相続税の重加算税は故意に財産を隠したペナルティ!すぐやるべき対策

  • 相続税

「相続税を払いたくないから、亡くなった父の預金をこっそり自分名義の口座に移した」
「タンス預金はバレないだろうと思って相続税の計算に入れなかった」

財産を意図的に隠ぺいし脱税しようとして税務署に指摘されると、ペナルティとして重加算税がかかります。

国税庁が発表したデータでは、令和2年度の相続税の税務調査5,106件のうち、申告漏れは4,475件、重加算税の対象となった件数は719件でした。税務調査件数は新型コロナウィルス感染症の影響により大幅に減少したものの、悪質な不正が⾒込まれる方を優先して調査し、1件当たりの追徴税額は 943 万円(対前事務年度⽐147.3%)となり、過去 10 年間で最⾼となっています。
(引用:令和2年事務年度における相続税の調査の状況/国税庁ホームページ)

相続税の税務調査が行われたうち、重加算税が課せられた割合が16.1%であったことがわかります。

相続税を逃れようとすると、税務署から指摘をうけてかなり高額なペナルティを支払うことになりかねません。

本記事では、重加算税とみなされるケースや、重加算税となってしまった場合にどのくらいのペナルティが加算されるのか、詳しくご説明いたします。もし該当するようであれば、すぐにでも修正申告をおこない、納税をしましょう。

1.相続税の重加算税は最大40%!隠ぺいした財産はすぐに修正申告を

相続税を少しでも減らそう、または相続税を払いたくないといって故意に相続財産を隠した場合に相続税の重加算税の対象となります。

重加算税が最も重いペナルティであり、相続税の申告をせず重加算税を課せられた場合には、40%の税率で納税することになります。

加えて、延滞税等も支払うことになりますので、結果的に50%近く上乗せした税金を支払うことになります。

図1:未納の相続税と重加算税、延滞税を合計した金額を支払う

重加算税 延滞税 両方支払う

また、もし重加算税の対象となった場合には、重加算税の対象となった財産には、配偶者の税額軽減などの相続税額を軽減できる特例が一切使えなくなりますので注意が必要です。

現時点で財産を隠ぺいしている場合にはすぐに自ら修正申告をおこない、追加で納税しましょう。正しい金額を納税するためにも、相続税に強い税理士を探して依頼することがおススメです。

※相続税の修正申告について詳しくは、こちらを参考にしてください。

2.相続税の重加算税の税率は申告書提出の有無で変わる

重加算税が掛かる状況は2種類あります。

1つは相続税の申告書を提出したが、バレないと思って財産を少なく申告した過少申告の場合です。もう一つは、財産を隠ぺいするなどして相続税の申告を全くしていない無申告の場合です。

重加算税で一番ペナルティが大きいのは無申告の場合となります。

表1:重加算税の種類と税率
重加算税 種類 税率

2-1.(申告あり)申告時に財産を隠して申告したら35%加算

相続税の申告期限内に申告はしたものの、相続財産の一部を認識していながらもあえて申告書に記載しなかったり、財産の証拠となる書類を偽造したりした場合は重加算税の対象となります。

また、実在しない借金等を記載して意図的に相続税を下げた場合も同様です。過少申告重加算税といいます。

過少申告の重加算税は、追加で納める相続税額に対して35%の税率が課せられます。なお、過去5年以内に同じく無申告加算税または重加算税を課されたことがあった場合には、税率はさらに10%上乗せされ45%になります。

2-2.(申告なし)相続税の申告を怠ると40%加算

過少申告よりも無申告の方がペナルティは重くなります。

相続税の申告をする必要があったにも関わらず、バレないかもしれないと故意に申告をしなかった場合には重加算税の対象となります。無申告重加算税といいます。

無申告の重加算税は、相続税額全体に対して40%の税率が課せられます。無申告の重加算税の場合も、過去5年以内に無申告加算税または重加算税を課せられたことがあった場合には10%上乗せされて50%もの税率が課せられることになります。

