相続税が払えない時の4つの対処策をメリットデメリットで確認しよう

  • 相続税

「相続財産には現預金がないから、相続税なんて払えないよ!」
「相続財産は不動産だけで、そう簡単に手放すこともできないので、相続税が払えない…。」

様々な理由から、相続税が払えない!どうしよう!と不安な思いでいらっしゃると思います。

相続税は、「相続した割合に応じ、分割された相続財産から支払う」、もしくは「相続人ご自分の財産から資金を捻出して支払う」といった方法で支払うことになります。

また、現金一括で納めることが原則となるため、納税額が高額な場合などは特に、すぐには資金を準備できずに払えない・・・といった事態が起こりえます。

本記事では、「相続税が払えないときどうする?」「払えなかった場合はどうなる?」という、人にはなかなか相談しづらい事項について解説いたします。納税に不安がある場合は、参考にしていただければと思います。

なお、新型コロナウィルス感染症の影響により相続税が払えない方は、税務署に「災害による申告・納付等の期限延長申請書」を相続人ごとに提出し、承認を受けることによって、期限延長をすることができます。

この場合、相続税申告書の提出日が納付期限となります。相続税の納付をしてから申告書を提出しなければならないということに注意が必要です。

1.相続税が払えないときの4つの対処策

相続税は、申告期限(亡くなられたことを知った日の翌日から10ヶ月)までに、現金一括で支払うことが原則となっています。期日までに支払えなかった場合は、ペナルティとして延滞税などが加算されてしまいます。

延滞税は、納税が完了するまで加算され、日に日に膨らんでいきますので、本税(相続税)の支払いはできるだけ早めの対処が必要となってきます。

納税資金を準備することが困難な場合に検討する対処策としては、以下の4つを挙げることができます。

①相続税を分割して支払う「延納」
②相続税を代わりの財産で支払う「物納」
③相続した土地や建物などを売って、売却代金で支払う
④金融機関で納税資金を借りてローンで支払う

図1:相続税が払えないときの4つの対処策

※延滞税について詳しくは、こちらを参考にしてください。

また、相続放棄をするという選択肢もありますが、相続放棄は「初めから相続人ではなかった」ことになり、一切の財産を引き継ぐ権利を失います。プラスの財産だけではなく、借金などのマイナスの財産も引き継ぐことはできません。
相続権は、次順位の相続人に移りますので、納税義務自体を別の方が背負うことになってしまいます。

※相続放棄について詳しくは、こちらを参考にしてください。

また、相続税とは、相続した方が、引き継いだ金額に応じて支払うべき税金ですが、納税義務は、相続人全員の連帯責任とみなされます。支払えない相続人がいた場合、ほかの相続人は連帯納付義務者として代わりに納税しなければならないと法律で定められています。

もし、ご自身が相続税を支払えなかった場合、ほかの相続人の方が未納分を代わりに支払う義務が生じ、大きな負担を強いることになります。

※相続税の連帯納付義務について詳しくは、こちらを参考にしてください。

4つの対処策に関し、次章より詳しく説明していきます。

2.【対処策①】相続税を分割払いする「延納」

相続税を現金一括で期日までに払えない場合、分割で払っていくことができる「延納」という制度があります。分割で支払う期間は、最長で20年となっています。延納での支払いを希望する場合は、申告期限内に申請が必要であり、申請条件に当てはまると認められると、延納制度を利用することができます。

相続財産に現預金がないため、納税が難しいという理由があっても、相続人ご自身に、相続税を支払える資金力があるとみなされた場合には、延納制度を利用することは認められません。

図2:延納制度の支払いイメージ

2-1.延納が認められる条件

延納することが認められる条件について、確認しましょう。延納を利用するためには、以下の条件をすべて満たしている必要があります。

①相続税額が 10 万円を超えていること 
②現金一括で納付することが困難な理由があり、困難とする範囲内の金額であること
③延納税額、および利子税額に相当する担保を提供すること
 (ただし、延納税額が 100 万円以下で、延納期間が 3 年以下の場合は担保提供の必要はない)
④申告期限までに「延納申請書」及び「担保提供関係書類」を提出すること

【担保として認められるもの】 
①国債、および地方債
②社債、その他の有価証券で税務署長が確実と認めるもの
③土地・建物
④税務署長が確実と認める保証人の保証

延納が認められれば、延納期間で割って算出した税額を、年1回のタイミングで支払います。

2-2.延納のメリット

延納制度を利用するメリットは、なんといっても、少しずつ分割して相続税を納めることができるので、支払いの負担を軽減することができることです。また、相続税を支払うために、ほかの財産を手放さなくて済むことも大きなメリットといえます。

2-3.延納のデメリット

延納制度のデメリットの1つは、延納をしている期間に、利息としての利子税がプラスされてしまうことです。利子税分を含めると、トータル的には本来支払うべき相続税よりも高い金額を納めることになります。

