「財産内容が把握できていないから」「相続人と連絡がつかないから」などでは、原則として期限延長は認められません。しかし、やむを得ず延長せざるを得ない場合には、いったん「法定相続分で分割した」と仮定して、申告期限内に申告書提出と納税を済ませるとともに「申告期限後3年以内の分割見込書」を必ず添付しておきます

未分割状態の申告では、相続税を減額できる特例などを適用することができず、本来の相続税よりも高い相続税を納めなければならない場合が多々あります。納税の負担は大きいかもしれませんが、無申告で重いペナルティを課されることはありません。

仮の状態であっても、期限内にいったん申告手続きをしておくことにより、期限後でも特例や控除を適用することが認められ、正しい申告をやり直して時点で、納めすぎた税金分は還付を受けることができます。

※相続税の申告期限の延長について詳しくはこちらをご覧ください。

3-3.相続税の申告漏れに課されるペナルティ

相続税の申告期限内に、申告納税をしなければ無申告となり、ペナルティ税が課されることになります。
税務署は職務権限があり、亡くなられた方、および相続人の方々の財産内容を細かく確認することができます。
申告しなくても分からないのではないか?と放っておくことは決してお勧めできません。税務署から、忘れたころに連絡が入る可能性はゼロとはいえません。

相続人が一部の財産を把握せずに、故意でなくとも申告書に計上していなかった財産を含め、相続税の無申告は、税務調査の連絡がくる可能性が高いとご理解いただければと思います。

<注意すべき申告漏れとみなされるケース>
・把握していない財産があった
・名義預金をしていた
・遺産分割協議がまとまらないから申告していない
・亡くなる前3年内の贈与財産を相続税申告に含めていない
・意図的に隠している財産がある

<申告漏れで課される3つのペナルティ税>
①延滞税
②無申告加算税
③重加算税

※相続税の申告漏れについてくわしくはこちらをご覧ください。

4.相続税を減額できる控除と特例

相続税には、基礎控除以外にも減額できる控除や特例があります。これらを正しく適用することで、相続財産の総額が、たとえ基礎控除額を超えていても、納税額をゼロ円としたり、最小限に抑えられる可能性があります。

 

4-1.相続税を減額できる控除と特例

亡くなられた方の配偶者の方は、配偶者の税額軽減(配偶者控除)という特例制度により、配偶者の方が受け取る相続財産の金額が1億6,000万円、または法定相続分のいずれか多い方の金額まで、相続税が無税(ゼロ円)となります。

図5:配偶者の税額軽減

 

※配偶者の税額軽減について詳しくはこちらをご覧ください。

4-2.小規模宅地等の特例で土地の評価額が8割減できる

小規模宅地等の特例とは、亡くなられた方のご自宅(特定居住用宅地等という)を、亡くなられた方の親族が相続する際に、土地の評価額を最大80%減額することができる制度です。土地の価値そのものを変えることなく、相続税額を減額することができます。小規模宅地等の特例の適用には、要件を満たす必要があります。

図6:小規模宅地の特例

※小規模宅地の特例について詳しくはこちらをご覧ください。



4-3.相続税がゼロ円でも申告が必要なケース

相続財産が基礎控除額を下回っていれば、相続税の申告も納税も不要です。しかし、配偶者の税額軽減や、小規模宅地の特例などを適用することにより相続税がゼロ円となる場合には、必ず税務署へ申告する必要があります

特例は勝手に適用されるのではなく、きちんと期限内に申告をして、税務署に特例を適用するので納税額がゼロ円にすることを伝えなければなりません。

図7:相続税がゼロ円でも申告が必要なケース

※相続税のゼロ円申告について詳しくはこちらをご覧ください。

5.相続税において知っておくべき3つのこと

相続税の基礎控除や申告手続き、相続税を減額できる控除や特例などをご紹介してまいりましたが、その他にも相続税において知っておくべきことが3つありますので、ご紹介します。

5-1.生命保険には相続税の非課税枠がある

生命保険金は保険会社へ請求して、はじめて相続人に支払われることから、亡くなられた時点ではこれから相続財産として受け取る予定とみなす「みなし相続財産」となり、相続税の課税対象財産に含めます。みなし相続財産である生命保険金には、別途非課税枠があり、「500万円×法定相続人の数」で求めることができます。

図8:生命保険の非課税枠の計算式

※生命保険における相続税の非課税枠について詳しくはこちらをご覧ください。

5-2.相続財産から差し引ける債務控除がある

相続財産に借金や負債などのマイナスの財産が含まれる場合、相続税の計算をする際に預金や不動産などのプラスの財産からマイナスの財産を差し引いて考えることができます。
この相続税の計算の過程で、相続財産から負債などのマイナスの財産を差し引くことを「債務控除」といいます。債務控除の対象となるマイナスの財産は、亡くなられた方が本来は支払うべきだった費用で、すでに支払いが確定している債務のみとなります。

<相続税の債務控除の対象となる債務>
・亡くなられた方の生活費や医療費などの未払い金
・亡くなられた方の借金やローンの借入金
・葬儀代

※相続税の債務控除について詳しくはこちらをご覧ください。

※相続税の控除対象である葬儀代について詳しくはこちらをご覧ください。

5-3.相続税を修正する申告方法

相続税の申告書を提出し納税も行なった後で、新たな財産が見つかった場合や相続税の計算が間違っていた場合などは、相続税の修正申告が必要となります。
税額を少なく申告していたときは「修正申告」、税額を多く申告していたときは「更正の請求」を行います。相続税の修正申告が必要となる4つのケースは以下の通りです。該当する場合にはすぐに相続税の申告をやり直しましょう。

<相続税申告の修正が必要となる4つのケース>
①相続税の申告後に新たな財産が見つかった
②財産評価が誤っていた
③相続税の特例の適用に誤りがあった
④未分割の財産を法定相続分で分割したものとして申告し、期限後に分割した

※相続税の修正申告について詳しくはこちらをご覧ください。

6.まとめ

相続税は財産を引き継いだ方全員にかかるものではありません。相続税には基礎控除があり、それを超えた金額にかかるのが相続税です。相続税がどのくらいかかるのかは、概算を算出して、早見表に当てはめて確認することができます。

相続税の申告納税期限は10ヶ月以内と、とても短いです。相続税がかかることが分かったら、相続税額を減額することのできる特例や控除が適用できるのか、申告必要書類は何かを確認して、速やかに手続きを行いましょう。

期限を過ぎてしまったり、うっかり申告を忘れて無申告と判断されると、相続税の本税に加え、延滞税などのペナルティ税が加算されてしまいます。

ご自身の相続税はいくらかかるのか、速やかに正確に確認し手続きを完了することが大切です。しかし、財産の確認や書類の用意、控除や特例の適用判断などやるべきことが多くあります。ご不明な点、不安な点等がございましたら、お近くの税理士にご相談されることをお勧めしいたします。

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