3.重加算税の対象と判断される主な3つのケース

相続税は正しく申告と納税をする義務はあるものの、実際には納税者が相続財産を隠ぺい、または仮装した場合にどのようにして「隠ぺいまたは仮装」と判断されるのでしょうか。

「隠ぺいまたは仮装」と判断されると重加算税が加算されますので、その判断基準にあてはまる3つのケースをご紹介します。

いずれも、主には税務調査で明らかになります。

※税務調査について詳しくは、こちらを参考にしてください。

3-1.申告義務があるにも関わらず故意に申告しなかった

亡くなられた方の相続財産のすべてを把握できないというケースはめずらしくありません。

預金通帳や有価証券などの書類が見付からず、どこの金融機関に財産があるのかわからない、あるいはインターネットバンキングの取引記録が探せないなど、理由は多々あります。

相続財産をすべて把握しきれないから期限内に相続税の申告ができなかった場合や、申告後に財産が見つかったものの、追加の申告を怠った場合でも無申告とみなされます。

3-2.名義預金やへそくりを故意に隠した

旦那さまが亡くなられた場合、お子さんやお孫さんなどの名義で預金し、その預金額がかなり高額であった場合には、名義預金とみなされる可能性があります。

名義預金とみなされた場合には、旦那さまの財産(相続財産)とみなされますので、申告をしていないときには注意が必要です。

また、奥さまが専業主婦の場合には、へそくりもその額によっては名義預金と見なされる場合があります。相続財産は口座等の名義が誰になっているのかが大切ではなく、その財産が本来であれば誰のものなのかが大切になります。

亡くなられた旦那さまの収入が基になっている財産は、相続財産とみなされます。

奥さまがへそくりを作っていた場合、税務署に隠すことなく正直にその金額を相続税の対象財産として申告しても、多くの場合には配偶者の税額控除により相続税はゼロ円となります。

※名義預金について詳しくは、こちらを参考にしてください。

3-3.遠隔地の預金や国外の財産を故意に申告しなかった

国内の遠隔地にある金融機関の財産や国外にある財産について、申告をしなくても見つからないだろうと考えて申告をしない場合にも重加算税の対象になります。

似たようなところでネットバンクや仮想通貨などもバレないと考えがちですが、税務署はお金の出入りを調べますので最終的にはバレます。

税務署の指摘を受ける前に相続財産として対処されることをおススメします。

※国外財産について詳しくは、こちらを参考にしてください。

4.重加算税は支払うまでずっと延滞税がかかる

相続税の納付期限までに納税されない場合、本来支払う相続税以外にペナルティとして延滞税がかかります。納付期限から経過する日数に応じて、納付する日までの利息としてのペナルティです。よって、1日でも早く支払うことが大切です。

重加算税は申告漏れや納税額不足に対する罰金の意味合いが強い税金です。重加算税の対象となった場合には、本来支払うべき正しい金額の相続税と重加算税、延滞税を合計した金額を支払わなくてはなりません(1章参照)。

表2:延滞税の基本的な考え方
延滞税 概要説明 表

図2:<計算例>令和4年1月1日から令和4年12月31日の延滞税の考え方

※延滞税について詳しくは、こちらを参考にしてください。

5.隠した財産には特例がつかえない

意図的に相続税の申告をしなかったり、少ない金額で申告したりするデメリットは、ペナルティとしての税金が課税されるだけではありません

「配偶者の税額軽減」といった大幅に税額を減額することができる特例を一切使うことができません。

5-1.配偶者の税額軽減を受けられない

奥さまが相続人となる場合、1億6,000万円、もしくは法定相続分相当額までの範囲であれば相続税がかからない「配偶者の税額軽減」といわれる特例があります。

この特例の範囲内であればすべての財産を申告していれば本来相続税が0円になりますが、相続税から逃れようとして財産を隠ぺいしたことにより特例が使えなくなり、相続税を納税することになりかねません。