また、相続税を支払うことを約束する保障として、担保の提供が求められます。担保として認められるかどうかのハードルも高く、そこが難関といえます。

※延納について詳しくは、こちらを参考にしてください。

3.【対処策②】不動産や株などで支払う「物納」

延納制度でも支払いが困難な場合は、物納制度が選択肢となります。物納制度とは、相続財産の不動産や株式などの「モノ」で相続税を納める方法です。また、物納するモノは、相続財産に限られ、相続人の方がもともと所有している財産を物納することはできません。

物納も申請が必要で、認められるための条件があります。物納は、現金納付や延納によっても税金の納付が困難な場合に許可されますが、厳格な審査があるため、利用するハードルは非常に高いといえます。

図3:物納制度の支払いイメージ

3-1.物納が認められる条件

物納が認められる条件を確認しましょう。物納を利用するためには、以下の条件をすべて満たす必要があります。

①延納によっても金銭で納付することが困難であること
②物納に充てる財産を申請すること
③申告期限(10ヶ月以内)までに「物納申請書」を提出すること

3-2.物納のメリット

物納の最大のメリットは、納税資金をすぐに用意できない場合でも、不動産や株などの相続財産そのものを納めることができるということです。

3-3.物納のデメリット

物納に充てることのできる財産の種類や順位は決まっているため、ご自身の都合で選ぶことはできません。

また、充てることができる財産を持っていない場合、物納は利用できません。買い手が見つからないような不動産の場合は、物納が認められない可能性が非常に高いといえます。

物納する財産の価値は、相続税を計算する評価額ベースとなります。不動産の評価額を特例で減額している場合、減額後の価格が物納額となります。市場価値より安い評価にされてしまうことがデメリットといえます。物納するモノが売却可能であれば、ご自身で売却し、現金化された方が、最終的に得となる可能性があります。

図4:物納できる財産の順位

※物納について詳しくは、こちらを参考にしてください。

4.【対処策③】不動産がある場合は売却し「現金化」して支払う

現預金がなく、相続税が支払えないが、相続財産に土地や建物などの資産価値が高いものがある場合、相続した物を先に売却して現金化し、その資金で相続税を支払うという方法があります。

手放してもよい不動産などがある場合は検討する価値があります。不動産を売却して、相続税を支払う場合は、まず相続される方に名義を変更する登記(所有権移転登記)をおこない、申告期限内に売買契約を完了させ、現金化する必要があります。時間的なハードルが高く、検討される場合は、すぐに売却活動を開始されることをお勧めいたします。

4-1.不動産を売却して支払うメリット

高額で売却することができれば、利益が生じる可能性があり、物納をおこなうよりも断然有利といえますが、譲渡所得税という別の税金が課税される可能性があります。しかし、相続した不動産を売却した場合には、譲渡所得税などを軽減できる特例が適用され、通常よりも低い税額に抑えることが可能です。

4-2.不動産を売却して支払うデメリット

すぐに売却できない場合、期限までに納税資金を準備できなくなってしまう恐れがあります。また、売り急ぐために安くなってしまうこともあるため、想定していた金額が確保できない可能性もあります。

不動産を売却するためには、事前準備として登記の手続きなどが必要であり、手続きに要する時間などを含め、申告期限内に売却が完了できるかどうかは、慎重に判断する必要があります。また、売却して利益が生じた場合は、譲渡所得税や売却の諸経費がかかってしまうこともデメリットといえます。

図5:不動産を売却して現金を確保する

5.【対処策④】金融機関から資金を「借り入れ」て支払う

金融機関のローンを利用して、相続税を支払うといった方法もあります。単純に納税資金として借り入れができる商品がありますが、返済できることが前提となり、金融機関の審査があります。

5-1.金融機関から借り入れて支払うメリット

資金の借り入れができれば、申告期限までに相続税を支払うことができます。手放したくない実家の不動産や財産を、無理やり売却するような最悪の事態を避けることができます。

5-2.金融機関から借り入れて支払うデメリット

金融機関からお金の借り入れをするため、利息がかかります。返済期限などを含め、細かなシミュレーションをおこない、返済可能かどうかの確認が重要となります。借り入れには条件があり、各金融機関によって判断基準がありますので、必ず借り入れができるというわけではありません。

図6:ローンで支払う

6.まとめ

相続税が支払えない場合、どの対処策をとるのがベストであるかは、ご自身のおかれている状況によって異なります。ご自身の状況で、どのように対処したらよいのか、迷われている場合は、早めに税理士などの専門家にご相談されることをお勧めいたします。

払えないからといって、申告期限まで何も対処しなかった場合には、ペナルティを含め、納税額がますます増え、悪循環となる恐れがありますので十分ご注意ください。

また、相続税には様々な控除や特例がありますので、それらを有効的に活用すれば、税額を下げることができるかもしれません。

専門家に早めに相談することで、ご自身に最も適した対応策を見つけることができますので、相続税の申告期限を意識して早め早めに対応を心がけていただければと思います。

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