へそくり等の場合にも、この配偶者の税額軽減が利用できないか、しっかり確認して期限内に申告をしましょう。

※配偶者の税額軽減について詳しくは、こちらを参考にしてください。

6.重加算税は相続人全員で支払う必要がある

相続税は、相続人が相続した財産に応じて各々税務署に納税します。誰かが代理でまとめて納税するのではなく、個々に納税する必要があります。

また、相続税には連帯納付義務という考え方があり、相続人のどなたかが「納税したくない、もしくは納税できない」という場合には、他の相続人が連帯責任を負うことがあります。

相続税を故意に納税しない相続人が重加算税の対象となった場合には、重加算税についても連帯納付義務が発生します。

また、連帯納付の場合、納付基準日から2ヶ月以内は延滞税に代えて利子税が課税されます。

※相続税の連帯納付義務について詳しくは、こちらを参考にしてください。

7.重加算税の簡単な計算例

重加算税は、追加で納税する税額に対してかかってきます。
「本来納めるべきであった相続税 - 当初に申告した相続税」 をもとにして計算します。

【計算例】

当初の納税額:700万円
修正申告後の納税額:1,200万円 
※延滞日数:80日

追加の納税額: 500万円
( 修正申告後の税金1,200万円 - 当初に申告した税金 700万円 )

この場合の重加算税を計算します。
重加算税の税率は、過少申告であったため35%
500万円 × 35% = 175万円
重加算税は175万円になります。

次に延滞税を計算します。
最初の2ヶ月が61日、2ヶ月以降が19日となり、期間によって税率が異なります。

①(納付すべき税額×延滞税の割合(納期限から2ヶ月以内)×日数)÷ 365
500万円(税額) × 2.4%(最初2ヶ月) × 61(日数)÷ 365 =20,054円

②(納付すべき税額×延滞税の割合(納期限から2ヶ月超)×日数)÷ 365
500万円(税額) × 8.7%(2ヶ月超) × 19(日数)÷ 365 =22,643円

よって、延滞税は ① +② = 42,697円→42,600円(100円未満切り捨て)

以上から、
500万円(追加の相続税)+175万円(重加算税)+42,600円(延滞税)=6,792,600円

重加算税を含めて、合計で679万2,600円を納めることになります。

8.さいごに

重加算税は相続税を意図的に少なくしたり、無申告だった場合に課せられるペナルティの税金です。
重加算税は特に税率が高く負担が重くなっている上に、延滞税も合わせて支払わなくてはなりません。

さまざまな理由で相続税を隠ぺいしたり、名義預金となっている財産を申告しなかったことがのちに指摘されることで、重加算税の対象となります。特に税務調査の対象なった場合には、指摘される可能性も大きくなります。

「バレないだろう」と申告しないでいることはのちに後悔につながります。

万が一、申告をしていない財産がある場合には、1日でも早く修正申告を提出しましょう。税務署から連絡がきてから慌てても手遅れとなります。

重加算税や修正申告の相談については、相続税に強い税理士に相談することがおススメです。

相続税申告で損をしたくない方へ

相続税の納税額は、その申告書を作成する税理士により、大きな差が生じます。
あなたが相続税の申告をお考えであれば、ぜひ当税理士法人にご相談ください。

OAG税理士法人が選ばれる
8つの強み

  1. 01【設立35年の歴史】国税OBが作った税理士法人(国税OBが多数在籍)
  2. 02相続専門税理士が多数在籍(グループ従業員数450名 / 士業関連の有資格者150名)
  3. 03申告実績:9500件以上(グループ累計)/ 年間:1200件以上
  4. 04女性税理士が多数在籍(きめ細やかな対応)
  5. 05相続関連の専門書多数発行
  6. 06トータルサポート(グループ内ですべてワンストップ)
    相続税申告、遺産整理、登記、不動産売買、弁護士対応など
  7. 07明瞭な料金設定
  8. 08税務署に指摘されない(税務調査の非対象)約98%

OAG税理士法人に依頼する
3つのメリット

  1. 考え方に幅のある「財産評価」を知識とノウハウで適切な評価をする
  2. 遺産分割を次の相続(二次相続)も視野に入れ、税額軽減の創意工夫をする
  3. 専門用語を使わないお客様目線の対応